石井 光太「戦場の都市伝説」感想
- 作者: 石井光太
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2012/09/28
- メディア: 新書
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常に狂気に包まれた戦地や紛争地帯では、多くの都市伝説や怪談が生まれる。ウガンダ・ビクトリア湖の「死体を食べて大きくなった巨大魚」、パレスチナの「白い服を着た不死身の自爆テロ男」、カンボジアの「腹を切り裂こうとする幽霊」、ナチス・ドイツの「ユダヤ人の脂肪でつくった人間石鹸」──。これらの噂話が妙に生々しいのには理由がある。その裏側には、往々にして、軍や政府、ゲリラ組織が隠蔽した「不都合な真実」があるからだ。海外取材経験豊な気鋭のノンフィクションライターが「都市伝説」から解き明かす、人間の心の闇と、戦争のリアル。
ビミョーな一冊。
過去の大戦に絡んで、あるいは現在イラクやアフガンなどの紛争地帯で流布されている(という触れ込みの)都市伝説を紹介し、その背景を著者が解説するというフォーマット。
しかし、この本で取り上げられている「都市伝説」が本当に語られていたのかどうかという証拠は何も無し。著者が実際に紛争地帯で聞いてきた話ということであれば、ルポ的に最低限「何時」「何処で」「誰から」「どのような状況で」聞いた話なのかという情報ぐらいは欲しい。
また、著者による解説もちょっと物足りない部分もある。例えば「人間石鹸」について
では、この人間石鹸伝説はいつ頃生まれたものなのだろうか。
文献に残っている最も古いものは1942年だ(後略)
とあるものの、直接の起源は第一次大戦時のプロパガンダでしょ(ソースは池田徳眞「プロパガンダ戦史」。以前書いた感想はこちら)
- 作者: 池田徳真
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1981/01
- メディア: 新書
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他にも、"戦艦大和の建造中に工員が密閉区画に閉じ込められたものの、工期の遅延が認められなかったために彼らを閉じ込めたまま工事が進められて・・・・"みたいな話が取り上げられているものの、こういう話は(自分の知るかぎりだと)19世紀の蒸気船グレート・イースタンの建造時にはすでに発生してます。
つまり「戦争の悲惨さ」とも「旧日本軍の非人間性」とも関係無いところでもこういう噂は発生しうるわけで、安直にそういう結論を導き出すのは非常に危険じゃ無いかなと。
本のテーマとしては非常に面白いものの、料理の仕方で大分ミスした感。