ルトワック「自滅する中国」感想
- 作者: エドワード・ルトワック,奥山真司
- 出版社/メーカー: 芙蓉書房出版
- 発売日: 2013/07/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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うーん。面白い本なんだけど、読んでる最中に「コレ、俺が知ってる東アジアじゃない」的な違和感を持ってしまう。
理解できた限りで要約すると
- 中国の経済・軍事的な台頭により、周辺諸国との摩擦が飛躍的に増大した。つまり、台頭によって戦略上の優位が失われるという逆説的な状況にある。
- 中国は基本的に外交関係よりも国内を優先させる傾向や他国との認識ギャップを埋めようとしない傾向(「大国の自閉症」)が他のどの国よりも強いため、摩擦を問題視しようとしない。また、他国からの悪印象にも鈍感。
- 一方、周辺諸国は中国の政治・経済・軍事面での高圧的な要求に直面し、相互に連携した対中同盟を結成しつつある。国家の防衛は(中国に屈服して得られる)経済的な利益より遥かに重要なのだ。
といった論旨。
特に面白い(そして一方で違和感を持つ)のが関係諸国と中国との関係について扱った部分で、独立した章としては
- オーストラリア
- 日本
- ベトナム
- インドネシア
- 韓国
- モンゴル
- フィリピン
- ノルウェー
といったメンツ。あと、独立した章にはなっていないもののインドやロシアについても言及されています。で、基本的な方向性としては、中国の高圧的な要求に対して(韓国を除く)東アジア諸国は対中同盟を組む方向に流れていくのだ・・・という方向で話が進むんですが、このへんが気になる所。いやだって、それぞれの国にはやはりそれぞれの思惑やら国内外のしがらみやらがある訳で、そう簡単に行くものなのかなあ。
例えば、ベトナムとか15章を読む限り、中国とがっつり事を構えることも厭わないような印象ですが、ノーベル平和賞がらみのゴタゴタでは中国側に付いたりもしてます。結局のところ、米国になびきつつも「米中どっちかに過剰に肩入れして火傷したくない」辺りが本音な感じ。スーパーパワーのすぐ隣りに居る(比較的)小国の行動としては妥当。
非常に面白い本なのは確かなんですが、じゃあ手放しで絶賛するにはこれまた非常に微妙というか、評価に迷う。