今年は何ぞスマートウォッチ元年とかいう話なので、逆張りでスマートじゃないウォッチを買ってみた。
手巻き懐中時計って奴ですな。
表には「Отечественная война (祖国戦争)」の文字とソ連マーク。
裏面は「Великая Отечественная 1941-1945 (大祖国戦争 1941-1945)」の文字とソ連マーク。
フタを開けた図。スケルトン仕様。
第二次大戦戦勝記念品っぽい感じ。製造年は不明だけど、全体的な質感はそんなに古くない。
誤差について
時刻合わせ時に秒針を止めることが出来ないので大まかな合わせ方しか出来ないものの、だいたい一週間で一分程度の誤差が出ている。まあ、正確な時間知りたければ携帯電話でいくらでも見れるのであんまり意味は無いといえば無い。
失われた操作の「文法」
買ってすぐにはフタの開け方すら分からなかったし、バネ巻きの方法も見当がつかなかった。一応、箱はついていたもののマニュアル類は全く無い。
amazonの販売ページに簡易的な説明が書いてあるんで何とかなったけれど、本当に最初はどう扱ったものか手も足も出ない感じだった。これ、手巻き時計の全盛期には説明の必要もないぐらい常識だったんだろうなというか、ハードウェアが廃れることで、操作の「文法」が継承されなく成ったら本当にても足もでなく成る感じがする。
現在のスマホのタッチ操作や、PCのマウス操作、家庭用ゲーム機の操作なんかも、恐らく十年もしたらこんな感じの断絶が起きるんじゃ無かろうか。
運用してみた感想
これがなかなか面白くて、ネットで検索してみると、バネ巻きは毎日定期的に一定の時刻で行ったほうが狂いが少ないとかそういうTipsが色々出てくる。また、何かの小説だか体験記だかに書かれてあったと思うけど、胸ポケットにしまうのが一番狂いが少ないとのこと。
この辺、注意深い運用管理が必要な精密機械という感じだけど、何となく現在のスマホの扱いTips(過充電・過放電を避けるとか、バックグラウンドタスクの抑制とか)と通じるものが有る感じがする。
恐らくだけど、懐中時計が登場した初期の頃(17世紀ぐらい)、個人レベルでこういう精密機械を運用管理するっていうインパクトは、今のスマホとは比較にならないぐらい凄いものだったんじゃないだろうか。
そういや
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に、「懐中時計兼大人のおもちゃ」という、どんな発想でそんなのを思いついたのか小一時間問い詰めたいような変態ガジェットについての言及があったけど、スマートウォッチとクラウドファウンディング真っ盛りな今日、これを超えるような変態ガジェットは果たして出てくるんだろうか。
時刻合わせの謎
よく昔の戦争映画や小説で、作戦開始前に小隊長が集まって全員で時計合わせをするような描写が有るけど、実際に手巻き時計を使ってみて気づいたのは「時刻調整中も秒針が止まらない時計がこの世に存在する」事。
いやこのソビエト時計だけなのかなと思ったら、結構世間一般的に秒針を止められない懐中時計は多かったっぽい。
テンプに及ぼすこの動作をさして、超高級メーカーは「余計なこと」と見なしているのです。
パテック・フィリップをご覧になってみてください。
メカニカルムーブはどれも秒針停止機能を備えていません。
ちょっと古い時計や、一部の高級腕時計には、秒針規制(ハック)のないものがあります。
秒針規制とは、時刻合わせの時に、秒針をストップさせて、合わせたい時刻から秒針をスタートできる機構の事です。
秒針規制の無いものは、機械式の誤差を考えると不必要と考えているからです。
秒針を止められないということは、一分程度の誤差は許容範囲内だったのか、凄い気になる。いやほんと、秒単位で時刻合わせが出来ない「時計」ってのは結構カルチャーショック。