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益川敏英『科学者は戦争で何をしたか』感想


正直な所、「微妙だ」という感想はあんまり力を入れて書きたくない。ただ、


を読んで、絶賛だけで終わるのはちょい違う気がするなあと思うのでちょっとネガティブな感想をまとめておきます。
この本を読んでいて一番引っかかったのは、科学者の戦争協力についてのこの文章

私がまだ学生だった頃、量子電磁力学の分野でノーベル賞を受賞した朝永振一郎博士が戦時下に書かれた論文を読んで、いたく感銘を受けたことがあります。朝永先生は戦時中、電波兵器の研究に動員されていました。「私はそんな研究に加担したくない」などと、戦時下での動員に抵抗すれば、たちまち非国民として投獄されてしまいます。
朝永先生も強制的にそうした研究に従事させられたわけですが、私は先生の論文を読んでいて、はたと膝を叩きたい思いに駆られました。量子力学を知っていればわりと簡単に見抜けることなのですが、電波の出力の関係を解析する部分を、限りなく一般的なところでまとめ、核心部分をうまくごまかしていたのです

以下、この文章についてTwitterでつぶやいていた感想のまとめ・補足



第二次大戦中の日本だと、自分の親族や隣近所の顔見知りな人たちが徴兵され、「敵」に殺されて死亡通知すら戻ってこないのが当たり前な状況でした。さらに1944年以降だと戦争に直接かかわらない市民が戦略爆撃で殺されていた訳です。そういう状況下で、本書の表現を借りれば"科学者である前に人間として"の観点から「自分の協力によって顔見知りの死や同胞の死を少しでも減らせるかもしれない」という発想が出て来るのはヒューマニストとして極自然なものではないでしょうか。
仮に上で引用したエピソードが事実であり、実際にサボタージュが行われていたとしたら、それはすさまじい苦悩の末の判断だったと思います。しかし………本書ではそのような苦悩が有ったのではないかということに触れられず、単純に素晴らしいサボタージュであり「本来の科学者の知恵」であると絶賛されています。


この本で一番危なさを感じるのはこの辺の話で、「自分の戦争協力によって顔見知りの死や同胞の死を少しでも減らせるかもしれない」という状況に追い込まれるかもしれないという可能性を考えていないように見えるところです。世論や状況が変わり、民間人の犠牲者が出た時には真っ先に戦争協力するんじゃないか的な気がします。それが良い・悪いという判断についてはここでは置いておくとして。


ファインマンがロスアラモスでの原爆開発に関わっていたことは本人が自伝で(物凄いノリノリに)書いていて有名ですが、彼も別に狂信的な国粋主義者でも無い訳で、戦時の高揚ってそういうものだと思うのです。ただ、この本では愛国心の甘美さとか戦時の高揚感、周りみんなが傷つく中で戦争に協力しないことへの罪悪感といったあたりのことについてはほぼ無視されていて危うげな気がします。

あー、あと蛇足ですがフリッツ・ハーバーが毒ガス開発に邁進した盲目的愛国者としてやり玉に上げられているあたりは

という背景について無視されてるのもなんだかなーという気がします。この辺は

毒ガス開発の父ハーバー 愛国心を裏切られた科学者 (朝日選書 834)

毒ガス開発の父ハーバー 愛国心を裏切られた科学者 (朝日選書 834)

に詳しいのでお勧め。

『撤退するアメリカと「無秩序」の世紀』についてメモ

米大統領選の大荒れ模様を見てて思い出したので軽くメモ。

撤退するアメリカと「無秩序」の世紀ーーそして世界の警察はいなくなった

撤退するアメリカと「無秩序」の世紀ーーそして世界の警察はいなくなった


まあ要約するなら「アメリカは"世界の警察"を捨てて内向き路線になりつつあるけれど、引きこもっても問題は解決しないししっぺ返しを食らうだけなので積極介入路線に戻ろうぜ」という本。で、何が気になったかというと、アメリカで中流層がどんどん貧しくなりつつあるから外征やめて引きこもろうという主張に対して

高等教育のレベルは高いし、イノベイティブな起業家も一杯いるから大丈夫」

程度の軽い切り返しだけで終わらせている所。
例えば『誰が中流を殺すのか アメリカが第三世界に堕ちる日』に描かれているような、中流層が感じている不安の厳しさとの落差が気になってた。

誰が中流を殺すのか アメリカが第三世界に堕ちる日

誰が中流を殺すのか アメリカが第三世界に堕ちる日

なんというか、ビッグイシューを語る上でそんなの気にしないで問題無いという透けて見えるというか、国際問題を語る上で「追い詰められた中流層」の話は一種のタブーになってるんじゃないかとも思うぐらいあっけらかんとした扱いで、最初に『撤退するアメリカと「無秩序」の世紀』を読んだ時には強烈な違和感があった。

で、米大統領選の大荒れって結局はこの辺の話になって、国内問題から目をそむけてきたエスタブリッシュメント層の傲慢さへの反発については色々と分析記事が出てるけれど、確かに自分が読んできた本を見てもそんな感じがするよなあというメモ。

現在中国では「隗より始めよ」の故事に"まず言い出しっぺが率先して実行しろ"というニュアンスは無いんじゃないかな?という話

自己まとめ。なんとなく気になったのでざっくり調べてみた。




「まず隗より始めよ」の元になったエピソード
manapedia.jp

は中国では"千金买骨"(骨でも大金で買う)として知られており
baike.baidu.com

その意味するところは

道理

这个故事告诉我们,要招聘人才,不仅仅要放下架子,更要有诚心,要拿出实际行动。郭隗的聪明睿智令人佩服,他的勇于自荐,自我推销的方式也很有艺术性。
现用来比喻渴望求得贤才。

とされており、Excite翻訳してみると

道理

このストーリは私達に教えて、人材を招聘して、棚をおろすだけではなくて、更に真心があって、実際行動を取り出します。郭と隗の賢い英知は人を感心させて、彼のは勇敢に自薦して、自ら売りさばく方法もとても芸術性があります。
現在比喩が賢才を求めるのを渇望するのに用います。

となる。要は「人材募集方法すげー、セルフブランディングすげー」というサクセス・ストーリーとして、そして「人材を大切にしよう」と言う意味で受け取られており、現在は「才能のある人を求めるならこういう方法を取るべきだ」という比喩として使われているとのこと。
まあ、あくまで「ソースは百度百科(キリッ」だし自動翻訳とあやふやな漢文理解だけなので断定出来ないんだけれど、この故事について"まず言い出しっぺが率先して実行しろ"というニュアンスは主流では無さそうということは分かる。


同じ古典をベースにしていてここまで解釈が違うというのは面白いし、「一見同じ古典文化を共有しているように見えるけど解釈がだいぶ違っていて、相互に誤解しっぱなし」という話は他にも結構有りそう。

P.W.シンガー 、オーガスト・コール 『ゴースト・フリート』感想

『戦争請負会社』『ロボット兵士の戦争』『子ども兵の戦争』といった一連のノンフィクションで、冷戦期の「戦争」観が覆りつつある状況を描いてミリヲタの話題をさらったP.W.シンガー。
そのシンガーが手がけた近未来米中仮想戦記ということで話題になっていた『ゴースト・フリート』が遂に翻訳されたので紹介。


中国軍を駆逐せよ!  ゴースト・フリート出撃す(上) (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

中国軍を駆逐せよ! ゴースト・フリート出撃す(上) (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

中国軍を駆逐せよ!  ゴースト・フリート出撃す(下) (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

中国軍を駆逐せよ! ゴースト・フリート出撃す(下) (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)


amazonあらすじ。

2026年、中国が太平洋支配に動き、ハワイ制圧!
ロシアと同盟を組んで、太平洋制圧に挑む中国。
嘉手納基地急襲、国防総省サイバー攻撃を経て、オアフ島に上陸!

共産党支配からより少数独裁的な「董事会」体制に変わった中国は、2026年、マリアナ海溝近辺でガス田を発見、太平洋支配へと動きだした。
密かに同盟を結ぶロシアが嘉手納基地を急襲したのに続いて、中国はパナマ運河を通行不能にし、真珠湾で米軍艦船を爆破、
太平洋艦隊にも大打撃を与え、オアフ島に上陸してハワイを統治下に置くことに──。
中国のサイバー攻撃によりハイテク機器が使えないアメリカは、ハッキングの影響を受けない、現役を退いた旧い艦艇からなる「幽霊艦隊(ゴースト・フリート)」で
ハワイ奪還を目指すが──。
原題:Ghost Fleet

以下、ネタバレ

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「The Making of Stanley Kubrick's 2001 - a Space Odyssey」感想

買ったのは10月ぐらいだったけど書いてなかったので

The Making of Stanley Kubrick's 2001 - a Space Odyssey

The Making of Stanley Kubrick's 2001 - a Space Odyssey


映画版『2001年宇宙の旅』のメイキング本。
この本、何が素晴らしいかというと、ハコのサイズがだいたい1:4:9というモノリス比率なところ。
まあ正確に言うと 4.5 cm x 17.5 cm x 38.2 cm ぐらいで厳密に1:4:9な訳ではないけど、将来的に日本語版が出るにしてもこのハコで出るとは限らないので買ってみた。内容的にも満足ですはい。

70年代を舞台にした第三次世界大戦海戦ゲーム『Command: Northern Inferno』紹介

CMANO ゲーム

Command: Northern Inferno は海空戦ゲーム Command: Modern Air / Naval Operations (CMANO)から派生したゲームです。

大本のCommand: Modern Air / Naval Operationsについての紹介記事はこちら

ka-ka-xyz.hatenablog.com

ka-ka-xyz.hatenablog.com

ka-ka-xyz.hatenablog.com


Command: Northern Infernoは、CMANOのゲームシステムを使用して70年代の「あり得たかもしれない」第三次世界大戦の海空戦を扱ったゲームです。アイスランド北大西洋ノルウェー付近を中心に扱った13のシナリオを(シングルシナリオあるいは連続したキャンペーンシナリオとして)プレイする事が可能です。
既にCommand: Modern Air / Naval Operationsを持っている人は拡張シナリオ集として購入可能。持ってない人はスタンドアローンなゲームとして同じ価格で購入可能。

どんなゲーム?

基本はCMANOと同様。ユニットは全てNTDSアイコンで表示され、リアルタイム(時間圧縮・停止有り)で動いていきます。
要はこういう画面。

f:id:ka-ka_xyz:20151108225508p:plain

こういう画面から「ノルウェー海軍の高速艇戦隊がソ連の揚陸船団へ強襲をかけるありさま」を妄想できるかどうかが、このゲームを楽しめるかどうかの鍵となります。

核もあるよ(使用許可が出た場合のみ)

攻略Tips

シナリオ1: Opening Moves

GIUKギャップ(グリーンランドアイスランド・英国を結ぶライン)を突破しようとするソ連潜水艦を狩るシナリオ。
といってもSOSUSで全ての潜水艦の位置は既に掴まれているので、航空機やヘリを使って反撃されない立場から一方的に殴っていくだけの簡単なシナリオです。注意点としては、攻撃前にちゃんと敵かどうかを判定すること。最初は潜水艦は黄色いアイコン(敵味方不明)で示され、敵潜水艦なのか生物学的な(イルカとかクジラとかマグロの群れとか)音響なのか区別されていません。周囲にソノブイを落として潜水艦であることをきっちり判定してから狩りましょう。
(実際の所、うっかり海洋生物を攻撃してもペナルティは無い)

シナリオ2: Goblin on the doorstep

イギリスの弾道ミサイル原潜 HMSリベンジ を大西洋上の哨戒海域まで護衛するシナリオ。敵ユニットは潜水艦とMayak級の情報収集船複数

Mayakは限定的な対潜能力を持ち、放置しておくと危険です。ただ、陸上基地から発信する航空機は対艦ミサイルを装備できないため、こちらも水上艦で対応することになります。また、水上艦搭載のヘリも対艦ミサイルを搭載出来るものもあるので、兵装を換装して置いたほうが良いはず。

また、SSBN HMSリベンジについては"Doctrin & RoE"の設定で "Automatic evasion"の値を「No」に変えるのがおすすめ。初期値のままだと敵を探知するたびにあさっての方向へ転舵してしまうので厄介です。
また、航空機で洋上哨戒する際に、レーダーで敵味方不明な船を見つけても敵か味方か識別できない場合があります。その時は高度を雲の下に指定すると、目視確認が効きます。

あとは、陸上基地から発信した哨戒機やヘリを使って、HMSリベンジの周囲とノース海峡の北側出口付近にソノブイの網を張り、徐々に外側へ広げていけばそのうち潜水艦が捕まるはずです。

シナリオ3: The Fast and the Furious



注意!
このシナリオは現在のところ、ここで配布されているhotfixを適用しないとクリア不可能です。勝利条件を満たしていても次のキャンペーンへ進みません。steamではhotfixがまだ配布されていないので、上記のforumからファイルを入手する必要があります。
また、hotfix適用後にいったんシナリオ3のsaveファイルを削除し、シナリオ2からやりなおして改めてシナリオ3を開始する必要があります。


ノルウェー北岸へ接近しつつ有るソ連両用(揚陸)船団を撃退するシナリオ。
手駒として使える航空機は少数のF-5軽戦闘機とその偵察機タイプ、哨戒ヘリのみ。海上戦力は魚雷艇ミサイル艇を中心としたものであり、あまり有力なものではありません。
一方ソ連側は、揚陸戦団の直衛戦力とは別に、多数のオーサ型高速ミサイル艇が間接護衛戦力として待ち構えています。手駒の高速艇を使って最初から揚陸船団を襲撃すると、オーサ型に寄ってたかって殴り返されるので注意が必要です。

ということで、F-5戦闘機を使ってオーサ型ミサイル艇を狩りつくしてから、水上戦力で揚陸船団を襲撃するのが一番すんなり行きます。ただ、F-5の使い方が結構厄介で、普通に使っているととてもオーサ型ミサイル艇を狩りつくせません。とりあえず

  • F-5ユニットの"Doctrin & RoE"で"RTB when Winchester"(兵装を使いきった場合は基地へ帰投)を「No」に指定(兵装を使い終わった途端に敵の防空網を突っ切って帰還しようとする場合があるので防止のため)
  • F-5ユニットの"Doctrin & RoE"で"Use gun against surface/land contacts (starfing)"を「Yes」に指定(ミサイル艇を相手にする場合、機銃の攻撃が結構効く場合も有るため)
  • 初期兵装 Mk20 Rockeye II CB の機体はとりあえず出撃させるが、帰投時に AGM-12B Bullpup Aへ兵装転換(Rockeye IIは全く役にたたない。Bullpupは長射程なうえに一発当たればミサイル艇にとって致命傷。ただし、兵装の残数が少ないので注意)
  • Bullpupや通常爆弾を使ってオーサ型を攻撃するときは、自動攻撃せずに手動で攻撃すること(一発当たれば致命傷なのに自動攻撃だと一回で全弾を撃ち尽くすため)
  • F-5は出撃後再補給に約5時間かかるので、だいたい2出撃が限界というか3出撃前に揚陸船団が揚陸ポイントに達してしまう。2出撃目までにオーサ型ミサイル艇を可能な限り減らす
  • F-5を使ってオーサ型ミサイル艇を減らすまでは、水上艦艇は初期位置のちょと西寄りあたりに退避。ただし、あまり西へ行き過ぎると揚陸船団の迎撃に間に合わなくなるので注意
  • 揚陸艦が積んでいるハインド攻撃ヘリ魚雷艇にとって結構脅威なので、水上艦艇で揚陸船団を襲撃するタイミングで、F-5の上空直護を付ける
  • 揚陸船団本体は対空防御は強いものの、対艦攻撃能力は低い。オーサ型さえなんとかすれば手持ちの戦力で殴り放題出来る。ただし、西の端にいるFFGについては、もし余裕があればBullpupを装備したF-5で予め沈めてしまうと楽になるはず。


このシナリオだけ攻略情報が細かいのは、最初の注意点で引っかかって5回ぐらいやりなおしたから。

シナリオ4: Barents Sea Boomers

バレンツ海ソ連の「聖域」(厳重に防衛されたSSBN哨戒海域)へ潜入したスタージョン級SSNでSSBNを狩るシナリオ。
このシナリオは多分に運が絡む。というか運ゲー。Creep速度で哨戒海域をぐるぐるめぐり、運が良ければSSBNと巡り会える。運が悪ければ対潜哨戒機から魚雷落とされて一方的にボコられて終わります。
注意点として、同じ海域でプレイヤーの指揮下に無いイギリスのスイフトシュア級SSNも行動しているので、同士討ちを避けること・・・つまり、「ソナーでSSNを探知して10時間追い続けた挙句に味方と判明」もあり得えます。


今のところシナリオ5プレイ中なので攻略情報はここまで。

スプラトゥーンは「初心者向け」か?

ゲーム

前回のスプラトゥーン語りの続き。

Splatoon(スプラトゥーン)

Splatoon(スプラトゥーン)


スプラトゥーンはおもしろんだけど辛いというか、前評判やレビューやCMで受けるイメージのような、「初心者向け」「誰でも楽しめる」とはちょっと違うというか、「初心者向け」って概念自体に幅がありすぎるという話を書く予定。
あ、念の為補足するとスプラトゥーンは(辛いけど)楽しいゲームなのは確か。ちなみに自分は今のところウデマエB+ぐらいで安定。バケットスロッシャー派。ランク1桁の人については状況が許す限りキルは避け、リッター3Kと煽りイカ*1野郎は積極的にキルしに行くプレイスタイル。バケツ楽しいよバケツ……と書けるぐらいには楽しめてる。

色々語る前に、ゲームプレイヤーとしての自分について

このブログの「ゲーム」カテゴリを見ても分かるように、基本はストラテジー系PCゲームがメイン。反射神経使うようなFPS/TPSは苦手というかほぼ初心者。
あと、「だからゆとりは」的な感想が来る前に補足しとくと、ロンダルキアの洞窟(FC版)体験した世代なんでそこんところよろ。

発売前の期待

スプラトゥーン発売前までさかのぼって自分が受けた印象を振り返ってみると、この記事

www.4gamer.net


のように

"撃ち合いの巧拙に関わらず,みんなで楽しく遊べるシューティング。"
"陣取りゲーム"
"TPS風のゲームでありながら,射撃のうまさに関わらず貢献している気になれて楽しい"
"総じて「プレイヤースキルに関わらずみんなで楽しく遊べる」ことに注力されている"

って感じだったんですね。任天堂が、スパルタンで荒んだ(下手なプレイすると即座に4文字言葉が飛んでくるような)プレイヤー対戦型のFPS/TPSのあり方を根本から変えるようなゲームを出してくるんじゃないかという期待がありました。
で、実際のスプラトゥーンがどういうゲームだったかというと、確かにこー初心者に向けて「間口が広い」ゲームであり、荒まないように考えられてはいるんですが、プレイしてて余りに"初心者向け"ではないよなあという印象が強かったです。面白いけど。

速攻で購入した自分のプレイ体験

ka-ka-xyz.hatenablog.com

つらい

発売後のレビュー

でも、発売後に出てるレビュー等を見ても結構「初心者向け」「だれでも楽しめる」的な感想が多いんですよね。例えば

ゲーマー向けメディアだと

www.4gamer.net

イカ達が装備しているブキはステージを塗りつぶすために使うものであり,相手を倒すのは二の次。
 ゲームで何人相手を倒しても,また何回相手に倒されても,最終的な勝敗は塗りつぶしてナワバリとした面積で決まるので,積極的に最前線に出て戦わなくとも,相手のいないところで黙々とステージを塗りつぶしていくだけで,チームの勝利に貢献できる。このあたりが,本作の最大の特徴といえるだろう。


【「Splatoon(スプラトゥーン)」レビュー】Splatoon(スプラトゥーン) - GAME Watch

敵を倒すスキルも重要だが、あくまでも“インク(塗る)”と対を成している点もポイントのひとつ。一般的な対戦メインのTPSやFPSでは精密なエイミングスキルが大前提となるため、それが苦手だとそもそもゲームに参加できない(楽しめない)が、本作は塗ることが最大の貢献。ドンパチ要素を十二分に残しつつ、それが苦手な人も参加できる……なにより“貢献できる”作りは白眉の一言。「誰でも楽しめるゲームです」なんてセールストークも陳腐化して久しいが、本作ではプレイするたびに実感させられる。


www.4gamer.net

実際に遊んでからあらためて一言で説明すると,「平和面白い」って感じよね。

ゲーム系以外のメディアだと

toyokeizai.net

いわゆるシューティングというジャンルのゲームですが、なにがすごいかというと、まず世界観がすばらしい。人を倒すんじゃなく、殺すんじゃなく、色を塗っていく陣取りゲームなのですね。

みたいな。まあ、取り上げられ方としては「だれでも楽しめる」「初心者向け」的な色が強い。

ほんとに誰でも楽しめるのか

いやこれ書いた時は「辛いわー」って感想がかなり少なかったんですが、発売後結構経つとそれなりに「辛いわー」系の感想増えてくるんですよね。例えば

anond.hatelabo.jp
(スプラトゥーンとは明示されていないけど、マリカの話が出ているということはWiiUで、"そのゲームの絵柄自体はかわいらしくて年齢制限もついていないんだけど、TPSやFPSタイプのネット対戦ゲーム"との事なので、書かれた時期と合わせてまあスプラトゥーンで間違いないだろうなと。)


anond.hatelabo.jp


あと、Twitterでも「子供がプレイしてて切れた」的な話も見かけたけど、今探したら見つけきれなかった(探し出せてもここでリンク貼るべきかどうかは微妙だけど)。


何故「辛いわー」系の感想が余り目立たないかというと、"ゲームそのものがつまらない"という話であれば、いわゆる「クソゲー」批評のように該当ゲームをDisることで書き手も読者も楽しめる(事もある)のですが、スプラトゥーンの場合、そういう書き方は出来ない。何故かと言うとゲームとしては面白いから。繰り返すけど、ゲームとしては面白い。けど、プレイするたびにフラストレーションが溜まってくる場合がある。ナンデ?

何故、そんな楽しいゲームでフラストレーションを感じるのか?

いやゲームの設計としていくつか要因は思いつくんですけどね。例えば

  • 何のかんの言って腕前の差が露骨に出る
  • 比較的少人数の対戦(4対4)なので、負けた時に「自分の下手さがチーム全体の足を引っ張る」感が強い
  • いったん劣勢になるとひっくり返すのは困難で、ひたすら押し込まれるだけのプレイになる
  • 負けた時のリザルト表示でことさらに悔しさを煽ってくる
  • 現状のナワバリバトルのマッチングは「下手な人」を救済しない*2

あたりの要素。でもこれ、上手い人にとっては魅力なんですよね。

  • 何のかんの言って腕前の差が露骨に出る → 上手ければ爽快なプレイ体験
  • 比較的少人数の対戦(4対4)なので、負けた時に「自分の下手さがチーム全体の足を引っ張る」感が強い → 上手ければ「自分の強さでチームに貢献」の魅力
  • いったん劣勢になるとひっくり返すのは困難で、ひたすら押し込まれるだけのプレイになる → いったん優勢を確保できれば、そう崩れない
  • 負けた時のリザルト表示でことさらに悔しさを煽ってくる → 負けなければどうということもない
  • 現状のナワバリバトルのマッチングは「下手な人」を救済しない → 上手ければ何の問題も無い

上手い人(ゲームレビューの発信者は大抵上手い人でも有る)にはこういう面はあんまり見えてこないし、下手な人は「ゲームそのものが駄目」ではなく「自分の腕が駄目」と思えてしまうので、あんまり正面から書きづらいのではないかという気がします。いやこれでゲームそのものが理不尽に難しかったりしたらまだある種の救いがあると思うんですが、ゲーム自体は素晴らしいので「自分に対してフラストレーションが溜まる」状態に追い込まれやすいんじゃないかなと。


「初心者向け」って何だ

ガチなゲーマーの人は"ゲーム自体は素晴らしいので「自分に対してフラストレーションが溜まる」状態に追い込まれやすい"とか読んだら

「いやそこは腕を上げろよ!勝つために努力しろよ!勝って楽しめよ!それがゲームの楽しみじゃないか」

的な事を思うかもしれません(実際、上で上げた「辛いわー」系へのはてブコメントやトラックバックでもそういう反応がある)。


………いやな、分かる。分かるよ学生時代の自分でも同じような反応したと思うよ。

でもさ、満員電車に揺られてヨレヨレになって家にたどり着いたサラリーマンに、そういう事求められても辛いのな。一日の疲れでささくれ立った精神を解きほぐすためにまったり楽しみたいのな。
あるいは、感情の制御がまだまだ苦手な子供に、遊びの中でそういうストレスを与えて耐えろっていうのはちょっと辛過ぎね?

スプラトゥーンの「間口の広さ」とか「初心者向け」とは、「初心者が中級・上級者へと育つための取っかかりやすい」「初心者でもすんなりはまり込める」という話であって、「初心者が初心者のままでまったり楽しめる」という方向じゃ無い気がするんですよね。なんというか、プレイヤーが、それに応えるだけの精神的・時間的、あるいは年齢的な余裕を持っていれば、努力の過程で心ゆくまで楽しめるとは思います。が、そういう余裕を持つことが出来ないプレイヤーにとっては辛さが溜まる構造になってしまっているんじゃ無いかと。

もっと言うと、かつてWiiNintendo DS任天堂が興したムーブメントって、そういう「初心者が初心者のままでまったり楽しめる」方向だった訳で、スプラトゥーンでもそういう方向性を期待してたのに裏切られたなーというモヤモヤも有る。
補足すると、実はプレイスタイルによってはdic.nicovideo.jp
のようにまったり遊べるマッチングへ到達出来るんですが、余程の腕がない限りは、キルされ続けることに慣れ続けるか、見方の勝利に貢献しないプレイをし続けるかでないと到達出来ない気がして多分心が折れそう。*3


なんというか、これから年末~正月にかけてスプラトゥーンは爆売れすると思います。そしてかなりの割合で「初心者向け」という言葉に対して「初心者が初心者のままでまったり楽しめる」という印象を持って買う人がいるんだろうなと思います。
そういう人が、買ってしまった後で「こんなはずじゃなかった辛い」的な感想を持つ前に読んでくれないかなーと。

最後に念の為、(自分にとっては辛さがあるものの)スプラトゥーンは楽しいのも確かです。「初心者が初心者のままでまったり楽しめる」系のゲームじゃ無い(というかそういう風に楽しむには工夫が必要な)だけで。

*1: 主に敵プレイヤーを倒した時に、相手プレイヤーを煽るために行われるディスプレイ行為。参照: 【スプラトゥーン】煽り イカ - YouTube

*2: 現状では他のユーザーをキルする傾向が強い/弱いプレイヤー同士がマッチされる。プレイヤーの腕はあんまり関係しない。

*3:とはいえ、ある程度ランクを積み上げた後ではなく、初手から「ゆうたピア」を意識して不殺プレイしてればすんなり行けるかも。まったり楽しみたい人は理不尽に思えても不殺プレイに徹しよう。