ちょっと頭を冷やした状態で改めて改めてSTAP細胞について(結論:よく分からん)

正直、前回は何か頭に血が登った状態で勢いで書いてしまった気がする。反省。
で、頭を冷やして改めてまとめてみます。



追記: 2014/03/09
この内容は専門家のレビューとか経ている訳ではないし、枝葉の部分はばっさり切ってるし、あくまで論文序盤(Fig. 1~Fig. 2あたり)までに的を絞った内容なので、拡散とかする前に裏とったほうが良いと思われ。前回も書いたけれど、最後にピペットマン握ってからもう10年は経つのよ漏れは。

追記2: 2014/03/09

このエントリでは件の論文のデータ捏造疑惑については触れてません。(研究者としての基本的な職業倫理の有無についての話なんで、確定するまではブコメTweetなどでのコメントで留めておきたい。)
ただ、今回のネタで取り上げているFigでも疑惑が出てるので、捏造疑惑について興味のある人は下記サイト等を参照してください。

小保方晴子氏の論文の疑惑まとめ 小保方晴子氏の論文の疑惑まとめ

もうちょっと具体的に補足すると、ここの疑惑画像1, 2, 3への指摘が事実であるとすれば、以下の内容は根本から吹っ飛びます。



追記3: 2014/03/09
ブクマにて指摘があったのでプレスリリースについて追記。

プレスリリースについては3/5付けのものを前提としています(キメラマウスや胎盤形成の話については今回の話とは直接関連しないので除外)。
ただ、現在確認できる一番古い魚拓(2/6付け)だと「STAP細胞」と「STAP幹細胞」は明確に区別されてない気が。この辺、無駄な混乱を避けるためにも修正履歴は出しててほしいなあ。
訂正。ブラウザ環境の問題か、今見たら2/6付けの内容でもちゃんと「STAP幹細胞」について図で示されてました。


追記4: 2014/03/13
まあ読んでる人はみんな把握してるとは思うのですが、一応追記。
追記2でリンクしていた画像流用疑惑について、他のメディアでも独自入手した博士論文で画像が酷似していることが確認できたということで、捏造「疑惑」は限りなくクロに近いものとなりました。

つなごう医療 中日メディカルサイト | 小保方さん、STAP細胞 博士論文画像と酷似 つなごう医療 中日メディカルサイト | 小保方さん、STAP細胞 博士論文画像と酷似

こうなってしまうと、クロと確定していないデータについても限りなく疑わしい灰色扱いな訳で。
「再現結果待ち」というのは、あくまで不正なデータではないというのが前提だったわけですが、現状では第三者の手で生データ(実験ノート、残ってる試料やサンプル等)を検証して、データのどこまでがクロでどこまでが信頼して良い物なのか調査を行う方が先だと思います。(クロ+灰色データしか根拠が無いのに追試って言われても、学生や任期職の人にとっては時間的に余りにリスクが高すぎ)
以下本文の内容はあんまり意味が無くなってしまった訳ですが、一応残しておきます。



追記5: 2014/03/13
あ、忘れてたのでもう一つ。
STAP細胞 確信なくなった NHKニュース STAP細胞 確信なくなった NHKニュース

若山教授によりますと、STAP細胞が出来た重要な証拠の1つである特定の遺伝子の変化について、論文発表前、研究チーム内では「変化がある」と報告され、信じていましたが、先週、理化学研究所が発表した文書の中では、変化はなかったと変わっていたということです。

この辺を読むと、理研チーム側も外部と連絡を取り合う中で「STAP細胞」と「STAP幹細胞」をあんまり厳密に区別して無かったんじゃ無いか疑惑が。


以下本文。


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まず、「STAP細胞」と「STAP幹細胞」について。

  • STAP細胞」→リセット済み細胞。ただし増えない
  • 「STAP幹細胞」→「STAP細胞」をある条件で培養すると出来る。リセット済みで、しかも増える

いやこの辺、自分でも把握していたつもりでは有ったけれど前回のエントリ見ると大分とっ散らかってて反省。

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で、件の論文Fig. 1,2では、T細胞に刺激を与えて「STAP細胞」とし、さらにSTAP細胞を分化させました。で、このとき「STAP細胞」にTCR再構成が入っていることは確認済み。「STAP細胞」を更に分化させた細胞についてはTCR再構成は未確認。


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では、再現手順に書いてることについて。再現手順では、「STAP細胞」でTCR再構成が見られないということで、「STAP細胞」でのTCR再構成や「STAP細胞」から分化した細胞でのTCR再構成については触れられていません。また、上では出発点を「T細胞」としていましたが、コレも誤り(次の図を参照)

なので、論文との決定的な矛盾では無いです。この辺は前回先走りました。すいません。


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Fig. 1や再現手順で「STAP細胞」を作るために使用した元々の細胞は「T細胞」だけではなく他の細胞を含むものです(「CD45」というタンパク質を使用して選り分けを行っていますが、これはT細胞だけではなく血球系の細胞で一般的に存在するものです。)
Fig. 1で出ている電気泳動結果は、「T細胞由来のSTAP細胞」「その他細胞由来のSTAP細胞」が混在しているサンプルから得られたものです。再現手順のデータでは、そのような混在しているSTAP細胞からTCR再構成の起きた「STAP細胞」が得られていないということなので、論文の内容とは決定的な矛盾はありません
ただし、「STAP細胞」が分化済みの細胞から作成されたという根拠は今のところない状態です。これから「STAP細胞」を再現できる研究室が増えればそういうデータが出てくるかもしれませんし、出て来ないかもしれません。

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そういう決定打となるデータが無い以上、例えばこのような体性幹細胞(あるいは何か別の幹細胞)がサンプルに混じっていた可能性も否定できません(セレクション説)。

まとめ

前回読んでいただいた方には申し訳ありませんが、断定的な表現を使用したことは反省しています。

ただ、

「STAP幹細胞」および「STAP細胞から分化した細胞」について、分化済み細胞がリセット(初期化、リプログラミング)されているという決定的な証拠はやはり出てないと思われます。他の研究機関による再現により確定できればなあ。

もういっこ

やっぱこれ普通の勤め人が手をだすレベルじゃないわ。平日の大半の時間は使えないし、じっくり資料を読み込むことすらままならぬ。