「独裁者」との交渉術

「独裁者」との交渉術 (集英社新書 525A)

「独裁者」との交渉術 (集英社新書 525A)

カンボジア総選挙を成功させた立役者であると同時に、ユーゴ紛争の拡大を招いたとして批判されることも多い(Wikipedia「明石康」の項明石康氏へのインタビューをまとめた一冊。

現地ではそれこそ

実際にボスニアムスリム地区にいけば、今でも日本人と見ると「ヒロシマナガサキ、ヤスシ・アカシ」と、未曾有の悲劇と並べて囃し立てる人が居る

とまで言われている始末。
この辺は明石氏の資質がどうこういう問題ではなく、国連外交の限界だろうなあ。紛争当事者間の調停をミッションとする国連外交と、紛争当事者を善玉と悪玉に分け、武力行使で悪玉を叩くという大国外交(と書くと単純化し過ぎかとも思うが、ユーゴ紛争に関してはこの見方は正しいと思う)の食い違いの問題かと。
また、スリランカのTLLEが国際的に孤立していく過程についても触れられている。

あと、この辺のこぼれ話も中々収穫。

セルビア北部のビィンチャ核科学研究所というところに原子炉があり、そこに劣化ウラン弾を回収したものがあるというので、回収作業を取材に行って驚きました。濃縮ウラン倉庫のセキュリティが本当に鎖と南京錠一個でした。さすがにその取材の一ヵ月後くらいにアメリカとロシアの共同作業で、電光石火、高濃縮兵器用ウランが運び出されてもともとの供給元のロシアに戻されたそうです。