神狩り

神狩り (ハヤカワ文庫JA)

神狩り (ハヤカワ文庫JA)

情報工学の天才、島津圭助は花崗岩石室に刻まれた謎の《古代文字》を調査中に落盤事故にあう。古代文字の解明に没頭した圭助は、それが人間には理解不能な構造を持つことをつきとめた。この言語を操るもの──それは神なのか。では、その意志とは? やがて、人間の営為を覆う神の悪意に気づいた圭助は、人類の未来をかけた壮大な戦いの渦にまきこまれてゆくのだった。

http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/20994.html

復刊されていたのでげと。
いや凄いねこの作品。神林長平のあとがきにもあるけど、主人公が無謀なケンカを売ってる相手は「神(キリスト教的唯一神)」であり、「世界」であり、自分と同士以外のあらゆる人・物全て。どう考えても負けは見えてるのに、不条理な運命に対する怒りだけをよりどころに戦い続ける。放課後に学校のガラスを割ったり盗んだバイクで走り出したりする15の夜と本質的に変わらない気もするが、終盤まで続く異様な怒りのテンションが凄い。
それにしても、現在この作品の続編が書かれるとすれば、絶対にGoogleをモデルにした組織が絡むだろうなあ。あの会社の最大の売りは「言語を解析すること」だし。全地球レベルでサーバー資源を使って《古代文字》解析したりしそうだ。
しかし、(ラストのネタバレになるのでぼかすけど)距離的に遠いところに行くことがそれほど大きな意味を持つという感覚が、他の部分と比較してどうにも古いというか、70年代だからしょうがないと考えるべきなのか(でも時期的にはバラードのニューウェーブ運動とかと重なるはずだし、当時としてもどうなんだろうか?生まれる前のことなんで皮膚感覚としてアリなのかナシなのかというところが分からない)
また、《古代文字》の論理記号について、通常の言語と比べて論理記号が多いならともかく、少ないというのが良く分からない。普通に考えたら通常の言語のサブセットになりそうな気がするが。

今読み返したら全然褒めて無いような感じになってるけど、間違いなく傑作です。お勧め。