故郷/阿Q正伝
- 作者: 魯迅,藤井省三
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2009/04/09
- メディア: 文庫
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光文社古典新訳文庫版。
なんというか、魯迅さんパネェ。ロック過ぎる。教科書に載ってた「故郷」でしか魯迅を知らなかった自分の不明を恥じるしか無い。
教科書に収録できる程度におとなしい話が「故郷」以外に無かったんだろうなあ・・・という気も。
「阿Q正伝」
清朝末期に社会制度とか革命運動とかに色々と押しつぶされつつ生きていく最底辺ダメ人間を描いた作品として有名だけど、押しつぶされる様を悲劇ではなく喜劇として書ききった所が凄い。すごすぎる。だって最終章のタイトルが「大団円」だよ。パネェ。
「端午の節季」
同じく清朝末期の小役人兼教師が主人公。当時の中流階級+インテリゲンチャの内面を描いた作品。
教師としての給与が未払いになって、他の教師と一緒にストをするわけでもなく、でもストの結果として給与が出れば受け取り。役所からの給与が未払いになっても何かする訳ではなく、役所へ支払いを要求に行くわけでもなくかと言って辞職するわけではなく。金策なんてどーでも良いよ感を全面に押し出しつつあっという間に金が無くなって追い詰められ・・・・・
なんというか、社会全体が行き詰まってる中で、プライドだけはそこそこ有るありふれた中流階級インテリの心理描写が逸品。会社員やってる人間で、この短編に共感(あるいは憎悪)を抱かない人はいないんじゃないかってぐらい面白い。でもあれだねえ。中流階級+インテリゲンチャって、社会が壊れるときに一番割を食う層なんだよなあ。
「狂人日記」
狂っているのは自分なのか社会なのか。そして前書きで”本人全快後に”とあるが、社会が正常で被害妄想が治ったのか、それとも社会が異常で主人公が異常に適応しただけなのか。
全体的に筒井康隆っぽい印象(もちろん時系列は逆なんだけど)。コレは読んで良かった。