軍事研究2011年3月号
- 出版社/メーカー: ジャパンミリタリーレビュー
- 発売日: 2011/02/10
- メディア: 雑誌
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ちょっと前に会社の近くで「軍事研究」の取り扱い書店が潰れてしまい、かといって定期購読するほどでもないしなあ・・・と思っていたが、やっと別の取り扱い書店が見つかったので早速購入。
今週も色々と盛りだくさんな内容。
神代の自衛隊(警察予備隊裏面史)
単に「軍事」に留まらない昭和裏面史についてタイムリーな記事。
先ずは、国内マスコミではあんまり大きな話題になってないこの発掘調査について。
日本の過去を掘り起こす 人骨の発掘調査を巡る気まずい沈黙 The Economist
「2月末に旧陸軍「731部隊」の人体実験に関わるであろう人骨についての発掘調査が開始されているが、国内マスコミがほとんど取り上げないよ!」という記事。まあ確かにカンニング事件なんかよりよっぽど重大な問題なはずなんだが、扱いが小さすぎる印象がある。
個人的には、とっとと調査して過去の負債を清算すべきだと思うが、直視したくない人も多いんだろうなあ。人体実験については今でも否定派が居るみたいだし。
「軍事研究」誌に話を戻すと、「神代の自衛隊(警察予備隊裏面史)」という回想記事がありまして、警察予備隊時代に著者が体験したエピソード(隊内のイベントで羽黒山と相撲を取ったらいつの間にか「羽黒山と互角に相撲を取った伝説の人物」扱いされていたりとか、旧軍出身者と戦後入隊者の軋轢とか)が紹介されてます。その中に、昭和29年当時"防疫給水部の責任者"で"特殊部隊の研究所の所長"の"I中将"と偶然出会い、戦争当時の回想を聞いたというエピソードが有りまして・・・
というか、"I中将"って伏字にする意味が全くないというか、この人以外に該当する人物が居ない。
で、某"I中将"が記事の筆者に語ったとされる当時の回想の内容なんですが。
最終的に捕虜も実験材料に使ったことは事実です。
部隊全員の身柄の安全を条件に、そのデータを米国に引き渡したのです。
このことは我が国の当時の政府関係者はよく知っていることです。
と"人体実験なんて無かった派"な方々にとってかなり痛い証言が詰まってます。
まあ、事実関係については当時の関係者の証言や米国側の公開資料で分かっていることも多いんですが、むしろ「これらの行為を某"I中将"がどのように捉えて居たのか」という部分が興味深い。(念のため、引用してて正直なところ嫌悪感を覚える部分も多い。"興味深い"と"賛成する"とは全く別)
こんな実験は戦後の米国の言う人権等という観念からすれば、非常に問題があることは当然です。しかし当時の観念からすれば、人権より国権が重視される時代でしたので、こんな研究は多かれ少なかれ世界の各先進国で実施されていたのです。だからアメリカは原爆を開発できたのです。
まあ、戦後に米ソ英中などの核保有国が行っていた「アトミック・ソルジャー」研究が批判されるようになったのは90年代の冷戦終結後だし、「お前らだって同じことやってたんだろ!正義面するな」という主張は一理ある。
だから現在では人権を主張している米国が、このデータを利用して世界の医学の最先進国になりました。最近臓器移植という言葉がマスコミで囁かれていますが、米国はこの実験データを元にして臓器移植手術等の先端医学を発展させたのです。
米国に引き渡されたデータの内容が分からないんで、この点について肯定も否定もしかねる。臓器移植への応用については、あくまで某"I中将"の憶測でしか無い。しかし、この憶測がもしも事実であれば、NIH等を巻き込む大スキャンダルになりそう。
我々がやった行為に対しては、もちろん毀誉褒貶はあるとは思います。しかし私は決して我々が人名を軽視していたのではなく、人類のために大いに貢献したいと思ってやったことで、私たちが命を奪った人々の数百倍、いや数千倍の人命を救うものだと思っています。だから我々の行為は、決してナチスのやったユダヤ人虐殺のような行為とは、根本的に違うものだったのです。これは今後の歴史家が証明してくれるでしょう。
と、某"I中将"本人は自分たちのやったことは全人類のためであって、決して誤って無かったと主張していたとのこと。この下りについては、自分はマッドサイエンティスト的な使命感として嫌悪を感じるが、同時に何かしら不思議な共感を覚えてしまうのも(認めたくはないが)また事実。
まあ、歴史家から評価を受けるとしたら、良い部分も悪い部分もひっくるめて資料が残っていないと無理だよなあ。
上の引用はあくまで証言の一部でしかないです。この件について語りたい人は「軍事研究」を買って証言全体を把握した上で語ったほうがいいです。また、この証言内容自体についての信憑性の確認や他の史料との突き合わせについては行ってません。念の為。
中国軍専用GPS「北斗」
中国が静止軌道衛星を使って独自運用している「北斗1」について。
開発時に色々と技術的な制約があったのは確かなんだろうけど、米国のGPSと違って
- 利用者側が電波を発信する必要がある
→軍事的に言うと電波管制下では使用できないし、自分の居場所を晒すことになる。
- 位置データを特定する演算処理を地上のメイン局側で行っている
→つまり、利用者が増えれば増えるほど不便に成る。現状では1秒あたり150件の位置問い合わせにしか対応できない。
というシステム。なんというか、設計段階でスケーラビリティとか全く考慮してない印象。(80年代中国の設計なんでしょうがないといえばしょうがないんだけれど)
また、カバー範囲を広めた「北斗2」計画が進行しているものの、先行する欧州の「ガリレオ」計画との間で周波数割り当て問題で揉めてる。中国国内マスコミでは「彼らより先に我々の北斗衛星を打ち上げて、(重複申請している周波数の)電波を発射させれば、我々の勝ちだ」という報道も有ったらしい。如何にも中国なエピソード
諜報IT専門の巨大CIA型民間軍事会社
諜報・情報収集、さらにそれらに関連する情報システムの外注などに特化したPMCの台頭について。特殊部隊からPMCへの高給引き抜きが問題になっているが、同様に政府系諜報機関から民間諜報企業への引き抜きが問題となっているとのこと。