クローム襲撃
- 作者: ウィリアムギブスン,ウィリアム・ギブスン,浅倉久志
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1987/05
- メディア: 文庫
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久方ぶりに再読。80年代初期の「サイバーパンク」運動の火付け役となった短編集。
- 「記憶屋ジョニイ」
なんというか、ハイテク日本を表すターム("チバ・シティ"、"オノ・センダイ"や国際シンジゲート"ヤクザ"とか)が出てきたときに原因不明の恥ずかしさがこみ上げてきて、思わず本を放り投げそうになった。確か最初に読んだのは'93〜94年ごろだったと思うが、そのころにはもうバブルも良い具合いに崩壊済みだったし「日本のハイテクは世界一」的な幻想も既に崩れていた。でもそのときにはこんな恥ずかしさは感じなかったがなあ。ギブスンの描写する「エキゾチックで神秘的で異質だけれど凄いテクノロジーを持つ日本」という描写と、"失われた10年"以降の日本が陥っている「うだつの上がらなさ」のギャップが羞恥心を刺激してたまらない。
- 「ガーンズバック連続体」
30〜50年代アメリカのチープで底抜け楽観主義なペーパーバックSFを、80年代のドツボにはまり込んでしまったアメリカ人の視点から振り返る・・・といった短編だけれど、「記憶屋ジョニイ」を読み終えたあとで次に来るのがコレですよ。「サイバーパンク」も陳腐化し、staticな「死者の国」として描写されたサイバースペースが、結局エロサイトとエロスパムで溢れかえっている現状を再確認すると何故か「記憶屋ジョニイ」で感じた恥ずかしさがきれいさっぱり消えた。
- 「赤い星、冬の軌道」
ISSの将来に暗雲が立ち込める現在こそ再評価されるべき。
- 「辺境」
ティプトリーの「そして目覚めると、わたしはこの肌寒い丘にいた」から性的要素を抜いて再構築したような印象。決して手の届かない未知なる物を求める挫折感。
- 「ドッグファイト」
米軍では現実にパイロットへ薬物を投与する(覚醒剤の助けで戦闘に臨む米軍兵士たち)というニュースを読んだとき(これもかなり昔だけど)思い浮かんだのはこの短編だった。
あち、桜坂洋「スラムオンライン」を読んだときに「ドッグファイト」と同じプロットをたどると思ったがハッピーエンドで終わって意外だった覚えがある。