- 作者: I.モンタネッリ,藤沢道郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1996/05/18
- メディア: 文庫
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買おうと思いつついつもスルーしていたが、「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」様の紹介が面白そうなので要購読リストに追加。
(追記。3/28日記にて感想をアップしました。)
塩野ローマは格下だということではない。面白いところはスゴいぞ。「ハンニバル戦記」と、「カエサル(ルビコン以前)」、「カエサル(ルビコン以後)」は、素晴らしくハマれる。想像力(創造力?)と描写筆力がダントツに優れており、戦場の駆引きから権謀術数まで、見てきたように書いている。この三作は夢中本・徹夜本であることを請合う。
とあるが、個人的には「カエサル(ルビコン以前)」、「カエサル(ルビコン以後)」より「終わりの始まり」を押してみる。「カエサル(ルビコン以前)」、「カエサル(ルビコン以後)」はどうにも作者のカエサル萌えが鼻につくので余り・・・
先ずは「ハンニバル戦記」(「ローマ人の物語 (3) ― ハンニバル戦記(上) (新潮文庫)」「ローマ人の物語 (4) ― ハンニバル戦記(中) (新潮文庫)」「ローマ人の物語 (5) ― ハンニバル戦記(下) (新潮文庫)」)について感想。この巻はたぶんこのシリーズ中で最高傑作。ハードカバー版が出たとき、当時高校生だったが余りの面白さに徹夜で読んだ覚えがある。
覇権国家として興隆し始めるローマ、ローマに対してほぼ個人のスタンドプレイで対抗し、互角に渡り合うハンニバル。微妙に「他人事」のような立場を取り、本腰を入れてハンニバルを支援しないカルタゴ本国。カンネー包囲戦で敗北し、風前の灯火となったローマを救う若き英雄スキピオ。ハンニバルとスキピオの直接対決とその後・・・・
いやもう面白さてんこ盛り。"見てきたような"描写も手伝い、歴史小説としては一級品です。いやまあカルタゴの文化や国制についてもっと詳しく触れろとか不満はあるけど、その辺は「カルタゴ人の世界 (講談社学術文庫)」や「ハンニバル 地中海世界の覇権をかけて (講談社学術文庫)」でカバー。
「終わりの始まり」(「ローマ人の物語〈29〉終わりの始まり(上) (新潮文庫)」「ローマ人の物語〈30〉終わりの始まり〈中〉 (新潮文庫)」「ローマ人の物語〈31〉終わりの始まり〈下〉 (新潮文庫)」)の面白さは、マルクス・アウレリウスの人物像に尽きるなあ。決して天才ではないけれど誠実で真面目で、本当は統治者ではなく哲学ヲタクの方が性に合っていると思いつつも皇帝として懸命に働き・・・なのに共同皇帝の弟は無能で、幼馴染には裏切られ、天才でなければ打開できないような国難に対応せねばならず・・・・既成の体制の良い所を象徴するような良い人であるがゆえに、制度疲労が原因の問題に対して従来どおりの対応を繰り返すしか出来なかった悲劇。
もちろん、本人の自省録(マルクス・アウレリウス「自省録」 (講談社学術文庫))もお勧め。
自省録については日経BPで出ていた紹介(ローマ皇帝が「本も読めない日々だけど、おたがいがんばろうぜ」と肩を叩いてくれた)もまた非常に面白い。