軍艦長門の生涯

軍艦長門の生涯 (上巻) (新潮文庫)

軍艦長門の生涯 (上巻) (新潮文庫)

阿川弘之氏の旧日本海軍を扱った代表作の一つ。
日本の海軍力を代表する戦艦「長門」(「大和」の存在が広く知られるようになり、旧海軍を象徴するような存在になったのは戦後になってから)に関わる細かなエピソードを軸にして、大正時代から大日本帝国の解体までの日本と日本海軍を語った小説。
「小説」とはいっても、資料や当時存命中だった旧海軍関係者へのインタビューを元に作成されており、ノンフィクションに近い作品です。

上巻では、長門の起工(大正6年)から満州事変などを経て社会全体が右がかってくる昭和6年までを扱っています。

阿川氏は「日本海軍大好きな人」だと思われがち(特に、作品のタイトルだけ知ってて実際に中身を読んだことの無い人にとっては)ですが、実際のところは「戦時中であっても海軍の中に残っていた、大正期のリベラルな気風」が好きなひとであり、日本の軍国主義化と太平洋戦争を扱った中・下巻よりも上巻の方が筆が乗っている感じがします。
また、海軍士官や下士官兵の書き方についても、手放しに偶像化や英雄化するのではなく、等身大の人物として書くスタイルです。

右であれ左であれ、昭和史に興味のある人は読んどいて損は無いと思われ。