エミリオ・ルッス「戦場の一年」感想

戦場の一年 (白水uブックス―海外小説の誘惑)

戦場の一年 (白水uブックス―海外小説の誘惑)

第一次大戦の最中、オーストリア国境のイタリア軍は、はてしない塹壕戦を戦っていた。無能な将軍の無謀な作戦で次々と倒れていく兵士。にも関わらず使命感に燃え、勇敢に戦闘に立ち向かう主人公の姿は、読者に感想を与えずにはおかない。戦争の悲惨さをあますことなく描いた戦争文学の傑作。

第一次大戦、しかもイタリア軍将校の体験記という、主にヘタリア的な意味で面白そうだったので購入。まあなんというかいろいろな意味で期待通りの作品でした。

まずは1916〜17年のイタリア半島北部の戦況については以下のサイトを参照。
泳ぐやる夫シアター やる夫で学ぶ第一次世界大戦  第二十二夜「イタリア参戦 ~マリオvsデッテイウ~」


味方の無能な将軍と敵の機関銃陣地によりものすごい勢いで仲間たちが死んでいくという流れは、他の第一次大戦体験記と共通していますが・・・・でもいろいろとおかしい。

例えば

夜中に決死隊が爆薬筒を使って有刺鉄線を爆破除去して進撃路を確保

”翌朝になってから”攻撃開始

進撃路を集中的に防護されて攻勢失敗

とか

突破作戦のために山岳スキー部隊を後方で特殊訓練

味方の補給集積所を襲撃して食料を強奪

とか

オーストリア軍が地下トンネルを掘ってイタリア軍の塹壕直下に爆薬を仕掛けた事が判明

クリスマスの日に「塹壕の爆破と同時にオーストリア軍が攻勢に出る」との諜報情報が入る

情報を逆手に取って塹壕から兵を引き揚げて待ち伏せを行うも、オーストリア軍は攻撃を仕掛けてこず、待ち伏せは空振り

爆薬は何故か放置され、半年後に塹壕はイタリア軍守備隊ごと爆破される

とか

大隊長自ら、命令不服従の兵士に対して銃殺を命令

銃殺隊が編成されるも、誰も撃たず

業を煮やした大隊長が拳銃で銃殺を執行

銃殺隊、躊躇なく大隊長を射殺

とか、何故こう、イタリア軍はイタリア軍というだけでネタになってしまうのか。色々おかしい。(鎧を着て突撃とか、大規模叛乱一歩手前とかのエピソードについては、他の国でも例が有りますが・・・)


追記:イタリアを馬鹿にしているわけではなく、この本が持つ「キャッチ=22」や、いしいひさいち鏡の国の戦争」を思い起こさせるようなノリを紹介しようとするとどうしてもこうなってしまう訳で。

しかも後書きによると、本書についての検証本にて当時の関係者からの証言を参照した結果

ほとんどの登場人物には特定可能な実在した人物がおり、本書の中で書かれている事件についてもそれが事実に準拠していることを明らかにしている。

とのこと。やっぱり色々おかしい。