エドモンド・ハミルトン「フェッセンデンの宇宙」感想

フェッセンデンの宇宙 (河出文庫)

フェッセンデンの宇宙 (河出文庫)

天才科学者フェッセンデンが実験室のなかに創った宇宙。それを見てしまった「ぼく」は―。名作中の名作として世界中で翻訳された表題作他、「向こうはどんなところだい?」「翼を持つ男」など稀代の奇想SF作家の代表作を収録、さらに文庫版のための新訳3篇を加えた全12篇。情感豊かなストーリー・テラーがおくる物語集。

以下、主だった収録作について感想。

フェッセンデンの宇宙
フェッセンデンの宇宙(1950年版)

小学校の図書館にあった児童向けSF全集で読んだなあ・・・SFファン人生は既にあの頃から始まっていたのかと今さらながら実感。
マッドサイエンティストテーマSFとしても、スケールの大きな思弁SFとしても傑作。

向こうはどんなところだい?

初出は1952年。復員兵のトラウマを描いた物語が主流と成るのはベトナム戦争以降ではあるものの、当時もWW2で同様の状況は発生していたはず(朝鮮戦争は未だ停戦前)。時代背景的に率直に語ることが出来ない復員兵のトラウマというテーマをSFに仮託して描いているのかどうか気になる所。

帰ってきた男

ひねりの効いた「早すぎた埋葬」テーマ。何かのアンソロジーで呼んだ記憶があるが、思い出せない。

凶運の彗星

笑っちゃうぐらい古典的な侵略テーマSF。とはいえコレはコレで王道パルプSF的な味があって良い。

漂流者

80〜90年代の学研「ムー」読者投稿ページSF(参照: アンサイクロペディア)。最近は個人情報保護法的な制約から、かつてのアレさは大分薄れたらしいとのこと。


こうして改めて眺めてみると、いかにもパルプSF風味なSFから世の無常を感じさせる老成したSFまで、幅広く楽しめる本。後書きも含めて買って損なし。オススメ。

追記エドモンド・ハミルトンというとどうしても、ながいけん江戸主水ハミルトン」が真っ先に連想される件は正直どうでもいい(思えばこれ読んだのも小学校の頃だったな)。