アジモフ&シルヴァーバーグ「夜来たる(長編版)」感想

夜来たる 長編版 (創元SF文庫)

夜来たる 長編版 (創元SF文庫)

amazonあらすじ。

六つの太陽が空を巡る惑星。昼間だけの世界で、人々は闇というものを知らずに文明を謳歌してきた。だが若き天文学者が思いもよらぬ事実を察知する。この星に二千年に一度の夜がくる。誰も体験したことのない恐るべき闇夜が。教団が勃興し、ジャーナリストが嘲笑する中、刻々とその時は迫る。巨匠のベスト1短編が盟友との共作で長編化。

短編版「夜来たる」(過去日記参照)を基に、シルバーヴァーグとの共著で長編化した作品。
人々がどのように狂気へ追い込まれていくのかという心理描写や、「夜」後の社会についての崩壊や復興の様子といった、短編版では無視されている部分についてもかなりのボリュームで描かれていて、異世界ディザスター小説として面白いです。
しかし一方で、短編版の特徴である(アジモフの作品とは思えないほどの)悪夢的で鮮烈な印象が消えてしまい、冗長になっているのは確か。
あと、宗教団体の描写が前半と後半で変わり過ぎで行動に整合性がないとか、惑星の裏側の半球では真昼なんじゃないかとか、日食が発生したとしても影響される(影に覆われる)地域はかなり限られるんじゃないかとか、長編化したことによってかえって突っ込みどころも拡大してしまったような・・・。

コレはコレで悪くはないけれど、どちらか選べと言われたら短編版を押します。