DX-1校正
前回の続き。
6月11日(土)開催:「ガイガーカウンターミーティング」:東日本大震災復興支援「Arts Action 3331」:3331 Arts Chiyoda
↑で放射線量がきっちり測定済みのCs-137サンプルを使用した計測と、その結果を基にした校正をやってみました。結果としては
- DX-1のマニュアルに書いてる「カウント数−放射線量」比例係数は使えない。
- 実際の測定結果からかなりいい感じで検量線を引けたが、マニュアルの値と違いすぎて困る。
ノイズカウントの確認
16:00からの測定イベント会場では、鉛ブロックで組んだボックスを使用して、γ線を遮蔽した状態での計測を行うことができました。この様な条件では外部からの放射線を(だいたい)遮蔽した状態での測定と成るため、装置自体に由来するノイズカウントを取得できます。
通常の線量計の場合、鉛ボックスに全体を入れて測定する(あるいはプローブ部のみを入れる)訳ですが、DX-1の場合にはそももそ手でボタンを押さえないと計測できず、カウント音を聞かないとカウントを数えることも出来ないという罠があるため、鉛ボックスに入れっぱなしにすることができませんでした。
そこで
- 鉛ボックスのフタを半分開けた状態で中にDX-1を突っ込み、カウントを取る。(当然ラドンなどに由来する上からの放射線は完全には防げないんですが・・・)
- 横置きした鉛ブロックでDX-1を挟んだ状態でカウントを取る(横や斜め横方向からのγ線を遮断。この方法では床からの放射線は遮蔽できませんが、床は外の土壌のように汚染されていないため、コンクリから出る自然放射線のみとなるはず。そもそも鉛ブロックも放射性同位体を含んでいるわけで、この条件でも結構意味があるんじゃないかと思い測定)
という二つの方法を使用してだいたいのノイズカウントを計測してみました。欲を言えば家での測定と同様、20回はやりたい所ですが、他の人の都合があるので6〜8回の測定です。
測定条件 | 部屋のバックグラウンド(床上1m) | 部屋のバックグラウンド(床面直置き) | 鉛ボックス内測定 | 鉛ブロックサンド測定 |
測定回数 | 8 | 8 | 6 | 8 |
中央値 | 21 | 20 | 16 | 14 |
平均値 | 21.25 | 20.75 | 14.67 | 15.25 |
最大値 | 28 | 32 | 18 | 24 |
最小値 | 16 | 14 | 6 | 8 |
標準偏差 | 4.53 | 6.32 | 4.5 | 5.23 |
単位はcpm(count per minute)、30秒間のカウントを二倍してcpmとしました。
考察
- 鉛ボックス内で測定した値の中央値(16 cpm)より鉛ブロックサンド内で測定した値の中央値(14 cpm)の方が大きいことが分かります。今回は、より効果的に遮蔽されているはずの鉛ボックス内の測定結果(16 cpm)を装置自身によるバックグラウンドとみなします。(本当はもっと試行回数を増やしたいところですが・・・)
- 床上1mで測定した部屋のバックグラウンドカウントと、床に直置きして測定したカウントでは、中央値にほとんど差がでません。つまりは床面からはそんなに強烈な放射線が出ているわけではないということです。(まあ、雨にあたってないので当たり前ではありますが)。なので鉛ブロックサンドでの測定も、外部からの放射線を遮蔽する方法としては結構有効な感じです。
- 鉛ボックス内の測定結果中央値(16 cpm)は、ボックス外でのバックグラウンド測定で得られた中央値(21 cpm)と比べて、25%程度減っています。このことは、外部からの放射線によるカウントが、装置自体のノイズに埋もれていないことを示しています。
- このときの部屋のバックグラウンド線量は、KEKの方によると 0.06μSv/hrとのこと。このレベルまでは、注意深く測定すればカウントが取れる・・・はずです。
Cs-137サンプル測定
測定の状況としては
- テーブルの上にCs-137の密封サンプルが置かれている。
- Cs-137サンプルを囲んで3つの同心円が書かれている
- それぞれの円は、KEKの方が校正済みNaIシンチレーションカウンタで実測したCs-137からの放射線量(バックグラウンド補正済み)に対応
- ここでは、中心に近い順から順に同心円をr1(0.6 μSv/h)、r2(0.22 μSv/h)、r3(0.1 μSv/h)と書きます。
- あと、測定が始まる前に廊下でバックグラウンドカウントを計測したので、それもデータとして残します。ちなみにバックグラウンドは0.06 μSv/hだそうです。
結果は以下のとおり。
測定条件(線量) | r1(0.6 μSv/h) | r2(0.22 μSv/h) | r3(0.1 μSv/h) | 室内バックグラウンド |
測定回数 | 7 | 5 | 5 | 10 |
中央値 | 68 | 40 | 32 | 20 |
平均値 | 71.14 | 41.2 | 32 | 19.8 |
最大値 | 90 | 48 | 36 | 32 |
最小値 | 64 | 38 | 26 | 8 |
標準偏差 | 8.86 | 4.15 | 3.74 | 6.14 |
単位はcpm(count per minute)、30秒間のカウントを二倍してcpmとしました。測定回数が少ないのは時間制約のため。
なんというか、距離に比例してカウントが下がっているのは確かなんですが・・・・マニュアルにある「カウント−線量」比例係数(Cs-137由来のγ線をソースとした場合、330 cpm = 1 μSv/h)から期待される結果と明らかに違ってる。。。。Orz
検量線の作成
如何にも直線に乗りそうな感じなので、中央値を使って検量線を書いてみます。
□でプロットしているのが、今回の測定結果。plots32を使用し、装置自身によるバックグラウンド(16 cpm)の場合には0 uSv/hという条件で最小二乗近似しています。近似式は下記の通り。
y=0.011*x – 0.173
×でプロットしているのが、マニュアルにある「カウント−線量」比例係数を基にして線量からカウント数を求めたものです。
×と比べると□のプロットでは同じ放射線量で発生するカウント数が大幅に減少しています。これは経年劣化っぽい感じですが・・・・初めからハズレだった可能性も有りうるような・・・でもここまでズレる物なんでしょうかねえ。
一応、計測結果がある程度直線に乗っているのは確かなので、上記の範囲内での計測に使えそうですが・・・うーん。今回は検量線を作成するために使用したデータも少ないし、微妙。
結論
とりあえず上記の範囲での計測はできそうです。ただ、これから携帯線量計を買おうとするひとは、いくら安いからと言ってDX-1を買ったらドツボにはまると思う(ただ、ガイガーカウンターミーティングで他の人の測定結果を見る限り、ここまで酷い状態のものは少ないです。一般的なガイガーカウンターはもっとマシな気がします)。まあ、カウントを聞いて直にcpmで測定したりとか、デジタル積算式の線量計には無い魅力も有るんですが・・・嘘です。心境的にはこんな感じ。
追記:自分が測定していた家の中や周辺でのカウント(5 cpm〜40 cpm前後のバラつき、平均で20〜25cpm前後)はかなり下限に近い値です。厳密な値を出すのは無理でしょう。ただ、放射線量の見積もりがある程度確かであることは確認できたので、それで充分です。
あと、騒がしい場所ではクリック音を聞くのが難しいので、将来的にはクリック音を端子に出力してPC/Android/iPadからカウント取れるようにする改造は必要かなあ。