おーい磯野ー、Flashpoint Campaignsしようぜ2

前回に引き続き、Flashpoint Campaigns の紹介。"Pied Piper"シナリオのAAR。

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このAARについて

前回書いたとおり、このゲームでは一度部隊が交戦状態に入ってしまうと、なかなか指示に従ってくれません。
なので、プレイ中にプレイヤーが能動的に介入できる余地が地味というか、予備兵力の投入タイミングや間接砲撃のターゲット指定ぐらいかと。じゃあ何が面白いのかというと、事前に敵の進撃ルートを予測して兵力と予備兵力を配置していく過程がメインな気がします。事前の予想がハズレた場合に計画を修正していくあたりも面白いんですが、最初の読みが多分一番重要で面白い所。

ということで、このAARでは事前の作戦立案をメインに書いていきます。

Pied Piper シナリオについて

プレイヤーはNATO側。

開戦一日目。ソ連第一親衛戦車軍の遠距離偵察部隊は東西ドイツ国境線を突破し、ウェーザー川にかかるハーメルンの幹線道路橋を目指して進撃中。一方、NATO側が現在ハーメルンに展開している戦力は乏しいが、一時間程度で増援部隊が到着する予定。NATO側はソ連のウェーザー川渡河を阻止するために必要な可能な限りあらゆる手段を取ること。

敵の進撃ルート予想

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幹線道路沿いの進撃ルートAを中心として、その両脇B, Cからもハーメルン市街と橋に向けて進撃してくると予想されます。
青矢印1は見方の増援ルート(詳細は後述)。

見方兵力

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初期配置戦力は歩兵(+歩兵戦闘車)三個小隊と戦車三個小隊。ここで気をつけなければならないのが、戦車がレオパルド1であること。ゲームのシナリオである1989年においては明らかに二線級戦力であり、ソ連側の主力であるT-80と正面から打ち合ってはまず勝てません。

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また、意思決定サイクルについても、NATO側16分に対しソ連側23分と、NATO側が優位では有るものの戦力差を覆すような大きな差は無いです。

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ゲーム内時間で一時間ほど経過すると、M-109自走砲二個小隊が到着します。さらに20分後にレオパルド2が配備された戦車中隊(三個小隊+司令部)が到着し、さらにその20分後には歩兵三個小隊が到着します。増援はウェーザー川西岸に出現するので、戦車や歩兵については東岸へ移動して戦闘に加入するためにさらに30分程度の時間が必要です。

敵兵力

シナリオ開始時の情報によると、戦車80両以上+歩兵戦闘車70両程度を中心とした戦車旅団。

AAR: 作戦プラン1

上で書いたとおり、そもそも数的に劣勢である上に初期配置されているレオパルド1ではどうあがいてもT-80には太刀打ち出来ません...が時間をかせぐ必要があるということで、予想進撃ルートにそれぞれ歩兵+戦車各一個小隊のセットで防衛ラインを構築します。

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また、ハーメルン東方を流れるウェーザー川支流にかかる橋は片っ端から爆破して時間を稼ぎます。(30分程度で復旧されるけれど)
防衛ラインAが突破されたら、防衛ラインBとCを下げてハーメルン市街で防衛ラインを作る...のは多分無理。現有戦力だと予備は作れないので、増援がくるまでとにかく死守。一時間半後に増援が来たらハーメルン市街外縁に防衛ラインを引き、迎撃する予定。

ということでシナリオスタート
1時間40分経過時の各防衛ラインの様子

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侵攻ルートBのソ連部隊には戦車が存在せず、APCやIFVのみでした。また、効果的に構築された地雷原も相まってNATO軍の一方的勝利となっている模様(小さい煙が上がってるのが、撃破されたユニット)。ただし、ほぼ弾薬が尽きているので再補給の必要あり。

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侵攻ルートA(画面右側)およびC(画面左側)について。ソ連軍のT-80戦車が現れてからはかなり形勢不利で突破されそう。ルートCから部隊を回して対応することに。

一方で、マップ西側には増援部隊が到着し、ハーメルン市街へ展開すべく高速移動中。ルートAが突破されるまでにハーメルン市街外縁に防御ラインを敷くことが出来るかどうかは微妙なところ。

3時間経過時の各防衛ラインの様子

増援部隊のレオパルド2中隊がハーメルン市街外縁に防御ラインを敷くことに成功。

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500m以下の距離で打ち合うので、T-80を相手にすると損害が出ますが、市街地の防御補正と築城効果があるので何とか優勢です。

3時間47分経過時

ソ連側の損害が一定数を上回ったため、ゲーム終了。
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評価的には大勝利。
グラフのバーは各兵科の数で青はNATO側、赤がソ連側。また、左側のバーが開始時、右側のバーが終了時のもの。
ソ連側は戦車以外の戦力がほぼ全滅状態。

AAR: 作戦プラン2

上で書いたとおり、そもそも数的に劣勢である上に初期配置されているレオパルド1ではどうあがいてもT-80には太刀打ち出来ません...が時間をかせぐ必要があるということで、ハーメルン市街に防御ラインを引き、もともと防御側に有利な市街地地形に築城の防御強化を加えて数の差をカバーしようという案。

結果

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どうあがいても増援部隊がウェーザー川を渡る前にソ連部隊が市街地を制圧してしまう。渡河を防ぐ事はできるものの、橋の確保は無理。

おーい磯野ー、Flashpoint Campaignsしようぜ

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どんなゲームなの?

Flashpoint Campaignsは、1980年代末に発生していたかもしれない第三次大戦での、ヨーロッパ(西ドイツ)での陸戦を扱った戦術級シミュレーションゲームです。
ざっくばらんに言うとあれです。『レッドストーム・ライジング』とか『第三次世界大戦―チーム・ヤンキー出動』とかあの辺り。

レッド・ストーム作戦発動(ライジング)〈下〉 (文春文庫)

レッド・ストーム作戦発動(ライジング)〈下〉 (文春文庫)

第三次世界大戦―チーム・ヤンキー出動 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

第三次世界大戦―チーム・ヤンキー出動 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

ゲーム画面
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アウトバーンのジャンクションへ殺到するワルシャワ条約機構軍(WPO)(赤ユニット)と、押し止めようとするNATO軍イギリス部隊(黄色ユニット)。NATO軍は主正面では押されつつあるが、WPO部隊の後方へ回り込んだ部隊による包囲網を完成しつつ有るところ。
1ヘクスがだいたい500m

ちなみに現在の実際の地形はこんな感じ

なかなかになまなましい。

システム面での特徴について

意思決定サイクル

ターン開始時にユニットへ命令を出し、次のターンが始まるまでの間はセミリアルタイムで時間が進行していきます。その間は命令を追加したり変更したりすることは出来ません。

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で、画面右に表示されてたこのパネル(C3: Command, Control and Communication)なんですが、このゲームの一番のキモになります。
黄色いバーは、「NATO側は命令を発行するまでの時間間隔が17分である、更に次に命令を発行出来るまでの予想間隔は16分である」ことを意味しています。
一方、赤色のバーは「WPO側は命令を発行するまでの時間間隔が48分である。更に次に命令を発行出来るまでの予想間隔は36分である」ことを意味しています。将棋で例えるならば、NATO側はWPO側が一手打つ間に三手打てるということです。あるいはミリヲタ的に表現をするなら「NATO側はWPO側と比べてOODAループを三倍速く回せる」ということを意味します。

この意思決定サイクルの速さの差を見るとNATO側が圧倒的優位に見えますが、ところがどっこい、このシナリオではWPO側の戦力はNATO側の二倍程度あるので、NATO側が下手を打つとあっという間に数の力で押し切られます。
また、この値は電子攻撃(EW Hindrance)による通信妨害や司令部ユニットが攻撃を受けたり壊滅したりしているかどうか、あるいは各部隊が準備万端か(unit readiness)どうかなどにより大きく変動します。例えば、敵司令部ユニットを間接砲撃で混乱させたり、敵の後方へ浸透して司令部ユニットを戦闘に巻き込むことで相手の意思決定を麻痺させるといった戦術を取ることも出来ます。

組織階層

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OB(Order of Battle)タブには組織階層が表示されます。このマップでは最高司令部ユニットが"TF Hell's Messanger"、その下に"4RTR (4th Royal Tank Regiment)"司令部ユニットがあり、更にその配下にA/4RTR, B/4RTR, CRT/4RTR 等の司令部ユニットが存在し、更にその配下には戦闘を行うための部隊が存在することが示されています。

司令部ユニットには通信範囲があり、配下の司令部や部隊をカバーしている必要があります。また、部隊が補給を受ける際には司令部ユニットの近くで行う必要があるため、効率的に部隊を使用するために組織階層を色々と変更する必要があります。
例えば歩兵大隊に戦車一個小隊を分散配置するとか、あるいは分散されている戦車小隊をまとめて中隊として使用するなどなど。そのマップでどのように戦闘を展開していくのか、計画を立てた上で組織階層を変更してください。

命令は聞いた...が、今すぐ実行するとは言っていない......

上の意思決定サイクルについての話で、「命令を下す」話をしましたが、このゲームでは命令を出したとしてすぐに実行されるとは限りません。
例えばある部隊が目の前の敵と打ち合っているときに移動命令が出たとしても、「そんなのより今は眼の前の敵と戦うほうが先」な感じでなかなか言うことを聞いてくれません。

基本的に、部隊を思うように動かせるのは交戦が始まる前までで、実際に交戦が始まってからはケリがつくまでの間は「部隊を動かせない」と思っておいたほうが良さげです。そのため、防御側は交戦が始まる前に如何に有利な地形(遮蔽物が多い森林や市街地ヘクスで、かつ標高が高くて敵の予想進路に対する見晴らしがよく、更に後退する際に射線が通らないような場所)を確保することが死活問題となります。そのような地形を確保できれば、小部隊で敵の大部隊を長時間拘束することが可能となります。逆に、有利な地形を確保できないままでなし崩し的に交戦が始まった場合...兵力が大きなWPO側にとっては一気に押せるチャンスとなりますが、兵力が少ないNATO側にとってはほぼ負けが確定する感じです。

あと、戦闘に巻き込まれていない予備兵力は超大事。

追記: 上で書いたのは部隊に"Hold"(確保)を指示した場合の挙動。"Screen"(前衛)を指示すると射撃後に移動してくれますが、これはこれで防衛ラインを作って一定時間保持するといった用途には使えません。

補給ルール

ユニットはそれぞれ燃料・弾薬をもっていて、20分~30分程度交戦すると弾薬が空になります。
司令部ユニットの近くにいると再補給が出来るのですが、問題は再補給中には攻撃に対してかなり脆弱となること。敵の射線が通らない場所まで後退して補給を受けるべきなのですが、上で書いたように後退命令を出しても即時に実行してくれるとは限りません。ということで、煙幕等を張ることで射線を一時的に遮ってそのすきに交代するか、リスクを承知でその場で再補給を行うかという判断を行う必要があって悩ましい。

戦車の強さ東西比較について

このゲームではあくまで80年台後半の欧州を扱っており、湾岸戦争のような西側戦車の圧倒的な性能の優位は再現されていません。長距離で射撃を行っているうちは西側第3世代戦車の方が優位ですが、ある程度距離が詰まると東側戦車との性能差は縮まっていきます。そして殆どのマップではWPO軍の戦車はNATO軍の数倍程度の数の優位があります。NATO側はこれを踏まえて「如何に効率的にキルゾーンを形成するか」という方針で戦車を使っていくべきです。


AAR書こうと思ったけどここで力尽きた

次回に続く

JavaでGPU演算(Aparapi)してみた

今更感は有るが、Aparapi触ってみた。特に何か使う予定は無いけど、寒さに負けて生賴範義展に行けなかったのでなんとなく。



(1/31追記) 社内LTで再利用.

4/17追記

と指摘を受けたのでgithubのリンク先を https://github.com/Syncleus/aparapi に修正。



Aparapiとは

github.com

aparapi.com

JavaVMからOpenCL API経由でGPU演算を行うライブラリ。GPU側へ持っていけるのはJava プリミティブ型の配列のみだけれど、簡単に書ける。

とりあえず、任意の画像をグレースケール化する処理をループで書いた場合とAparapiで書いた場合を比較。

JVM内でループを回した場合

  private void convertToGrayScaleInJvm(final int[] pixels) {
    for (int i = 0; i < pixels.length; i++) {
      int pixel = pixels[i];
      int alpha = pixel >> 24 & 0xFF;
      int red   = pixel >> 16 & 0xFF;
      int green = pixel >>  8 & 0xFF;
      int blue  = pixel & 0xFF;
      int y = (int)(0.298912 * red + 0.586611 * green + 0.114478 * blue);
      pixels[i] = alpha << 24  | y << 16 | y << 8 | y;
    }
  }

Aparapiを使ってGPU演算した場合

  private void convertToGrayScaleInGpu(final int[] pixels) {
    
    Kernel kernel = new Kernel() {
      @Override
      public void run() {
        //GPU world
        int i = getGlobalId();
        int pixel = pixels[i];
        int alpha = pixel >> 24 & 0xFF;
        int red   = pixel >> 16 & 0xFF;
        int green = pixel >>  8 & 0xFF;
        int blue  = pixel & 0xFF;
        int y = (int)(0.298912 * red + 0.586611 * green + 0.114478 * blue);
        pixels[i] = alpha << 24  | y << 16 | y << 8 | y;
      }};
      int size = pixels.length;
      kernel.execute(Range.create(size));
  }

グレースケール化の方法については

https://ofo.jp/osakana/cgtips/grayscale.phtmlofo.jp

を参考とした。
ソース全体はこちら

https://gist.github.com/ka-ka-xyz/232bc0368ebf3c44bb46a7e1cb03810b

Aparapi注意点

JNI経由でOpenCLへアクセスするためにはネイティブライブラリが必要らしい。

aparapi/QuickReference.pdf at master · aparapi/aparapi · GitHub

無くても動くけれど、GPUは使わないよ的な事が書かれてた。 *1
あと、このPDFではAparapi関連のシステムプロパティのキー名が`com.amd.aparapi` で始まっているけれど、現在のv1.4.1では`com.aparapi` になっているので注意。

今回はここからdllを取得したけれど、これで良いんだろうか...
github.com

dllなりsoなりが存在するフォルダをJVMシステムプロパティ `java.library.path` で指定すれば読み込まれる。

実際に動かしてみる

www.pexels.com

から取得した画像をあれこれリサイズしてグレースケールへ変換してみた。

カラー版
f:id:ka-ka_xyz:20150913194329j:plain

グレースケール化した画像
f:id:ka-ka_xyz:20180128235338j:plain

ほんとにGPU呼んでるの?

NVIDIS GeForce GTX 1050の負荷をWin標準のパフォーマンスモニタで見てみた画像。
f:id:ka-ka_xyz:20180128235601p:plain

実行時にGPUさんが忙しそうにしてたので、呼ばれてるんだろう。多分。

パフォーマンスはどうよ?

f:id:ka-ka_xyz:20180128235656p:plain

X軸が画像のピクセル数、Y軸が処理にかかった時間(ms)。この時間はあくまでグレースケール化の処理時間で、ファイルの読み書きについては勘定していない。青がGPU演算のパフォーマンス。オレンジがJVM内での演算パフォーマンス。画像ピクセル数をあれこれ振り、CPU・JVM各5回の処理時間を取得して平均値をグラフ化。

グラフを見ると、GPU処理のためのオーバーヘッドがかなり高く、画像のピクセル数が少ないとJVMの中でループ回してたほうが圧倒的に速い。
13500x8598pxぐらいのサイズだとまだJVM内の処理が僅かに速く、18000x11464pxではGPU側が速い。

GPU演算だと並列処理のはずなのに計算量がO(N)に見えるのが気になる。仮説として

  • 処理自体は瞬時に終わるもののGPU側のメモリとJavaヒープとの間でのデータ転送に大半の時間が消費されている

と憶測してる(未検証だけど、上で挙げたパフォーマンスモニタはそれっぽく見える)。

*1: 一方で 「Aparapi:任意の計算タスクを実行するための新たな “Pure JavaAPIhttps://www.infoq.com/jp/news/2010/10/aparapi-java-and-gpus みたいな記事もあり、正直良くわからない。けど理屈としてはJVMの外のデバイスへアクセスするにはネイティブライブラリは必要だと思う

Redisのsortedsetで得点をランキング出来るのはわかった。で、自己最高得点でランキングする一番いい方法を頼む

ソート済みセット型 — redis 2.0.3 documentation

Redisのsorted set型を使うと、キーとなる文字列(member)と数値データ(score)のペアをソート済みの状態で保存できて、「scoreの上位100位までのランキングを行いたい」ようなシチュエーションで大変重宝します。

で、単純にscoreのランキング情報を得る場合は良いのですが、例えば「memberが過去に登録したscoreのうち、最も高いscoreのみを用いてランキングを行いたい」といった場合にどういう戦略を取るのが有効なのかなと言う点についてゆるく検証していと思います。

詳細

検証に使ったJavaソースはこちら。
Redis perftest to get max score. · GitHub

redisクライアントとしてjedisを使用。
github.com

使用するデータ

memberとしてUUID文字列を使用し、UUIDから生成したDouble型のhash値をscoreとします。

  private Map<String, Double> initData(int size) {
    Map<String, Double> data = new HashMap<String, Double>();
    System.out.println("------------ Generated value - score pair. ------------");
    for (int i = 0; i < size; i ++) {
      UUID uuid = UUID.randomUUID();
      System.out.println(uuid + ", " + Math.abs(Double.valueOf(uuid.getMostSignificantBits())));
      data.put(uuid.toString(), Math.abs(Double.valueOf(uuid.getMostSignificantBits())));
    }
    System.out.println("------------------------");
    return data;
  }

件数は10万件ぐらい。

戦略1: 過去のscoreを取得して最新scoreより大きいかどうかを比較し、大きければsorted setへ保存

Javaで書くとこんな感じ。
scoreの値を1, 2, 3...10倍することで、一つのmemberに複数のscoreを紐付けています(超適当だけど)。

  private void zscoreThenZadd(String key, int loop) {
    del(key);
    long start = System.currentTimeMillis();
    for (String value : data.keySet()) {
      for (int i = 1; i <= loop; i++) {
        try (Jedis jedis = this.pool.getResource()){
          Double currentScore = data.get(value) * i;
          Double oldScore = jedis.zscore(key, value);
          if (oldScore == null || currentScore.compareTo(oldScore) > 0) {
            jedis.zadd(key, currentScore, value);
          }
        }
      }
    }
    long total = System.currentTimeMillis() - start;
    System.out.println(key + ":" + total);
  }

毎回Redisからzscoreで古いscoreを取ってきて新しいscoreと比較。新しいscoreのほうが大きい場合は改めてzaddでmemberとscoreのペアをsorted setへ入れる。
補足すると、RedisではTransactionも使えますが、同じTransaction内でzscoreの値を取れるのはTransactionの完了時になります。SQLでいうselect for updateのように、zscoreの結果を取得してその結果をもとにzaddするかどうかを分岐するという処理は出来ません。あやうげ。

戦略2: Luaスクリプトを使い、Redis側で過去scoreの比較と保存を行う

javaで書くとこんな感じ。

  private final String scriptTemplate = 
    "local new_score = tonumber(KEYS[1])\n" +
    "local data = KEYS[2]\n" +
    "local bulk_old_score = redis.call('zscore', '%s', data)\n" +
    "local old_score = -1\n" +
    "if bulk_old_score then old_score = tonumber(bulk_old_score) end\n" +
    "if old_score < new_score then\n" +
    "  return redis.call('zadd', '%s', new_score, data)\n" +
    "else\n" +
    "  return nil\n" +
    "end";
  
  private void zscoreThenZaddInScript(String key, int loop) {
    del(key);
    String sha = null;
    try (Jedis jedis = this.pool.getResource()){
      String script = String.format(scriptTemplate, key, key);
      sha = jedis.scriptLoad(script);  
    }

    long start = System.currentTimeMillis();
    for (String value : data.keySet()) {
      for (int i = 1; i <= loop; i++) {
        try (Jedis jedis = this.pool.getResource()){
          Double currentScore = data.get(value) * i;
          String[] args = {currentScore.toString(), value};
          jedis.evalsha(sha, args.length, args);
        }
      }
    }
    long total = System.currentTimeMillis() - start;
    System.out.println(key + ":" + total);
  }

スクリプト内でzscoreとzaddを行う処理。スクリプト内の処理はatomicなので、戦略1にあったトランザクション問題も解決。ただし、スクリプト処理を行う分だけRedisの負荷が増えます。

戦略3: scoreとmemberのペアをsetとして保存しておき、アプリ側で大小比較後に最も大きいscoreをsorted setとして保存する
  private static final String KV_SPLITTER = "::";
  private void saddAllPreProcessedData(String preProcessedStoreKey, int loop) {
    del(preProcessedStoreKey);
    long start = System.currentTimeMillis();
    for (String value : data.keySet()) {
      for (int i = 1; i <= loop; i++) {
        try (Jedis jedis = this.pool.getResource()){
          String score = String.valueOf(data.get(value) * i);
          jedis.sadd(preProcessedStoreKey, value + KV_SPLITTER + score);
        }
      }
    }
    long total = System.currentTimeMillis() - start;
    System.out.println(preProcessedStoreKey + ":" + total);
  }

  private void smembersAllPreProcessedDataThenAggregateAndZadd(String preProcessedStoreKey, String key) {
    del(key);
    try (Jedis jedis = this.pool.getResource()){
      long start = System.currentTimeMillis();
      Set<String> preProcessed = jedis.smembers(preProcessedStoreKey);
      jedis.del(preProcessedStoreKey);
      Map<String, Double> map = new HashMap<String, Double>();
      for (String kv : preProcessed) {
        String[] kvAry = kv.split(KV_SPLITTER);
        String value = kvAry[0];
        Double score = Double.valueOf(kvAry[1]);
        if (map.putIfAbsent(value, score) != null) {
          map.computeIfPresent(value, (val, oldScore) -> {
            return oldScore < score? score: oldScore;
          });
        }
      }
      jedis.zadd(key,map);
      long total = System.currentTimeMillis() - start;
      System.out.println(key + ":" + total);
    }    
  }

最初にmember - valueペアの文字列表現を全てRedisへsetとして保存しておいて、改めてRedisから呼び出してscoreの大小比較とzaddでの保存を行います。実環境だとまあ、別々のスレッドでrpush+blpopで非同期に処理してくようなパターン。Redis側のメモリも食うし転送量も多いしであまりパフォーマンスは良くないんだろうなと予想してました。

(12/04追加) 戦略4: スコアを別々のキーに保存しておいて、zuniscoreで集計
  private void zunionstore(String key, int loop) {
    del(key + "::*");

    long start = System.currentTimeMillis();
    for (String value : data.keySet()) {
      for (int i = 1; i <= loop; i++) {
        try (Jedis jedis = this.pool.getResource()){
          Double currentScore = data.get(value) * i;
          jedis.zadd(key + "::" + value, currentScore, value);
        }
      }
    }
    
    try (Jedis jedis = this.pool.getResource()) {
      Set<String> keys = jedis.keys(key  + "::*");
      double[] weights = new double[keys.size()];
      Arrays.fill(weights, 1d);
      ZParams params = new ZParams();
      params.weightsByDouble(weights);
      params.aggregate(Aggregate.MAX);
      jedis.zunionstore(key, params, keys.toArray(new String[keys.size()]));
      del(key + "::*");
    }
    
    long total = System.currentTimeMillis() - start;
    System.out.println(key + ":" + total);
  }

最初にmember - valueペアの文字列表現をキー名としてzscoreとして保存したあとで、改めてzuniscoreで最大値を集計するパターン。戦略3と同じく、これも別スレッドで非同期に実行する想定。

例えば定期テストの点数など、全てのmemberが同時に何かの評価を受けてscoreを保存するという要な場合であれば、「第一回定期テスト」「第二回定期テスト」のようなキーを作ってそこにmember-valueのペアを入れてからzuniscoreで集計すれば良いんですが.........
あるmemberがスコアを100回残す一方で、もう一方のmemberは10回しかスコアを残さないような想定だと、member - valueペアをキー名として保存しとくしかないのかなと。キー名が爆発的に増加するけれど。

(12/05追加) 戦略5: 更新時に毎回zunionstoreで集計
  private void zunionstore2(String key, int loop) {

    long start = System.currentTimeMillis();
    for (String value : data.keySet()) {
      for (int i = 1; i <= loop; i++) {
        try (Jedis jedis = this.pool.getResource()){
          Double currentScore = data.get(value) * i;
          String tempStoreKey = key + "::" + UUID.randomUUID().toString();
          jedis.zadd(tempStoreKey, currentScore, value);
          double[] weights = new double[2];
          Arrays.fill(weights, 1d);
          ZParams params = new ZParams();
          params.weightsByDouble(weights);
          params.aggregate(Aggregate.MAX);
          jedis.zunionstore(key, params, tempStoreKey, key);
          jedis.del(tempStoreKey);
        }
      }
    }
    long total = System.currentTimeMillis() - start;
    System.out.println(key + ":" + total);
  }

戦略4だとキー数が爆発する件について、お昼のおしごとで指摘された改善案。
値を追加するたびに一旦テンポラリキーへ値を入れ、zunionstoreで集計する。


結果

データ1万件

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戦略 処理時間 (ms)
戦略1 7648
戦略2 4985
戦略3合計 3844
戦略3(未処理データの保存) 3504
戦略3(sortedsetデータの保存) 340
戦略4 4042
戦略5 362037
戦略5(Transactionあり) 362933
データ10万件

f:id:ka-ka_xyz:20171205090410p:plain

戦略 処理時間 (ms)
戦略1 77007
戦略2 51638
戦略3合計 34856
戦略3(未処理データの保存) 36049
戦略3(sortedsetデータの保存) 4069
戦略4 41087
戦略5 NA
戦略5(Transactionあり) NA

戦略1と比べると戦略2の処理時間は7割程度。戦略3の処理時間は半分程度。

一応、Redis側に10万件のデータが保存され、またいくつかのmemberについて抜取調査をして最も高いscoreが保存されていることも確認済み。

これだけ見れば戦略3が圧勝に見えるけれど、今回の結果は同じマシン内でJavaアプリとRedisが同居していてネットワーク負荷がボトルネックとならない環境であることを考慮する必要があります。JavaアプリとRedisが別サーバー上で動いているような場合であれば、ネットワーク速度がボトルネックとなり、転送量が多い戦略3が不利になる可能性もあるでしょう。
また、戦略2は他の戦略と比べるとRedisサーバー側でのスクリプト処理が重いはずです。Redisが使用できるCPU能力が低い場合には、スクリプト処理がボトルネックとなる可能性もあります。

戦略4は戦略3とほぼ同じぐらいのパフォーマンス。データ転送量は抑えられるものの、想定に寄ってはキーがかなり増えるのが欠点と言えば欠点。ただし、定期テストや大会の結果を集計するような処理であればキーの増加は無い。

戦略5は他の戦略と比べると桁一つ遅い。ただし、トランザクションが使えるのでデータ量が少数の場合だと使い勝手は良さそう。

いやほんとは負荷状況とかちゃんとモニタリングする必要はあるんだろうけれど休み中にそんなことしたくないよね。かといって、会社にいるとこの手の測定ってやりにくいんだよなあ。

それにしても、RDBの常識的には10万件を全件取得するようなTable Scanが走りまくる処理なんて考えられないよなーと思っていたものの、かなり良い数字が出てたのでびっくりしました。RDBでの「当たり前」を一回投げ捨てないと、Redis(だけではなくNoSQL)を上手く使うのは難しいなあ。

『この世界の片隅に』を観たときの頭の抽き出し整理

konosekai.jp

とりあえず、ここでは映画のレビューとか感想は書きません。
なんというかこー

と言う感じで、感想を書いて一区切り置いてしまうのがあまりに勿体ない。

ということで、感想の代わりに映画を見てたとき「そういえばあの本にこういう事を書いてたよな」と思っていたことについて、さらっと再読したメモ。目的としては「頭の抽き出し整理」というか、あの映画を受け止めたときの自分の手持ちカードを晒す的な。



「月給百円」のサラリーマン―戦前日本の「平和」な生活 (講談社現代新書)

「月給百円」のサラリーマン―戦前日本の「平和」な生活 (講談社現代新書)

冒頭の、昭和8年の広島の場面で思い出してたのがこの本。
昭和一桁時代の物価は大体今の二千分の一ぐらい(当時の1円 = 現在の2,000円)。都市部の中流層が「そこそこ暮らしていける」ぐらいの目安になる月収が大体100円程度。
ただし、中流層と言っても人口比でいうと10%ぐらいの少数派で、貧困層は子供を身売りすることも当たり前という状態(この辺は映画版で大幅カットされたエピソードの背景)。
日中戦争が始まってからはインフレが進み(そして、公定価格は抑えられたものの統計に現れない闇価格は高騰し)、戦後の物価上昇を経て最終的に「キャラメル一箱百円、靴下三足千円」な現在に至る。

それにしても、すずさんってあの時まで闇市場のお世話に成ったことが無かったんだろうか?そうだとしたら、それが一般的な話なのか特殊事例なのか、よくわからない。東京を舞台にした作品だと、もうちょっとカジュアルに闇に頼ってる気がする。


戦前戦中の主婦雑誌に掲載されていたレシピを元に戦時の食生活を描く本。
日中戦争が始まった頃は、意識高い系奥様向けに「軍艦サラダ」「飛行機メンチボール」のような手の込んだ料理が紹介されていたのに、戦争が進むにつれて「如何に米を水増しするか」という方向に成っていき、さらには配給制度が始まり、最後には配給では必須カロリーを満たせなくなり...という。
そういえば、この本だと隣組をベースにして複数の家から材料を持ち寄って共同炊事をやっていたということだけど、『この世界の片隅に』だと漫画版も映画版も共同炊事の描写は無かった気がする。
この辺の事情は都市部と地方で大分違うのかもしれない。

それにしても、男手二人が海軍関係に勤務していて(流石にお義父さんは年齢的に大丈夫だろうけど、周作さんもぎりぎりまで招集されず)、ふたりとも家から通勤可能で(週末に労働力としてあてに出来る)、さらに畑もあるという北條家って当時としては大分恵まれていた方なんじゃなかろうか。

あと、1939年の段階で米の国内消費量のうち20%が植民地からの移入米というデータも出てて、八月十五日慟哭シーンの背景になってる。


決戦下のユートピア (文春文庫)

決戦下のユートピア (文春文庫)

そいやこの本で、モンペ着用については余りのダサさに「都会の娘 vs. 田舎のおばさん」的な対立があるという話だったけど、地方都市だとこの辺の対立はあんまり無かったんだろうかと気になった。すずさんがその辺に頓着しないのは分かるけど、元モガの徑子さんはどういう思いでモンペを着てたんだろうか。


造船士官の回想〈上〉 (新戦史シリーズ)

造船士官の回想〈上〉 (新戦史シリーズ)

造船士官の回想〈下〉 (新戦史シリーズ)

造船士官の回想〈下〉 (新戦史シリーズ)

著者は戦争中に呉工廠へ赴任。大和や武蔵の修理に関わってたりする。あと、第十一海軍航空廠で航空関連の仕事もしているので、北條のお義父さんと関わりが有ってもおかしくないのな。度重なる呉空襲についての記述も有ったりと、『この世界の片隅に』と関連しそうな部分が結構ある。
あと、海軍病院で兵員が多い病棟ではレコードでアメリカの曲ばかりがかかっていたという記述も有ったりと、映画中のワンシーンを思い起こさせる。


源田の剣 改訂増補版 米軍が見た「紫電改」戦闘機隊全記録

源田の剣 改訂増補版 米軍が見た「紫電改」戦闘機隊全記録

艦載機による呉空襲について、米軍側から見た記録を中心に再現した記述あり。"色彩豊かに弾幕が張られていた"というあのシーンについての米側証言も出てる。
あと、呉上空でドッグファイトしていたシーンが有ったけれど、あのときの日本機は第343海軍航空隊 戦闘301飛行隊所属で他に該当する部隊は無いとの事*1。隊長は最近一部でものっそ有名になってる、あの菅野直大尉。
第十一海軍航空廠で紫電改を作ってたし、あの光景を見たらそりゃお義父さんもたぎるよね。



とまあ色々書いたけど、特にこの手の知識とか無くても楽しめる映画です。画面一杯に情報がつぎ込まれているものの、別にそれを全て受け止める必要は無いはずです。むしろそういう余計なモノは放り投げて、笑い、泣き、あの「日常」を過ごした人たちに思いを馳せれば良いと思います。

*1:旧版による。増補改訂版だと変わってるかもしれない

『日本・韓国・台湾は「核」を持つのか』感想

日本・韓国・台湾は「核」を持つのか?

日本・韓国・台湾は「核」を持つのか?

核実験やミサイルの発射を繰り返す北朝鮮。核を持ち強大な軍事力を背景に領土拡張をやめない中国。これらに隣接する日本、韓国、台湾が実際に「核兵器」を保有する日は来るのか? それは連鎖的な「核ドミノ」をもたらすのか?1 核開発の概況、2歴史的経緯、3開発レベルと対外関係、4核兵器保有の動機、4抑止要因などの視点から、北東アジアにおける「核」のリアルを冷静に分析。中国が暴走し、米国のアジア戦略が揺れる現在の必読書!

刺激的なタイトルとテーマではあるけれど、内容はいたって穏健。
韓国・日本・台湾(核兵器を持ちうる可能性が高い順)についてそれぞれの国情や過去の核兵器開発の経緯をまとめた上で

  • 韓国
    • 世論的には過半数が核兵器保有に賛成
    • 過去に核兵器開発を試みた歴史があるが、現在の監査体制の下ではまず秘密裏の自力開発は無理
    • 北朝鮮崩壊時に、核兵器開発インフラは米国が責任を持って破壊しないとまずい
  • 日本
    • 冷戦期から、(潜在的核兵器へ転換できるような)民間核技術や宇宙開発技術を積み上げてきている
    • また、これらの技術を自覚的に「核ヘッジング」として対米外交で使っても居る(「アジアへの介入に及び腰になるなら、民生技術を核兵器開発に転用しちゃる」的なシグナル)
    • ただ、一方で日本は核の平和利用と拡散防止の国際的な旗手でもある
    • この姿勢は一見矛盾するようだけれど米国による「(核を含む)安全保障の傘」に依存することで両立しうる
    • 実際、核兵器作ると成るとそれなりの時間はかかるし、透明性が高い社会と核兵器への反発が強い世論の中で極秘開発はほぼ無理
  • 台湾
    • 現在の監査体制の下では核兵器の極秘開発は無理
    • 仮に開発が露見した場合、米国からの(暗黙の)安全保障が切れ、かつ中国からの先制攻撃の口実も与えてしまうので誰得

という感じで、これらの国では核兵器の開発はまず無理だし、そもそもそんなことをやる必然性も薄いという感じでまとまっています。
ただ、これらの結論は前提として

  • 核兵器の極秘開発がバレたら国際的に爪弾きとなり、米も本気で制裁してくる
  • 米国が東アジアで十分な軍事力を保持し続ける
  • 米国は同盟国への軍事的義務を果たすために(必要であれば核兵器の先制使用を含む)軍事力行使を厭わない

というあたりについて、米側も同盟国側も確信していることが大前提になります。


で、ここからが感想の本題。普通だとまあ大統領が変わろうがこの辺の基本ラインが変わることは無いはずですし、この本の本文でも「アメリカはそういう役割を果たし続ける」ことが自明の理として書かれています。しかし、トランプ氏が大統領選で勝利した今、この辺の信頼が(建前的な部分ではなく本音の部分で)大きく削がれる可能性があります*1

著者による日本語刊行版への序文でこの辺の発言に触れられていますが、短くまとめると「対立候補クリントン氏だから安心」て感じでトランプ政権の誕生については想定外の様子。なにせ「アメリカが同盟国への軍事的義務を果たさない可能性と、その場合に想定される情勢」について、本書ではほぼ触れられてません。


ほんの数年前までは自明の理だったことがひっくり返るあたり、百年後ぐらいに歴史の教科書で読むとしたら凄い面白い時代だろうなと。
でも、そんな時代に生きたくないよぬ

*1:実際にトランプ政権が誕生した時、この辺の信頼回復に力を注ぐかもしれないし、逆に国際的な安全保障とかかなぐり捨てて米大陸に引きこもるかもしれない。ただ、現時点でどちらに転ぶのか、あるいは他の方向へ進むのか断言できる人は多分居ない

JMeter WebDriver Plugin を使ってみた

はじめに

http://jmeter.apache.org/index.html

Apache JMeterは主にWebアプリの負荷テストで使用されるツールです。
基本的にはシナリオにしたがってリクエストを投げて、想定どおりのレスポンスが戻るまでの時間を測定し、集計するというツールですが、ユーザーのインタラクティブな操作に対応したテストを行うのは苦手です。例えば、「ユーザーがWebアプリ上である操作を行った時、裏で多数の非同期通信が行われた結果がUI上に反映されるまでの時間を測定する」といったシナリオを書くのは結構面倒なのです。

そこで、JMeterのシナリオ上からブラウザを Selenium WebDriverを通じて呼び出してしまえというWebDriverプラグインの出番になります。

jmeter-plugins.org

JMeterシナリオ上でブラウザへの操作を記述し、リクエストはJMeterではなくあくまでブラウザから行い、レスポンス(とDOMへの反映)もブラウザが受け取ります。ブラウザを起動する必要が有るため、例えば大規模ユーザの同時アクセスを想定しているような、JMeterが得意な負荷テストには向きません。しかし、ブラウザを使用することで、ユーザの操作に近い形でのテストシナリオを記述する事が可能になります。

jMeterとWebDriver APIそれぞれについてある程度知識のある人向けに、JMeter WebDriver Plugin を使って Mozilla Firefox によるテストシナリオを作成してみます。

インストール方法

1. plugins-managerの導入

jmeter-plugins.org

から plugins-managerのjarファイルを入手し、以下のフォルダへコピーします。

${JMeterインストールフォルダ}/lib/ext

現時点ではjmeter-plugins-manager-0.10.jarです。

2. WebDriver Pluginのインストール

plugins-managerの導入後にJMeterを起動すると、メニューの [オプション]配下に[Plugins Manager]が追加されるので、クリックします。
Plugins Mnagerダイアログが表示されるので、[Available Plugins]タブを選択し、インストール候補プラグイン一覧から[Selenium WebDriver Support]にチェックを入れ、「Apply Changes and Restart JMeter」ボタンをクリックします

現時点では

${JMeterインストールフォルダ}/lib/ext

jmeter-plugins-webdriver-1.4.0.jarがダウンロードされ、さらにlibフォルダに関連jarファイル群がダウンロードされます。

3. selenium-firefox-driverのjarファイルを更新

jmeter-plugins-manager v1.10, jmeter-plugins-webdriver v1.4.0の組み合わせでは以下の手順が必要です)

いったんJMeterを停止した後、

${JMeterインストールフォルダ}/lib

フォルダに"selenium-firefox-driver-2.xx.x.jar"(xは任意のバージョン番号)が存在する事を確認します。そして

Maven Repository: org.seleniumhq.selenium » selenium-firefox-driver


にv2.xx.x系のより新しいバージョンのjarファイルが存在するようであれば、jarファイルを入手して入れ替えます。Selenium WebDriverは、ブラウザが更新されると動かなくなる場合が多々有ります。そのつど上記jarをより新しいバージョンに入れ替えてください。

4. firefox 停止時のエラーを対策

jmeter-plugins-manager v1.10, jmeter-plugins-webdriver v1.4.0の組み合わせでは以下の手順が必要です)

ここまでJMeterをセットアップした状態で、WebDriver Pluginを使ってFirefoxを起動すると、シナリオ終了時に以下のような例外が出力されます。

2016/09/12 20:47:28 ERROR - jmeter.JMeter: Uncaught exception:  java.lang.NoClassDefFoundError: com/sun/jna/platform/win32/Kernel32
	at java.lang.ClassLoader.defineClass1(Native Method)
	at java.lang.ClassLoader.defineClass(ClassLoader.java:760)
	at java.security.SecureClassLoader.defineClass(SecureClassLoader.java:142)
	at java.net.URLClassLoader.defineClass(URLClassLoader.java:467)
	at java.net.URLClassLoader.access$100(URLClassLoader.java:73)
	at java.net.URLClassLoader$1.run(URLClassLoader.java:368)
	at java.net.URLClassLoader$1.run(URLClassLoader.java:362)
	at java.security.AccessController.doPrivileged(Native Method)

この問題に対応するため、

${JMeterインストールフォルダ}/lib

へplatform-3.5.1.jar およびjna-4.2.1.jarを導入し、JMeterを再起動します。
詳細は以下のサイトを参照。

hellotestworld.com

JMeterシナリオの作成

ここまでセットアップした後、「設定エレメント」として各ブラウザに対応するWebDriver設定が追加されます。この設定エレメントをシナリオへ加えることで、以降はWebDriver Pluginでは該当ブラウザが使用されるようになります。

f:id:ka-ka_xyz:20160913001813p:plain


また、「サンプラー」としてWebDriver Samplerが追加されます。

f:id:ka-ka_xyz:20160913001825p:plain

このSamplerにはスクリプトが記述できます。デフォルトではjavascript

WDS.sampleResult.sampleStart()
WDS.browser.get('http://jmeter-plugins.org')
WDS.sampleResult.sampleEnd()

のようなテンプレが入力されています。
このテンプレでは、測定開始後にjmeter-plugins.orgへアクセスし、測定を完了するという処理を行っています。

新規にシナリオを作成し、スレッドグループ配下にWebDriver設定、WebDriverサンプラー、リスナー「結果を表で表示」を追加してシナリオを保存します。この状態でシナリオを実行するとブラウザが立ち上がり、jmeter-plugins.orgへアクセスした後にブラウザウィンドウが閉じられます。実行結果はリスナーに出力されます。


WebDriverサンプラーの詳細については以下を参照。

www.blazemeter.com
www.blazemeter.com

複数のWebDriverサンプラー間でコードを再利用

各WebDriverサンプラーjavascript(あるいは選択可能な他のスクリプト)でコードを書くことが出来ますが、変数のスコープは各サンプラーの中に限定されます。ただ、それでは不便なので、サンプラー間でコードを共有してみます*1

シナリオに「設定エレメント」-「ユーザー定義変数」を追加し、ユーザー定義変数"lib"を定義します。
そして、"lib"を選択した状態で"Detail"ボタンをクリックすると、ユーザー定義変数を複数行編集出来るようになります。

サンプルとして、以下の内容を入力します。

var mylib = mylib || {};

mylib.pkg = JavaImporter(org.openqa.selenium);
mylib.conditions = org.openqa.selenium.support.ui.ExpectedConditions;
mylib.wait = new org.openqa.selenium.support.ui.WebDriverWait(WDS.browser, 10);
mylib.vars = org.apache.jmeter.threads.JMeterContextService.getContext().getVariables();

mylib.google = (function() {
  var googleUrl = 'https://www.google.co.jp';

  var access = function() {
    WDS.browser.get(googleUrl);
  };

  var search = function(keyword) {
  	var inputQuery = 'input#lst-ib';
  	mylib.wait.until(mylib.conditions.presenceOfElementLocated(mylib.pkg.By.cssSelector(inputQuery)));
    var inputElem = WDS.browser.findElement(mylib.pkg.By.cssSelector(inputQuery));
    inputElem.sendKeys(mylib.pkg.Keys.chord(mylib.pkg.Keys.CONTROL, 'a'), keyword, mylib.pkg.Keys.ENTER);
  };

  var waitForResultsShown = function() {
    var resultListQuery = '#search';
    mylib.wait.until(mylib.conditions.presenceOfElementLocated(mylib.pkg.By.cssSelector(resultListQuery)));
  };

  return {
    access: access,
    search: search,
    waitForResultsShown: waitForResultsShown
  };
})();

名前空間 mylib に、googleの検索フォームへの入力を行う関数やユーテリティ類を定義しています。
そして、サンプラー側で以下のスクリプトを記述します。


サンプラー1

//load mylib
eval(org.apache.jmeter.threads.JMeterContextService.getContext().getVariables().get('lib'));

WDS.sampleResult.sampleStart();
mylib.google.access();
mylib.google.search('jMeter');
mylib.google.waitForResultsShown();


WDS.sampleResult.sampleEnd();

サンプラー2

//load mylib
eval(org.apache.jmeter.threads.JMeterContextService.getContext().getVariables().get('lib'));

WDS.sampleResult.sampleStart();
mylib.google.access();
mylib.google.search('Selenium WebDriver');
mylib.google.waitForResultsShown();

WDS.sampleResult.sampleEnd();

ユーザー定義変数"lib"を文字列として読み出し、evalすることで変数"lib"中に書かれた"mylib"定義が読み出されます。

eval を使っている事に嫌悪感があるかもしれませんが、JMeter WebDriver Pluginの制約上しょうが無いかなと。"Eval is Evil"は原則として正しいとは思いますが、今回は外部から入力された文字列をevalしている訳ではなく、あくまでJMeterのシナリオで変数として定義された文字列をしようしているので、危険は無いはず(おねがいみのがして)。

f:id:ka-ka_xyz:20160913004600p:plain

このシナリオを実行すると

1. google.co.jpへアクセス
2. キーワード"jMeter"で検索
3. 検索結果が表示されるまで待つ
4. google.co.jpへアクセス
5. キーワード"Selenium WebDriver"で検索
6. 検索結果が表示されるまで待つ
7. ブラウザを閉じる

というシナリオが実行されます。


jmxファイルの内容は以下のとおり

<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<jmeterTestPlan version="1.2" properties="2.9" jmeter="3.0 r1743807">
  <hashTree>
    <TestPlan guiclass="TestPlanGui" testclass="TestPlan" testname="テスト計画" enabled="true">
      <stringProp name="TestPlan.comments"></stringProp>
      <boolProp name="TestPlan.functional_mode">false</boolProp>
      <boolProp name="TestPlan.serialize_threadgroups">false</boolProp>
      <elementProp name="TestPlan.user_defined_variables" elementType="Arguments" guiclass="ArgumentsPanel" testclass="Arguments" testname="ユーザー定義変数" enabled="true">
        <collectionProp name="Arguments.arguments"/>
      </elementProp>
      <stringProp name="TestPlan.user_define_classpath"></stringProp>
    </TestPlan>
    <hashTree>
      <ThreadGroup guiclass="ThreadGroupGui" testclass="ThreadGroup" testname="スレッドグループ" enabled="true">
        <stringProp name="ThreadGroup.on_sample_error">continue</stringProp>
        <elementProp name="ThreadGroup.main_controller" elementType="LoopController" guiclass="LoopControlPanel" testclass="LoopController" testname="ループコントローラ" enabled="true">
          <boolProp name="LoopController.continue_forever">false</boolProp>
          <stringProp name="LoopController.loops">1</stringProp>
        </elementProp>
        <stringProp name="ThreadGroup.num_threads">1</stringProp>
        <stringProp name="ThreadGroup.ramp_time">1</stringProp>
        <longProp name="ThreadGroup.start_time">1473680458000</longProp>
        <longProp name="ThreadGroup.end_time">1473680458000</longProp>
        <boolProp name="ThreadGroup.scheduler">false</boolProp>
        <stringProp name="ThreadGroup.duration"></stringProp>
        <stringProp name="ThreadGroup.delay"></stringProp>
      </ThreadGroup>
      <hashTree>
        <com.googlecode.jmeter.plugins.webdriver.config.FirefoxDriverConfig guiclass="com.googlecode.jmeter.plugins.webdriver.config.gui.FirefoxDriverConfigGui" testclass="com.googlecode.jmeter.plugins.webdriver.config.FirefoxDriverConfig" testname="jp@gc - Firefox Driver Config" enabled="true">
          <stringProp name="WebDriverConfig.proxy_type">SYSTEM</stringProp>
          <stringProp name="WebDriverConfig.proxy_pac_url"></stringProp>
          <stringProp name="WebDriverConfig.http_host"></stringProp>
          <intProp name="WebDriverConfig.http_port">8080</intProp>
          <boolProp name="WebDriverConfig.use_http_for_all_protocols">true</boolProp>
          <stringProp name="WebDriverConfig.https_host"></stringProp>
          <intProp name="WebDriverConfig.https_port">8080</intProp>
          <stringProp name="WebDriverConfig.ftp_host"></stringProp>
          <intProp name="WebDriverConfig.ftp_port">8080</intProp>
          <stringProp name="WebDriverConfig.socks_host"></stringProp>
          <intProp name="WebDriverConfig.socks_port">8080</intProp>
          <stringProp name="WebDriverConfig.no_proxy">localhost</stringProp>
          <boolProp name="WebDriverConfig.maximize_browser">true</boolProp>
          <boolProp name="WebDriverConfig.reset_per_iteration">false</boolProp>
          <boolProp name="WebDriverConfig.dev_mode">false</boolProp>
          <boolProp name="FirefoxDriverConfig.general.useragent.override.enabled">false</boolProp>
          <boolProp name="FirefoxDriverConfig.network.negotiate-auth.allow-insecure-ntlm-v1">false</boolProp>
          <collectionProp name="FirefoxDriverConfig.general.extensions"/>
          <collectionProp name="FirefoxDriverConfig.general.preferences"/>
        </com.googlecode.jmeter.plugins.webdriver.config.FirefoxDriverConfig>
        <hashTree/>
        <Arguments guiclass="ArgumentsPanel" testclass="Arguments" testname="ユーザー定義変数" enabled="true">
          <collectionProp name="Arguments.arguments">
            <elementProp name="lib" elementType="Argument">
              <stringProp name="Argument.name">lib</stringProp>
              <stringProp name="Argument.value">var mylib = mylib || {};

mylib.pkg = JavaImporter(org.openqa.selenium);
mylib.conditions = org.openqa.selenium.support.ui.ExpectedConditions;
mylib.wait = new org.openqa.selenium.support.ui.WebDriverWait(WDS.browser, 10);
mylib.vars = org.apache.jmeter.threads.JMeterContextService.getContext().getVariables();

mylib.google = (function() {
  var googleUrl = &apos;https://www.google.co.jp&apos;;

  var access = function() {
    WDS.browser.get(googleUrl);
  };

  var search = function(keyword) {
  	var inputQuery = &apos;input#lst-ib&apos;;
  	mylib.wait.until(mylib.conditions.presenceOfElementLocated(mylib.pkg.By.cssSelector(inputQuery)));
    var inputElem = WDS.browser.findElement(mylib.pkg.By.cssSelector(inputQuery));
    inputElem.sendKeys(mylib.pkg.Keys.chord(mylib.pkg.Keys.CONTROL, &apos;a&apos;), keyword, mylib.pkg.Keys.ENTER);
  };

  var waitForResultsShown = function() {
    var resultListQuery = &apos;#search&apos;;
    mylib.wait.until(mylib.conditions.presenceOfElementLocated(mylib.pkg.By.cssSelector(resultListQuery)));
  };

  return {
    access: access,
    search: search,
    waitForResultsShown: waitForResultsShown
  };
})();
</stringProp>
              <stringProp name="Argument.metadata">=</stringProp>
            </elementProp>
          </collectionProp>
        </Arguments>
        <hashTree/>
        <com.googlecode.jmeter.plugins.webdriver.sampler.WebDriverSampler guiclass="com.googlecode.jmeter.plugins.webdriver.sampler.gui.WebDriverSamplerGui" testclass="com.googlecode.jmeter.plugins.webdriver.sampler.WebDriverSampler" testname="WebDriver Sampler1" enabled="true">
          <stringProp name="WebDriverSampler.script">//load mylib
eval(org.apache.jmeter.threads.JMeterContextService.getContext().getVariables().get(&apos;lib&apos;));

WDS.sampleResult.sampleStart();
mylib.google.access();
mylib.google.search(&apos;jMeter&apos;);
mylib.google.waitForResultsShown();


WDS.sampleResult.sampleEnd();</stringProp>
          <stringProp name="WebDriverSampler.parameters"></stringProp>
          <stringProp name="WebDriverSampler.language">javascript</stringProp>
        </com.googlecode.jmeter.plugins.webdriver.sampler.WebDriverSampler>
        <hashTree/>
        <com.googlecode.jmeter.plugins.webdriver.sampler.WebDriverSampler guiclass="com.googlecode.jmeter.plugins.webdriver.sampler.gui.WebDriverSamplerGui" testclass="com.googlecode.jmeter.plugins.webdriver.sampler.WebDriverSampler" testname="WebDriver Sampler2" enabled="true">
          <stringProp name="WebDriverSampler.script">//load mylib
eval(org.apache.jmeter.threads.JMeterContextService.getContext().getVariables().get(&apos;lib&apos;));

WDS.sampleResult.sampleStart();
mylib.google.access();
mylib.google.search(&apos;Selenium WebDriver&apos;);
mylib.google.waitForResultsShown();

WDS.sampleResult.sampleEnd();
</stringProp>
          <stringProp name="WebDriverSampler.parameters"></stringProp>
          <stringProp name="WebDriverSampler.language">javascript</stringProp>
        </com.googlecode.jmeter.plugins.webdriver.sampler.WebDriverSampler>
        <hashTree/>
        <ResultCollector guiclass="TableVisualizer" testclass="ResultCollector" testname="結果を表で表示" enabled="true">
          <boolProp name="ResultCollector.error_logging">false</boolProp>
          <objProp>
            <name>saveConfig</name>
            <value class="SampleSaveConfiguration">
              <time>true</time>
              <latency>true</latency>
              <timestamp>true</timestamp>
              <success>true</success>
              <label>true</label>
              <code>true</code>
              <message>true</message>
              <threadName>true</threadName>
              <dataType>true</dataType>
              <encoding>false</encoding>
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</jmeterTestPlan>

*1:ただし、今回紹介する方法だと共有できるのはあくまでコードだけで、状態は共有されないので注意