java.util.TreeMapとjava.util.Comparatorの罠

ちょっと職場で引っかかったコード。

java.util.TreeMapのコンストラクタにはjava.util.Comparatorを渡すことが出来て、エントリの並び順を細かく制御することができるけど、それでハマったのでメモ。環境はjava8

import java.util.Comparator;
import java.util.Map;
import java.util.TreeMap;


public class Sample {

  public static void main(String[] args) {
    Map<String, String> map = new TreeMap<>(new Comparator<String>() {
      @Override
      public int compare(String o1, String o2) {
        //実際のコードだともっと複雑で、ある特定の条件下でのみo1とo2が異なっていても0を戻す
        return 0;
      }
    });    
    map.put("hogehoge", "value_of_hogehoge");
    map.put("hogefuga", "value_of_hogefuga");
    map.put("fugaguga", "value_of_fugafuga");
    //mapに3つのKey-Valueを入れたつもりが・・・
    System.out.println(map);
  }
}

上のような感じのコード(実際にはComparator#compareの中身はもっと複雑)でmapにKey-Valueを追加した。で、3つのKey-Valueが入ると思ったのに実際の標準出力は

{hogehoge=value_of_fugafuga}

とmapの中に一つしか入ってない。
まあ、サンプルコード見れば分かるけど、Comparator#compareが0を戻している事が原因。

TreeMap (Java Platform SE 8)
を見ると

これはMapインタフェースがequalsオペレーションに基づいて定義されるためですが、ソート・マップはそのcompareTo (またはcompare)メソッドを使用してすべてのキー比較を実行するので、このメソッドによって等しいと見なされる2つのキーは、ソート・マップから見ても同じものです。ソート・マップの動作は、その順序付けがequalsと一貫性がない場合でも明確に定義されていますが、Mapインタフェースの一般規約には準拠していません。

とあるのでまあ仕様なんだけど、Comparatorは並び順を定義するだけだと思い込んでいたので引っかかった。
あと、コンストラクタの説明の方にも一言入れといて欲しい。

C88戦果報告(随時更新予定………多分)

C88の戦果まとめ。感想については随時更新予定*1

- TwiFULL Press 『月刊ポスドク 2014年12月号』

- TwiFULL Press 『月刊ポスドク 2015年8月号』

まあ、ポスドクに成らなかった(なれなかった?)単位取得退学者としては買っていいんかなーと思わないでも無いものの、付録(「象の卵クリアファイル」+「進捗報告用不在連絡票」)に負けて購入。「進捗報告用不在連絡票」は職場に持って行こうかな。実用性高し。

- 風虎通信 宇宙の傑作機番外編『ソヴィエト・ロシア・ウクライナのコンピュータ 増補改訂版』(既刊)

去年の夏に入手できなかったので購入。面白かったのが、数理モデルを使って経済計画を立てようという試みに対して

コンピュータによる経済計画という概念は一般には極端な中央集権と捉えられ、多くの人間によって市場原理導入に対する言い訳に使われたりした

といったネガティブな取られ方をされていたというあたり(マルクス経済学的にというかイデオロギー的にアウトという事らしい)。中央集権型超巨大コンピュータで経済計画立ててこそソ連じゃね?みたいな偏見と実像はだいぶ違うらしい。あとメインフレーム機について、国家政策として独自開発アーキテクチャからIBM互換機路線へと移行することで、IBMの後追いしか出来なくなって西側とのギャップが広がったというエピソードを見ると、IBMのシェアをそれなりに食った国内互換機勢って凄かったんだなと。

- 風虎通信 宇宙の傑作機 No. 20 『モルニヤ』

- 風虎通信 宇宙の傑作機 No. 21 『ミューロケット』

いろんな政治的理由から箍をはめられた(直径1.4 m以内、誘導制御技術を使ってはならない、全段固体ロケット)中で開発を勧めるうちに、いつしか最強クラスの固体ロケットに進化したミューロケットについて。
もちろん日本の宇宙開発に大きな貢献があったのは確かなんだけど、何だろうこの「何か根本からおかしくないか」感。

- 隙間科学研究所 『フランス原子力庁の臨界実験装置』

- 蟹幕僚監部 『アンドロイドは防火訓練の夢を見るか』

- こんぱすろーず 『1975年のドン・キホーテ

クランシー『レッド・オクトーバーを追え!』のモデルとなった、ソ連フリゲート「ストロジェヴォイ」"亡命未遂"事件の顛末について。この事件の指導者であるサブリン少佐の目的は国外亡命ではなく、実は共産主義的理想主義に基づいて、ブレジネフ政権を打倒するための行動であったという話。
しかし、ソ連崩壊後の1994年に名誉回復(「祖国に対する反逆者」という罪名を削除、「集団的反抗の扇動」についてはそのまま)が行われるんだけど、軍事力を私的に使用して政府をひっくり返そうって構想な訳で、いい話とまとめていいのかというと微妙な気が。
"亡命未遂"事件の10年後にはゴルバチョフ政権が誕生し、ブレジネフ時代の閉塞感を打破するための体制内改革(結果としてソ連という体制そのものが崩壊したけど)を行っていて、その方向性はサブリン少佐が目指していたものと一致してはいるもの、軍事力の私的利用を容認しちゃうと国家成り立たないよなあという。ただこの事件で微妙なのは、「軍事力を私的に利用して政権を打倒」といっても計画がかなり空想的なもので、かつクーデターというよりも世論に火を付けることを目的としていたあたりが「軍事力の私的利用=叛逆」と切って捨てるには難しい所。

もし仮に、サブリン少佐が暴発せずに理想主義を抱えたまま栄達したとしたら、改革の旗手として大活躍出来ただろうなあ。もちろんその場合は、その後のソ連崩壊にも直面する事になるというかソ連の息の根を止めた当事者の一人と成るはずで、もしかしたら史実とはもっと違う形で(もっと凄惨な)大暴発やらかした可能性もあるけど。

- 火力本編纂委員会 『大祖国戦争赤軍戦車砲 5』

- 新見志郎 『自虐的巡洋戦艦史 vol. 6』

イギリス海軍巡洋戦艦「ニュー・ジーランド」はその名の通りニュージーランド政府の予算で建造されているが、1910年起工で1922年にはワシントン海軍条約に伴い解体されているものの、ローンの返済が1944年まで続いたという地獄絵図じみた光景。

- 墨田金属ぼるひじ社『瀛報』34, 36, 39

『軍事研究』誌に出ていた一連の記事の詳細版。正直な所、賛成出来ない部分は結構あるものの、お金を払って読むだけの興味深さはあると思う。

- 『マニラの残照 マニラ湾におけるわが海軍艦艇の最後 1』

- Patria Nostra 『中世軍事史概論改訂版』

もしかしてちょっと前にTLで揉めてたあの話なのかなということで野次馬的に購入。

- 小野部健 『テスト設計の実例と解説』

- 渡辺亮 『「ウォーターフォール・モデル」の原典のはずのRoyce論文を日本語訳してみたらあまりにも予想外の結果が!』

*1:著者名・サークル名・発行者は特に統一してません。てきとー

よくわかる第一次外惑星動乱(谷甲州『コロンビア・ゼロ』発売記念)

二十数年ぶり!谷甲州「航空宇宙軍史」の新刊が・・・

作品の内容としては流石に文句のつけようのない出来ですが、二十年以上前に書かれた「(第一次)外惑星動乱」に関するエピソードが多いので、せっかくですし一つ外惑星動乱について勝手にまとめてみようと思います。
ご新規さんな人のためのガイド、あるいは古参な人向けのリマインドメモになれば幸いです。

正直な所、大分端折っていますが、まあアウトラインを掴むにはこれぐらいで良いんじゃないかと。

続きを読む

スプラトゥーンの辛さについて語ってみる

「からい」じゃなくて「つらい」。「スプラトゥーン面白いけど、現状では反射神経無い人には結構辛いよね」という話。

Splatoon(スプラトゥーン)

Splatoon(スプラトゥーン)

実際のところ、スプラトゥーンは非常に面白いし、かつ色々と語ってみたくなるような変な魅力のあるゲームなのよな。面白さについては検索すれば商業メディア/ブログ/Twitter/ニコ動ようつべと、ありとあらゆる所で語られてるので深くは触れません。

何が面白いのさ

とりあえず。

【「Splatoon(スプラトゥーン)」レビュー】Splatoon(スプラトゥーン) - GAME Watch 【「Splatoon(スプラトゥーン)」レビュー】Splatoon(スプラトゥーン) - GAME Watch

b.hatena.ne.jp

n-styles.com

といった所で語られてる魅力は全部ほんとのことで、まあWiiU本体ごと買っても損は無い出来。このゲームのために発売一週間前に(販売終了直前の)WiiU ベーシックセットを買った自分が言うんだから間違いない。辛い辛いと言いつつ、この前の土日はほぼスプラトゥーンで終わった。

何が辛いのさ

と、ここからが本題。
面白いのは面白いんだけど、自分としてはプレイしてて結構辛い感じがするのも確かなわけで。

今のところ、インクの塗り合い合戦(ナワバリバトル)はオンライン対戦で無いと出来ないわけですが、なんとゆーかこー、ある程度ランクが上がった後の対戦相手にガチ勢が多い。ここで言うガチ勢っていうのは、FPS/TPSの基本動作をこなしてくる感じの手慣れたプレイヤーとか、ステージ別の攻略情報とかを事前に仕込んでくるような、1回の対戦で0デス5キル10キルとかしちゃうあの辺の人たち。で、自分の技量だとkill出来ないとか以前に牽制や足止めすら満足に出来ないんですな。

個人的にはガチな人と一緒にプレイするよか、NPC相手にまったりインクを塗り合いつつキャッキャウフフとまったり孤独にローカルプレイしたい訳なんですが、現状のローカルプレイはパズルアクション的な色が強く、塗り合いバトルは用意されていません。まあ、ローカルプレイについてはそれはそれで面白いのは確かなんですが………………インク塗りたくり合戦したいです。

オンライン対戦のマッチングは、各プレイヤーのランク*1と"チョーシ"ポイント*2に従って行われてる感じなんですが、どうも自分のケースだと、周りと比べて自分のプレイが見劣りするレベルでマッチングが安定しがちな気がするんですよね。なんというか、「ピーターの法則」的な感じで「自分が周囲と比べて無能」ってところで平衡状態になってしまう感。
え?「序盤ラッシュ後は後方でベタ塗りしてるだけでも全体への貢献になる」?後方でベタ塗りしてても(後方でベタ塗り出来るぐらい前線が確保できてるのであれば)全体の勝敗への影響は低いし、自陣周辺まで押し込まれたら蹂躙されて成されるがままですよ実際のところ。

多分、元からシューター系をやり慣れてる人や、反射神経のいい人にとってはこの辺の感覚は理解できないだろうなーと思うんですが、全体的にスプラトゥーン絶賛してる人の中心層は多分この辺だとおもうので「辛い」って意見があんまり表に出てこない感じがする。ちょうどスポーツ大好きな人にとって

「お前も野球したいの?じゃあライパチ*3な」

的な言動の辛さが理解できないのと同じような感じかと。
E3のスプラトゥーン動画を初めて見た時に感じたのは、もしかしたらシューター苦手な人でもこの辺の劣等感を感じずにプレイできるかもしれないって期待だったんですが、勝手に期待しといて裏切られた感。似たような期待をしてる人はある程度覚悟を持って買ったほうが良いかもしれない。面白いけど。

この辺、もうちょっとオンライン対戦のマッチングで工夫してくれるか、マップ上のランダムアイテムを拾いつつ塗り合いするような運要素の入った対戦が実装されるか、あるいはオフラインでNPC相手にナワバリバトル出来るように成れば一気に解消しそうなんですけどね。

*1:これまでインクを塗ることで稼いだ総ポイント数に依存。現状の最高ランクは20

*2:各プレイヤーの勝率に依存。数時間に一回、マップが切り替わるタイミングでリセット

*3:野球世代後の人向けに解説すると、ボールがめったに飛んでこない守備位置と、あんまり重要じゃない打順の組み合わせ。要は「お前戦力外だけどお情けでいれてやんよ」の意

「生科連からの<重要なお願い>」(高齢ポスドク問題についての声明)を読んで感じたモヤモヤ感をまとめてみる

↓の件について、読んでてどうにも違和感というか都合良すぎるんじゃないかなーと思ったのでちょっとモヤモヤ感を文書化してみる。

www.jbsoc.or.jp

生科連からの<重要なお願い> [pdf] 生科連からの<重要なお願い> [pdf]


まあ、短くまとめると

って話なんだけど。

この問題についての自分の立ち位置について

これ書いとかないとフェアではない気がするので明示しますが、自分は生物系で博士後期課程に居ましたが研究に行き詰まったり将来の見込みが絶望的に思えたので結局は中退しました*1。で、もし中退してなければ、上の資料で扱われている「高齢ポスドク」に成ってたかも知れません。
なので、

「ばーかばーか、こうなるってわかってたじゃないかばーか」

的なバイアスがかかっています。予めご注意ください。

本当に「こんな状態になるとは予想できなかった」のか?

元資料 p.6「(1) 個人(本人)レベルの問題点:」から

ポスドクの平均契約年数が約 2 年(参考資料 3 より)と短いため、人生設計が難しい場合があります(結婚できない、子供が持てない等)。

(中略)

正規職員になれないのは本人の努力不足と捉える見方ももちろんありますが、正規職員へ道は上で述べたように狭き門であり、本人の努力のみでは解決が難しい状態です。また行政が新しく進めた政策でもあり、本人に職業の選択を判断するための十分な情報はありませんでした(こんな状態になるとは予想できなかった)。そのため社会全体で考えていかなければなければならない問題です。

要は高齢ポスドク問題は行政の責任でもあるので社会全体で対応してねというお願いなんですが、「こんな状態になるとは予想できなかった」という主張にはちょっと違和感があります。
2000年代初頭(現在40歳のポスドクなら24~26歳。博士後期課程に入る直前か入ってすぐぐらい。まだポスドク以外の選択もあり得た)にはこれらの問題は周知のものだったはずです。

サンプルとして、当時研究職目指してた人の間で話題になってた「研究する人生」掲示板のログからいくつかスレを抜き出してみます。

院生、ポスドク諸君、結婚はどうするのよ?@研究する人生

01: 名前:研究する何某投稿日:2001/12/02(日) 12:30
30近くまで大学院生、35くらいで生まれて初めて就職(運がよければ)、
しかも職場は男だらけ。。。こんなむさい男を愛してくれる女性はいるので
あろうか。諸君はどうやって彼女を見つけるのかや?漏れも今は彼女がいる
けど、結婚したいかといわれたらちょっと?だし、今後どうやったらいいのか。
結婚相談所にでもいくかな。みんなどうやってパートナーを見つけるの?


大学の先生は崩れを量産させて平気ですか?@研究する人生

01: 名前:研究する何某投稿日:2002/04/20(土) 14:43
博士課程を終えて30近くなった人を何のケアもなく、飼い殺し、放置プレー、
追放などするのは、普通の人から見ると犯罪行為にしか思えないです。

2000年代初頭にはすでに「高齢ポスドク将来真っ暗」な呪詛が渦巻いてますね。

まあ、2ch派生系掲示*2だし、生物系限定の掲示板という訳でもなくこんなんアテにならんだろとも思うので、次に書籍ソースを見てみます。

もともとは『実験医学』誌2000年2月~7月号の連載です、書籍版の初版は2000年10月発行。
メジャーな和文誌上での連載ということで、たぶん、当時の生物系院生だったらかなりの割合で読んでるはずです。
脱線するけど、著者の白楽ロックビル氏のサイトは色々と研究倫理関連の情報が集まっててお勧め。

白楽の研究者倫理 | ネカト(ねつ造・改ざん・盗用)・クログレイ・性不正(含・セクハラ)・アカハラ・・・白楽ロックビルのバイオ政治学



閑話休題、この本は科学政策から研究者としての個人的人生設計まで網羅されていて凄いんですが、2000年代初頭の「ポスドク人生設計」に絡む部分を(ほんの一部ですが)いくつか抜き出してみると・・・

p. 197 現役ポスドクへのインタビューから

年齢としては助教授クラスだけど助教授の募集は少ない。で、40歳前後で、もう一度ポスドクにといっても、雇うほうが敬遠します。
雇うほうは、27~8歳くらいで、自分のプロジェクトに従って夜中まで働いてくれる人を雇いたい。40歳前後の研究者は雇いたくない。それで、冗談じゃなく、ホントに40歳前後で無職になってしまいます。知り合いの40歳前後の男性でもう無職になって2年という人がいます。家にこもっているし、研究職に復帰するのは難しい。
また、ヒドイ話ですが、ポスドクが女性(主婦)だと、『収入がなくてもいいじゃない。好きな研究をしたら?』、と平気でいうボス(男性)もいたりします。

(中略)

それにしても、『日本政府はポスドクをこんなに大量に増やしてど―すんだろう?』、と心配です」

要は、この頃から既に(個別事例としての)高齢ポスドク問題は存在してたってことで。

 
p. 223 より

あるとき、科学技術庁の若い官僚(名前は忘れた)から電話で相談されたことがある。その官僚の相談内容は、「『大学院生倍増計画』と『ポスドク等一万人計画』のお陰で、日本では博士号取得者とポスドクがドンドン増えている。その人たちをどうしたらいいでしょうか?」である。不肖・ハクラク、あきれて声が出ない。
だって、「研究者が今までの2倍必要」だから、大学院生を2倍に増やし、ポスドクを2倍に増やしたんじゃないの? 必要もないのにただ単に大学院生とポスドクをドンドン増やしちゃったの? こういう長期的人材育成は国家計画の柱でしょうが? しかし、どうやら、研究者が今までの2倍必要」かどうかではなく、まず「大学院生倍増計画」や「ポスドク等一万人計画」があったらしい。どーする、チミ。

(中略)

というわけで、現在の研究者育成システムで育ってきたキミの今後の人生を、これからは国が責任もって面倒みてくれるわけではない。大学院生やポスドクのキミは研究職サバイバルゲームを“自己責任"で生き残ってネ

とかまあ、「長期的視野に立った科学政策とか人材育成計画なんてのも無いよー」と、無慈悲なまでにあっけらかんと書かれてたりします。
まとめると、15年前には既に国の科学政策はあてにならない事も、ポスドク数に対してアカデミックなポストが少なすぎる事も、一定の年令以上までポスドクを続けたらもう先が無いって事も、普通の(生物系)院生であれば知ってたよねという話です。(ついでに、博士卒者のアカデミック以外の多彩なキャリアパスの必要性についてもこの本ではかなり触れられていたり、15年後の今でも通じる凄みがある。15年のあいだ、業界全体で問題がまるごと先送りされてたんじゃないかという気もするけど…)


まあ元の声明の主張としては「ポスドク個々人の責任じゃないから社会全体で救済してね」という話なのでこの辺は書きにくいとは思いますが、かと言って

また行政が新しく進めた政策でもあり、本人に職業の選択を判断するための十分な情報はありませんでした(こんな状態になるとは予想できなかった)。

ってのはちょっと誠実では無いと思う。てか90年代ならともかく2000年代にはみんな覚悟完了した上で「有能な俺なら大丈夫なはず」って突撃してったんじゃね?

「救済措置」が有るとすれば、多分氷河期世代問題対策って形になるんじゃないかな

思うに、「ポスドク問題」って社会全体での対応が正当化されるような大問題と見なされない気がするんですよね。人数的にも誤差レベルなので社会問題化することは無いでしょうし、「そんなに高度な技能もってるんなら自分で食い扶持見つけろ」と言われたらどうしようも無い気がする。もっと言うと「高度人材だから救済が必要」ってロジックそのものが矛盾してる。

救済措置が取られるとすれば、社会的インパクトの大きな「氷河期世代」の高齢化問題への対応の「ついで」扱いになるんじゃないかという気がします。年齢的にも、長期安定職に就けないって現象的にも類似してますし、同じ枠に放り込まれる気がする。もったいない事では有るけど。

その他

あと、元の声明で出てるバイオベンチャー周りについても書こうと思ったけど、この辺については直に経験した事じゃないので迂闊なこと書けないよなーと思ったので省略。

あと(今回の声明とは直接関連無いけど)、
【帰ってきた】ガチ議論
みたいな新しい取り組みも出てきてるし、生物研究業界全体で見れば、良い方向に変わってきてるとは思う。

*1:あとまあ、数年スパンで確実に結果が出る論文を量産してキャリア形成っていう生き方はなんかこー自分が求めてた「職業科学者」としての生き方とは違うよなーという思いもあったけど、長くなるんで略

*2:元々生物板で職業研究者系スレ住人と趣味としての生物を扱うスレ住人との間で対立が発生し、職業研究者向け板の新設を2ch運営へ申請するも蹴られたという経緯で「研究する人生」掲示板が作られたという記憶なんですが、検索してももうこの辺の経緯が出てこないので曖昧記憶モード

ゲーム『Vietnam ‘65』感想

色々と面白かったので紹介。
自分がプレイしたのはPC版store.steampowered.com

iOSアプリ

Vietnam...'65

Vietnam...'65

  • Slitherine
  • Games
  • $9.99
からの移植らしい。

『Vietnam 65』はベトナム戦争を題材としたターン制ウォーゲームです。
正直な所、このゲームは万人向けではないです。プレイしててあまり爽快感はありません。ただ、米国から見たベトナム戦争の「面倒くささ」が上手いこと表現出来ていて 興味深い。

以下、ルール説明

"Hearts and Minds"ポイントとPoliticalポイント

こんな感じの、ジャングルの中に水田と村が散らばっている感じのマップが自動生成されます。

f:id:ka-ka_xyz:20150329224313p:plain
で、プレイヤーの勝利条件としては、左上の"Hearts and Minds"ポイントを貯めることです。
具体的にどうするかというと、

  • 歩兵部隊を村落へ送り込む
  • 村落の近くで敵(ベトコンあるいは北ベトナム軍)を撃退
  • 敵の基地を探しだして撃破

といった感じです。要は、地元住民の"Hearts and Minds"を掴むような行動でポイントを得ることが出来ます。逆に、敵の襲撃で被害が出たり、敵の歩兵部隊に村落を占拠されたりすると"Hearts and Minds"ポイントは低下します。まあ、米軍の場合には遠くの村落へも輸送ヘリであっという間に歩兵部隊を送り込めますし、配置転換も輸送ヘリであっという間に済みます。
また、「敵を撃退」っていってもそんなに難しくは有りません。いったん敵を捕捉してしまえば、近くにいる歩兵部隊で撃破するもよし、戦車や兵員輸送車で撃退するもよし、砲兵の間接射撃で撃退するもよし、攻撃ヘリで叩くもよし、それでも射程外の場合には空爆を要請するもよし。よほど運が悪くない限りはどんな方法で攻撃しようが完勝できます………敵を捕捉出来れば、ですが。
敵は大抵の場合はジャングルに潜んでいて、地雷を敷設したり嫌がらせ的な待ち伏せを行ってくる程度、あとは村落や基地へ襲撃をかけてきますが、大抵は対応できます。敵を撃退するとPoliticalポイントがたまり、部隊の補給や増援部隊の追加に使用されます。
Politicalポイント無しでも南ベトナム軍ユニットを作成できますが、これがまたお察しください的な能力(一応、米軍の歩兵ユニットよか索敵範囲が広かったり"Hearts and Minds"を獲得しやすかったりするらしいですが、戦闘には弱い)。

補給切れ即死ルール

で、一見すると米軍側の楽勝に見えるルールですが、ただひとつ注意が必要なのが補給システムです。このゲーム、部隊をいったん基地の外へ出してしまうと、地上部隊であっても1ターンごとに部隊の補給ポイントが減少し、補給ポイントが0になると部隊は消滅します。なので、村落へ送り込んだ歩兵部隊に対してヘリコプターや装甲兵員輸送車で定期的に補給を行う必要がありますが………これがまた面倒くさい上に、輸送ヘリや輸送車が補給物資を搭載できるのは、HQやFirebaseといった限られた基地だけなので、パズル的な思考が要求されます。また、たまに輸送ヘリが襲撃されたりするとギリギリで回ってた輸送ヘリのローテーションが崩れ、補給体制が一気に崩壊する可能性も出てきたりしてめんどい。

周り全部敵

ジャングルに潜む敵を掃討するには、戦線(部隊を連ねた「壁」)を作って安全地帯を確保するという方法が有効に思えますが、このゲームでは上記の補給切れ即部隊壊滅ルールと、そんなに余裕が無いPoliticalポイントの制約により、部隊は不足するわ補給も回らないわとなり「壁」を形成することが困難です。
なので、村落や基地というマップ上の「点」を輸送ヘリの空中機動で結ぶ(ということは、「点」と「点」の間のジャングル地帯はゲリラの跳梁跋扈を許すことになる)という、史実のベトナム戦争的な展開が強制されます。

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とは言え、慣れればなんとかなる。

まとめ

と、こんなかんじで、「正面から戦えば絶対勝てるけど、周りじゅう敵に囲まれてるし被害が発生し続けるし神経すり減る」という、プレイヤーにとってストレスフルで爽快感の無いゲーム展開が楽しめます。ゲームシステムは結構カジュアル寄りで、そんなに複雑なルールでは無いものの「ベトナム戦争っぽさ」が上手く表現されていて面白い……のかなあ。いや万人向けでは無いのは確かですが、間違い無く面白いと思います。

スマートじゃないウォッチを運用してみた感想

今年は何ぞスマートウォッチ元年とかいう話なので、逆張りでスマートじゃないウォッチを買ってみた。

手巻き懐中時計って奴ですな。

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表には「Отечественная война (祖国戦争)」の文字とソ連マーク。

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裏面は「Великая Отечественная 1941-1945 (大祖国戦争 1941-1945)」の文字とソ連マーク。

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フタを開けた図。スケルトン仕様。

第二次大戦戦勝記念品っぽい感じ。製造年は不明だけど、全体的な質感はそんなに古くない。

誤差について

時刻合わせ時に秒針を止めることが出来ないので大まかな合わせ方しか出来ないものの、だいたい一週間で一分程度の誤差が出ている。まあ、正確な時間知りたければ携帯電話でいくらでも見れるのであんまり意味は無いといえば無い。

失われた操作の「文法」

買ってすぐにはフタの開け方すら分からなかったし、バネ巻きの方法も見当がつかなかった。一応、箱はついていたもののマニュアル類は全く無い。

amazonの販売ページに簡易的な説明が書いてあるんで何とかなったけれど、本当に最初はどう扱ったものか手も足も出ない感じだった。これ、手巻き時計の全盛期には説明の必要もないぐらい常識だったんだろうなというか、ハードウェアが廃れることで、操作の「文法」が継承されなく成ったら本当にても足もでなく成る感じがする。

現在のスマホのタッチ操作や、PCのマウス操作、家庭用ゲーム機の操作なんかも、恐らく十年もしたらこんな感じの断絶が起きるんじゃ無かろうか。

運用してみた感想

これがなかなか面白くて、ネットで検索してみると、バネ巻きは毎日定期的に一定の時刻で行ったほうが狂いが少ないとかそういうTipsが色々出てくる。また、何かの小説だか体験記だかに書かれてあったと思うけど、胸ポケットにしまうのが一番狂いが少ないとのこと。
この辺、注意深い運用管理が必要な精密機械という感じだけど、何となく現在のスマホの扱いTips(過充電・過放電を避けるとか、バックグラウンドタスクの抑制とか)と通じるものが有る感じがする。

恐らくだけど、懐中時計が登場した初期の頃(17世紀ぐらい)、個人レベルでこういう精密機械を運用管理するっていうインパクトは、今のスマホとは比較にならないぐらい凄いものだったんじゃないだろうか。

そういや

ニュートンと贋金づくり―天才科学者が追った世紀の大犯罪

ニュートンと贋金づくり―天才科学者が追った世紀の大犯罪

に、「懐中時計兼大人のおもちゃ」という、どんな発想でそんなのを思いついたのか小一時間問い詰めたいような変態ガジェットについての言及があったけど、スマートウォッチとクラウドファウンディング真っ盛りな今日、これを超えるような変態ガジェットは果たして出てくるんだろうか。

時刻合わせの謎

よく昔の戦争映画や小説で、作戦開始前に小隊長が集まって全員で時計合わせをするような描写が有るけど、実際に手巻き時計を使ってみて気づいたのは「時刻調整中も秒針が止まらない時計がこの世に存在する」事。
いやこのソビエト時計だけなのかなと思ったら、結構世間一般的に秒針を止められない懐中時計は多かったっぽい。

時間、合ってますか?

テンプに及ぼすこの動作をさして、超高級メーカーは「余計なこと」と見なしているのです。
パテック・フィリップをご覧になってみてください。
メカニカルムーブはどれも秒針停止機能を備えていません。

時計のFAQ 秒針規制、ハック

ちょっと古い時計や、一部の高級腕時計には、秒針規制(ハック)のないものがあります。

秒針規制とは、時刻合わせの時に、秒針をストップさせて、合わせたい時刻から秒針をスタートできる機構の事です。

秒針規制の無いものは、機械式の誤差を考えると不必要と考えているからです。

秒針を止められないということは、一分程度の誤差は許容範囲内だったのか、凄い気になる。いやほんと、秒単位で時刻合わせが出来ない「時計」ってのは結構カルチャーショック。