ルーディ・ラッカー「ソフトウェア」

ソフトウェア (ハヤカワ文庫SF)

ソフトウェア (ハヤカワ文庫SF)

明るい陽光、バームツリーと白い砂浜。隠退老人たちのリゾート天国、フロリダで余生を送る元天才ロボット学者のコッブは、自分とそっくりの男の訪問を受けた。月に行ってくれれば、代償に新たな肉体を提供するというのだ。月では、かつてコップに自意識を与えられ、人間に対して叛乱を起こしたロボットたちが、独自の都市を築いている。いぶかしく深いながらも招待に応じたコップは、いつしかロボット同士の大抗争にまきこまれてしまった!マッドSFの鬼才ラッカーが、奇想天外な大騒動をポップなタッチで描いたディック記念賞受賞。

帰省中に実家の本棚から回収してきた一品。以下とりとめなく感想を。

  • 原書は1982年発行。もう30年近いのか・・・。
  • どん詰まり老人社会と、その中で明日に未来に希望を持てずブラブラと暮らす主人公ステイ=ハイの描写は、日本語版が発売された当時(1989年、バブル期)よりもむしろ今のほうが受けるかも。
  • 月面での、メインフレームマシンを思わせる体制側ロボットと、PCやデジタルガジェットを思わせるお調子者"バッパー"との対立というのも、1982年に書かれた物としてみると味わい深い。同じような対立構造をもうちょいスタイリッシュに澄まして表現したAppleスーパーボウルCMが1984年に放送されたものであると考えるとなおさら。
  • かつてギブスンは「ガーンズバック連続体」でパルプマガジン時代のSFを"昨日の未来"と切り捨てていたが、この「ソフトウェア」は30年前に書かれたものの、間違い無く現在進行中の「今日」を書いた物語。
  • まあ、RNA記憶とかいうキーワードが出てくるのはご愛嬌ってことで。