前回のスプラトゥーン語りの続き。

- 出版社/メーカー: 任天堂
- 発売日: 2015/05/28
- メディア: Video Game
- この商品を含むブログ (49件) を見る
スプラトゥーンはおもしろんだけど辛いというか、前評判やレビューやCMで受けるイメージのような、「初心者向け」「誰でも楽しめる」とはちょっと違うというか、「初心者向け」って概念自体に幅がありすぎるという話を書く予定。
あ、念の為補足するとスプラトゥーンは(辛いけど)楽しいゲームなのは確か。ちなみに自分は今のところウデマエB+ぐらいで安定。バケットスロッシャー派。ランク1桁の人については状況が許す限りキルは避け、リッター3Kと煽りイカ*1野郎は積極的にキルしに行くプレイスタイル。バケツ楽しいよバケツ……と書けるぐらいには楽しめてる。
色々語る前に、ゲームプレイヤーとしての自分について
このブログの「ゲーム」カテゴリを見ても分かるように、基本はストラテジー系PCゲームがメイン。反射神経使うようなFPS/TPSは苦手というかほぼ初心者。
あと、「だからゆとりは」的な感想が来る前に補足しとくと、ロンダルキアの洞窟(FC版)体験した世代なんでそこんところよろ。
発売前の期待
スプラトゥーン発売前までさかのぼって自分が受けた印象を振り返ってみると、この記事
のように
"撃ち合いの巧拙に関わらず,みんなで楽しく遊べるシューティング。"
"陣取りゲーム"
"TPS風のゲームでありながら,射撃のうまさに関わらず貢献している気になれて楽しい"
"総じて「プレイヤースキルに関わらずみんなで楽しく遊べる」ことに注力されている"
って感じだったんですね。任天堂が、スパルタンで荒んだ(下手なプレイすると即座に4文字言葉が飛んでくるような)プレイヤー対戦型のFPS/TPSのあり方を根本から変えるようなゲームを出してくるんじゃないかという期待がありました。
で、実際のスプラトゥーンがどういうゲームだったかというと、確かにこー初心者に向けて「間口が広い」ゲームであり、荒まないように考えられてはいるんですが、プレイしてて余りに"初心者向け"ではないよなあという印象が強かったです。面白いけど。
発売後のレビュー
でも、発売後に出てるレビュー等を見ても結構「初心者向け」「だれでも楽しめる」的な感想が多いんですよね。例えば
ゲーマー向けメディアだと
イカ達が装備しているブキはステージを塗りつぶすために使うものであり,相手を倒すのは二の次。
ゲームで何人相手を倒しても,また何回相手に倒されても,最終的な勝敗は塗りつぶしてナワバリとした面積で決まるので,積極的に最前線に出て戦わなくとも,相手のいないところで黙々とステージを塗りつぶしていくだけで,チームの勝利に貢献できる。このあたりが,本作の最大の特徴といえるだろう。
【「Splatoon(スプラトゥーン)」レビュー】Splatoon(スプラトゥーン) - GAME Watch
敵を倒すスキルも重要だが、あくまでも“インク(塗る)”と対を成している点もポイントのひとつ。一般的な対戦メインのTPSやFPSでは精密なエイミングスキルが大前提となるため、それが苦手だとそもそもゲームに参加できない(楽しめない)が、本作は塗ることが最大の貢献。ドンパチ要素を十二分に残しつつ、それが苦手な人も参加できる……なにより“貢献できる”作りは白眉の一言。「誰でも楽しめるゲームです」なんてセールストークも陳腐化して久しいが、本作ではプレイするたびに実感させられる。
実際に遊んでからあらためて一言で説明すると,「平和面白い」って感じよね。
ゲーム系以外のメディアだと
いわゆるシューティングというジャンルのゲームですが、なにがすごいかというと、まず世界観がすばらしい。人を倒すんじゃなく、殺すんじゃなく、色を塗っていく陣取りゲームなのですね。
みたいな。まあ、取り上げられ方としては「だれでも楽しめる」「初心者向け」的な色が強い。
ほんとに誰でも楽しめるのか
いやこれ書いた時は「辛いわー」って感想がかなり少なかったんですが、発売後結構経つとそれなりに「辛いわー」系の感想増えてくるんですよね。例えば
anond.hatelabo.jp
(スプラトゥーンとは明示されていないけど、マリカの話が出ているということはWiiUで、"そのゲームの絵柄自体はかわいらしくて年齢制限もついていないんだけど、TPSやFPSタイプのネット対戦ゲーム"との事なので、書かれた時期と合わせてまあスプラトゥーンで間違いないだろうなと。)
あと、Twitterでも「子供がプレイしてて切れた」的な話も見かけたけど、今探したら見つけきれなかった(探し出せてもここでリンク貼るべきかどうかは微妙だけど)。
何故「辛いわー」系の感想が余り目立たないかというと、"ゲームそのものがつまらない"という話であれば、いわゆる「クソゲー」批評のように該当ゲームをDisることで書き手も読者も楽しめる(事もある)のですが、スプラトゥーンの場合、そういう書き方は出来ない。何故かと言うとゲームとしては面白いから。繰り返すけど、ゲームとしては面白い。けど、プレイするたびにフラストレーションが溜まってくる場合がある。ナンデ?
何故、そんな楽しいゲームでフラストレーションを感じるのか?
いやゲームの設計としていくつか要因は思いつくんですけどね。例えば
- 何のかんの言って腕前の差が露骨に出る
- 比較的少人数の対戦(4対4)なので、負けた時に「自分の下手さがチーム全体の足を引っ張る」感が強い
- いったん劣勢になるとひっくり返すのは困難で、ひたすら押し込まれるだけのプレイになる
- 負けた時のリザルト表示でことさらに悔しさを煽ってくる
- 現状のナワバリバトルのマッチングは「下手な人」を救済しない*2
あたりの要素。でもこれ、上手い人にとっては魅力なんですよね。
- 何のかんの言って腕前の差が露骨に出る → 上手ければ爽快なプレイ体験
- 比較的少人数の対戦(4対4)なので、負けた時に「自分の下手さがチーム全体の足を引っ張る」感が強い → 上手ければ「自分の強さでチームに貢献」の魅力
- いったん劣勢になるとひっくり返すのは困難で、ひたすら押し込まれるだけのプレイになる → いったん優勢を確保できれば、そう崩れない
- 負けた時のリザルト表示でことさらに悔しさを煽ってくる → 負けなければどうということもない
- 現状のナワバリバトルのマッチングは「下手な人」を救済しない → 上手ければ何の問題も無い
上手い人(ゲームレビューの発信者は大抵上手い人でも有る)にはこういう面はあんまり見えてこないし、下手な人は「ゲームそのものが駄目」ではなく「自分の腕が駄目」と思えてしまうので、あんまり正面から書きづらいのではないかという気がします。いやこれでゲームそのものが理不尽に難しかったりしたらまだある種の救いがあると思うんですが、ゲーム自体は素晴らしいので「自分に対してフラストレーションが溜まる」状態に追い込まれやすいんじゃないかなと。
「初心者向け」って何だ
ガチなゲーマーの人は"ゲーム自体は素晴らしいので「自分に対してフラストレーションが溜まる」状態に追い込まれやすい"とか読んだら
「いやそこは腕を上げろよ!勝つために努力しろよ!勝って楽しめよ!それがゲームの楽しみじゃないか」
的な事を思うかもしれません(実際、上で上げた「辛いわー」系へのはてブコメントやトラックバックでもそういう反応がある)。
………いやな、分かる。分かるよ学生時代の自分でも同じような反応したと思うよ。
でもさ、満員電車に揺られてヨレヨレになって家にたどり着いたサラリーマンに、そういう事求められても辛いのな。一日の疲れでささくれ立った精神を解きほぐすためにまったり楽しみたいのな。
あるいは、感情の制御がまだまだ苦手な子供に、遊びの中でそういうストレスを与えて耐えろっていうのはちょっと辛過ぎね?
スプラトゥーンの「間口の広さ」とか「初心者向け」とは、「初心者が中級・上級者へと育つための取っかかりやすい」「初心者でもすんなりはまり込める」という話であって、「初心者が初心者のままでまったり楽しめる」という方向じゃ無い気がするんですよね。なんというか、プレイヤーが、それに応えるだけの精神的・時間的、あるいは年齢的な余裕を持っていれば、努力の過程で心ゆくまで楽しめるとは思います。が、そういう余裕を持つことが出来ないプレイヤーにとっては辛さが溜まる構造になってしまっているんじゃ無いかと。
もっと言うと、かつてWiiやNintendo DSで任天堂が興したムーブメントって、そういう「初心者が初心者のままでまったり楽しめる」方向だった訳で、スプラトゥーンでもそういう方向性を期待してたのに裏切られたなーというモヤモヤも有る。
補足すると、実はプレイスタイルによってはdic.nicovideo.jp
のようにまったり遊べるマッチングへ到達出来るんですが、余程の腕がない限りは、キルされ続けることに慣れ続けるか、見方の勝利に貢献しないプレイをし続けるかでないと到達出来ない気がして多分心が折れそう。*3
なんというか、これから年末~正月にかけてスプラトゥーンは爆売れすると思います。そしてかなりの割合で「初心者向け」という言葉に対して「初心者が初心者のままでまったり楽しめる」という印象を持って買う人がいるんだろうなと思います。
そういう人が、買ってしまった後で「こんなはずじゃなかった辛い」的な感想を持つ前に読んでくれないかなーと。
最後に念の為、(自分にとっては辛さがあるものの)スプラトゥーンは楽しいのも確かです。「初心者が初心者のままでまったり楽しめる」系のゲームじゃ無い(というかそういう風に楽しむには工夫が必要な)だけで。
*1: 主に敵プレイヤーを倒した時に、相手プレイヤーを煽るために行われるディスプレイ行為。参照: 【スプラトゥーン】煽り イカ - YouTube
*2: 現状では他のユーザーをキルする傾向が強い/弱いプレイヤー同士がマッチされる。プレイヤーの腕はあんまり関係しない。
*3:とはいえ、ある程度ランクを積み上げた後ではなく、初手から「ゆうたピア」を意識して不殺プレイしてればすんなり行けるかも。まったり楽しみたい人は理不尽に思えても不殺プレイに徹しよう。