前回(手持ち戦力についての説明)はこちら
Command: Modern Air/Naval Operationsリプレイ 「South China Clash」シナリオ(1) - ka-ka_xyzの日記
訳語について
このシナリオでは、"China Coast Guard(CCG)"が中国海軍(People's Liberation Army Navy(PLAN))とは別の組織として登場します。で、"China Coast Guard"に当たる組織は「国家海洋局」となりそうですが
国家海洋局が一元的にフォース・ユーザーとして機能することとなる。その執法船は、洋上での取り締まりの際は中国海警局の呼称を使用し、公船の船体表示も「中国海警」となる。
(中華人民共和国の海上保安機関 - Wikipediaより)
と、組織としては「国家海洋局」で、取り締まりの際には「中国海警局」と名乗り、所属するフネは「中国海警」船であるというややこしい表記となります。
一方、英語版Wikipediaの該当記事では"China Coast Guard(CCG)"は「中国海警」の訳語とされています。
この記事では混乱を避けるため(というか書いてる人が混乱しているので)、直訳で「中国沿岸警備隊」とします。戸田なっち…今あなたの気持ちが分かった。
シナリオの推移
2015年6月14日、現地時間09:00
シナリオ状況スタート。
取り敢えず以下の指示を出す
- 嘉手納基地からP-3C哨戒機を1機現場海域に派遣
- シンガポール基地からP-8A哨戒機を1機現場海域へ派遣
- シンガポール基地からF/A-18戦闘機2機(AGM-84K SLAM-ER対艦ミサイル装備)を現場海域へ派遣。一応8機のF/A-18が使用可能だが、全力出撃すると給油機の手当が難しそうだったので取り敢えず2機だけ出撃。対艦攻撃およびCAP用
- 現場海域付近のMQ-4C Triron UAVのレーダーをOnにして中国沿岸警備隊およびPLAN艦隊の位置の把握を試みる
- グアムのアンダーセン基地からMQ-4C Triron UAVを現場海域へ派遣。今現場にいるMQ-4Cが撃墜された場合のためのバックアップ
2015年6月14日、現地時間09:10
現場海域の状況。
- A: スカボロー礁付近で操業中の中国漁船
- B: 中国沿岸警備隊のフリゲート艦。正確なクラス名は不明…えーと、巡視艇じゃなくてフリゲート?いや沿岸警備隊ってレベルじゃ無い気がするというか、フリゲートを押し出してきて漁業権確保っすか。痺れる。
フィリピン海軍の哨戒艇は中国沿岸警備隊のフリゲートを見つけるや否や、全速で阻止に向かっているようです。(ユニットアイコン下部の"CAV"表示は、高速移動時のキャビテーションノイズ発生を表しています。この状態ではソナーの能力が大幅に低下し、またソナーによる被発見率が大幅にアップします)
2015年6月14日、現地時間09:36
フィリピン海軍のPeacock級哨戒艦と中国沿岸警備隊のフリゲート艦との間で偶発戦闘が発生。艦砲での殴り合いが始まりました。
ちなみに、中国沿岸警備隊のフリゲート艦は053H型(江滬-I型)と判明。
沿岸警備隊所属なんで流石に対艦ミサイルは装備していないようですが、100mm砲×2門という大火力を誇ります。一方Peacock級は76mm砲×1門。
対艦ミサイルこそ下ろしているものの(写真はPLAN現役時代なんで対艦ミサイルランチャー有り)、こういう小規模紛争では砲撃力の点で侮れない江滬-I型(053H型)
この事態を受け、プレイヤー(米海軍指揮官)は以下の行動を取ります。
- スカボロー礁南方のFreedom級沿岸戦闘艦を最大速力で現場へ急行させる
- さらに南方で待機しているArleigh Burke級イージス駆逐艦 Halseyでレーダー発振を開始。中国海軍(PLAN)の奇襲に備える
レーダーを発振するということは、レーダーの電波を傍受される事を意味します。傍受では正確な位置は特定されませんが、「だいたいこの辺りにいる」ことが知られてしまいます。一方で奇襲を受ける確率はほぼなくなります。既に殴り合いが発生している状況では、レーダー電波を傍受される危険性よりも中国海軍から奇襲を受ける可能性を減らす方が合理的と判断しました。
2015年6月14日、現地時間09:40
火力で圧倒的に不利なはずのPeacock級哨戒艦は、意外にも江滬-I型に対してほぼ互角に近い砲撃戦を行っていました。しかし、最終的に西方(中国沿岸方向)より飛来した対艦ミサイルにより撃沈。
もう一隻のPeacock級哨戒艦もまもなく江滬-I型フリゲートと交戦圏内に入ります。Freedom級沿岸戦闘艦も急行中。
2015年6月14日、現地時間10:07
少なからぬ損傷を受けた江滬-I型フリゲートに対して、もう一隻のPeacock級哨戒艦が戦闘開始。
江滬-I型フリゲートを撃沈しましたが、自身も武装およびセンサーの全てに損傷を受け、沈む心配はまず無いものの戦闘能力を完全に失いました。
Peacock級哨戒艦のダメージレポート。赤・黄色で表示されてる箇所は使用不能。
2015年6月14日、現地時間10:41
イージス駆逐艦 Halseyに対して、中国海軍のY-8X哨戒機が異常接近して来ましたが、特に攻撃は受けず。また、ユニット表示も中立状態のままでした。
今のところは、戦闘状態となっているのはまだ中国沿岸警備隊とフィリピン海軍・米海軍との間だけであり、中国海軍および中国空軍ユニットは中立アイコンになっています(この辺、あとでログデータを見直すと一部中国海軍ユニットは明確に敵と見なされていたりしてやや混乱)。
2015年6月14日、現地時間11:21
Freedom級沿岸戦闘艦 Fort Worthと中国海軍の056型(江島型)コルベットとの砲撃戦は、Fort Worthには圧倒的不利な状況で進行中です。なんというか、LCSが搭載している対艦ミサイル(RGM-176A Griffin)は小型の魚雷艇やミサイル艇のためのものであり、コルベット相手だとあんまりダメージを与えられていません。また、LCSが対艦ミサイルを全て打ち終わった後で艦砲射撃での戦闘に移行しましたが・・・とにかくLCSの搭載砲の口径が小さく(57mm砲搭載)、江島型コルベット(76mm砲搭載)相手の砲戦はかなり不利な展開になっています。
ここで、LCSもう一隻のLCSである Freedomが戦闘に加入。江島型コルベットを挟撃する体勢となりました。これで勝つる………と思っていたら
2015年6月14日、現地時間11:26
Freedom級沿岸戦闘艦 Fort Worth撃沈………
( ゚д゚)ポカーン
2015年6月14日、現地時間11:36
Freedom級沿岸戦闘艦 Freedom撃沈………
( ゚д゚)ポカーン
いや相手はコルベットだよコルベット。
そりゃLCSで大型艦艇と殴り合いは不利だと思うけど、フリゲートより小さなコルベットだよ?二隻同時攻撃でコルベットに力負けするってどうよ?高価な玩具なの>LCS
二隻がかりでコルベットと戦ってボコられるLCSの存在意義ってどうよ………
期待はずれに終わったLCSさん。非力ではあるけど見た目は良いよね。
2015年6月14日、現地時間12:12
中国空軍のJ-10戦闘機がTriron UAVへの攻撃を思わせる機動を取りました。プレイヤーはこの行動を敵対行為と判断し、Triron UAVを守るためにUSS Halseyによる対空攻撃を行いました。
この時点までは米海軍と中国海軍との関係はゲームシステム上は中立関係でしたが、以降は明確な敵対関係となります。
2015年6月14日、現地時間12:14
対空攻撃によりJ-10は撃墜されましたが、撃墜前に発射されていた空対空ミサイルによりTriron UAVが撃墜されました。グアムからくるバックアップ機が現地へ到着するまであと一時間程度ですが、それまではスカボロー礁近辺海域の広域監視が行えない状況となります。
2015年6月14日、現地時間12:42
F/A-18による中国海軍主力部隊への対艦ミサイル攻撃。
ただし、全弾撃墜され、ダメージを与えることは出来ず。
その後、五月雨的にP-3CおよびP-8Aによる対艦攻撃を行うも、いずれも決定打とはならず。
ちなみに中国側主力部隊のメンツ
054A型(江凱型)フリゲート二隻。防空力は西側艦艇に引けを取りません。
052C型(蘭州級)駆逐艦一隻。いわゆる「中華イージス」。こちらも防空力はかなり高い。
新世代の中国艦ですな。
2015年6月14日、現地時間13:48
嘉手納から到着したP-3CおよびHalsey所属対潜ヘリの共同作戦により、Type 041 Yuan級潜水艦撃沈。
2015年6月14日、現地時間19:01
Virginia級SSN Hawaiiにより、中国海軍主力部隊全滅。
かなりきわどい機動(20ノットオーバーで主力部隊を後方から長時間追尾する)を取ったのですが、全く警戒されること無く一方的な攻撃を行うことができました。
ゲームデータ的に、中国海軍の対潜能力はかなり低めの模様。
とりあえず、主力部隊を全滅させたところでシナリオを打ち切ります。
スコアはこんな感じ
うーん。演習シナリオ除くCMANO初プレイとしてはこんなものかなあ。
シナリオの振り返り
設定
シナリオ設定として、米国・中国ともに直接的な軍事力行使を望んでは居ないものの、沿岸警備隊やフィリピン海軍の独走により紛争が始まってしまい、エスカレートしていくというシナリオでした。なかなかエグいシナリオ。
沿岸戦闘艦(LCS)の評価
とにかく非力です。もともとLCSは自殺攻撃ボート、水雷艇、ミサイル艇等を狩ることが目的で、大型艦については従来型の外洋艦隊や航空攻撃に任せるという前提でした。しかし、今回のシナリオで登場するArleigh Burke級駆逐艦(フライトIIA)はデフォルトでは対艦ミサイルを搭載しておらず、つまりは従来型水上艦がまともな対艦攻撃力を持っていません。また利用可能な空軍基地があまりに離れすぎており、都合の良いタイミングで航空攻撃を行うことも出来ませんでした。
元々、LCSの元となっていた"ストリートファイター"構想(参照)の頃から、従来型の外洋艦隊による敵大型艦への攻撃と航空優勢が大前提となっていたはずですが、というか現状の米海軍はその前提が崩れた状態となっています。
もちろん、CMANOのゲームシステムではLCSの売りである「ネットワーク中心の戦い」が上手く表現できていないとは思いますが、それを差し引いてもあまりに対艦攻撃力が非力すぎます。
また、現状では"ストリートファイター"構想のもう一つの前提である「安価で調達」についても崩れており、「高価な割にイマイチ使えない装備」でしか無い気がします。もっと割りきった性能に引き下げて安価にするか、あるいはより高価で重武装にするかにしないと、どうにもこうにも中途半端な存在で終わる気が。
と、まとめようとしていましたが、最近になってもっとLCSを強化しようという話も出てきている模様。
混迷:ヘーゲル長官が検討指示:LCS強化や代替案:東京の郊外より・・・:So-netブログ
まあ………そうだよなあ。
遠すぎた島
シンガポールからスカボロー礁への距離がだいたい2100 km(≒ 1133 海里)、沖縄からの距離がだいたい2800 km(≒ 1512 海里)、程度です。
で、今回のシナリオではシンガポールにF/A-18戦闘機が配置されていますが、AGM-84K SLAMERを装備した場合の戦闘行動半径が450海里、AGM-88C HARMを装備した場合の戦闘行動半径が650 海里となっています。これらのF/A-18をスカボロー礁付近へ進出させようとすると、途中で空中給油を行って数時間かけてやっとスカボロー礁へ到着し、ミサイルを発射した後にすぐ引き返し、さらに再度空中給油を行ってどうにか帰還できるといった具合になります。
このような状態では、必要なときに必要な航空支援を得ることはかなり困難です。
シナリオ作者的には「フィリピンに米軍が使用できる空軍基地が必要」というメッセージを込めてるのかも。
中国海軍の対潜能力
今回のシナリオプレイではVirginia級原子力潜水艦により中国海軍主力部隊を全滅させることに成功しましたが、その際に相手の後方から高速(20ノット)で追いかけるという結構無茶な機動を行っています。
まともな対潜能力を持つ相手であれば、このような行動(高速なのでノイズが発生してソナーに引っかかりやすく、かつ相手を追いかける形だとなかなか距離が縮まらないため、ソナーに引っかかりやすい状態が長時間続く)はかなり危険なのですが、結果的に中国海軍側はVirginia級が魚雷攻撃を行うまで、その存在に全く気づいて居なかったようです。
この辺の対潜能力の低さがどの程度ゲーム的な味付けか分かりませんが、中国海軍の対潜能力が低いという分析にはある程度根拠が有るようです。