「希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想」
希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想 (光文社新書)
- 作者: 古市憲寿,本田由紀
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2010/08/17
- メディア: 新書
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最近、「コミュニティ」や「居場所」は、若者や生きづらさを抱えた人を救う万能薬のように語られることが多い。しかし、それは本当なのか。本書は、「世界平和」や「夢」をかかげたクルーズ船・ピースボートに乗り込んだ東大の院生による、社会学的調査・分析の報告である。
なんらかの夢や希望をもって乗り込んだはずの船内で、繰り広げられる驚きの光景。それは、日本社会のある部分を誇張した縮図であった。希望がないようでいて、実は「夢をあきらめさせてくれない」社会で、最後には「若者に夢をあきらめさせろ!」とまで言うようになった著者は、何を見、何を感じたのか。若者の「貧しさ」と「寂しさ」への処方箋としてもちあげられる「承認の共同体」の可能性と限界を探っていく。
解説と反論、本田由紀。
なかなか面白い本。著者の論としては
- 普通の人は「承認の共同体」の中で居場所を見つけて夢を諦めなさい
- そうでない人は「承認の共同体」を動かすことで社会を変えなさい
という感じでまとまるはずですが、本来後者を目指したはずのピースボートが現状では前者の機能しか果たしていない(まあ、モノも組織も、放って置くとより安定な状態へ落ちてていくのは変わらないか)というあたりが中々絶望的です。
個人的には、著者には今度自衛艦(ピースボートと同様、外部と隔絶した共同体であり、士に限れば期間限定という共通点はあるものの・・・思想の左右、明確な目的の有無、組織形態等については全く逆)についても社会学的に調査して欲しいところ。
実際、「承認の共同体」というか絆的なモノを求めて地連の扉をたたく人って多いんじゃないかな。