よくわかる第一次外惑星動乱(谷甲州『コロンビア・ゼロ』発売記念)

二十数年ぶり!谷甲州「航空宇宙軍史」の新刊が・・・

作品の内容としては流石に文句のつけようのない出来ですが、二十年以上前に書かれた「(第一次)外惑星動乱」に関するエピソードが多いので、せっかくですし一つ外惑星動乱について勝手にまとめてみようと思います。
ご新規さんな人のためのガイド、あるいは古参な人向けのリマインドメモになれば幸いです。

正直な所、大分端折っていますが、まあアウトラインを掴むにはこれぐらいで良いんじゃないかと。

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スプラトゥーンの辛さについて語ってみる

「からい」じゃなくて「つらい」。「スプラトゥーン面白いけど、現状では反射神経無い人には結構辛いよね」という話。

Splatoon(スプラトゥーン)

Splatoon(スプラトゥーン)

実際のところ、スプラトゥーンは非常に面白いし、かつ色々と語ってみたくなるような変な魅力のあるゲームなのよな。面白さについては検索すれば商業メディア/ブログ/Twitter/ニコ動ようつべと、ありとあらゆる所で語られてるので深くは触れません。

何が面白いのさ

とりあえず。

【「Splatoon(スプラトゥーン)」レビュー】Splatoon(スプラトゥーン) - GAME Watch 【「Splatoon(スプラトゥーン)」レビュー】Splatoon(スプラトゥーン) - GAME Watch

b.hatena.ne.jp

n-styles.com

といった所で語られてる魅力は全部ほんとのことで、まあWiiU本体ごと買っても損は無い出来。このゲームのために発売一週間前に(販売終了直前の)WiiU ベーシックセットを買った自分が言うんだから間違いない。辛い辛いと言いつつ、この前の土日はほぼスプラトゥーンで終わった。

何が辛いのさ

と、ここからが本題。
面白いのは面白いんだけど、自分としてはプレイしてて結構辛い感じがするのも確かなわけで。

今のところ、インクの塗り合い合戦(ナワバリバトル)はオンライン対戦で無いと出来ないわけですが、なんとゆーかこー、ある程度ランクが上がった後の対戦相手にガチ勢が多い。ここで言うガチ勢っていうのは、FPS/TPSの基本動作をこなしてくる感じの手慣れたプレイヤーとか、ステージ別の攻略情報とかを事前に仕込んでくるような、1回の対戦で0デス5キル10キルとかしちゃうあの辺の人たち。で、自分の技量だとkill出来ないとか以前に牽制や足止めすら満足に出来ないんですな。

個人的にはガチな人と一緒にプレイするよか、NPC相手にまったりインクを塗り合いつつキャッキャウフフとまったり孤独にローカルプレイしたい訳なんですが、現状のローカルプレイはパズルアクション的な色が強く、塗り合いバトルは用意されていません。まあ、ローカルプレイについてはそれはそれで面白いのは確かなんですが………………インク塗りたくり合戦したいです。

オンライン対戦のマッチングは、各プレイヤーのランク*1と"チョーシ"ポイント*2に従って行われてる感じなんですが、どうも自分のケースだと、周りと比べて自分のプレイが見劣りするレベルでマッチングが安定しがちな気がするんですよね。なんというか、「ピーターの法則」的な感じで「自分が周囲と比べて無能」ってところで平衡状態になってしまう感。
え?「序盤ラッシュ後は後方でベタ塗りしてるだけでも全体への貢献になる」?後方でベタ塗りしてても(後方でベタ塗り出来るぐらい前線が確保できてるのであれば)全体の勝敗への影響は低いし、自陣周辺まで押し込まれたら蹂躙されて成されるがままですよ実際のところ。

多分、元からシューター系をやり慣れてる人や、反射神経のいい人にとってはこの辺の感覚は理解できないだろうなーと思うんですが、全体的にスプラトゥーン絶賛してる人の中心層は多分この辺だとおもうので「辛い」って意見があんまり表に出てこない感じがする。ちょうどスポーツ大好きな人にとって

「お前も野球したいの?じゃあライパチ*3な」

的な言動の辛さが理解できないのと同じような感じかと。
E3のスプラトゥーン動画を初めて見た時に感じたのは、もしかしたらシューター苦手な人でもこの辺の劣等感を感じずにプレイできるかもしれないって期待だったんですが、勝手に期待しといて裏切られた感。似たような期待をしてる人はある程度覚悟を持って買ったほうが良いかもしれない。面白いけど。

この辺、もうちょっとオンライン対戦のマッチングで工夫してくれるか、マップ上のランダムアイテムを拾いつつ塗り合いするような運要素の入った対戦が実装されるか、あるいはオフラインでNPC相手にナワバリバトル出来るように成れば一気に解消しそうなんですけどね。

*1:これまでインクを塗ることで稼いだ総ポイント数に依存。現状の最高ランクは20

*2:各プレイヤーの勝率に依存。数時間に一回、マップが切り替わるタイミングでリセット

*3:野球世代後の人向けに解説すると、ボールがめったに飛んでこない守備位置と、あんまり重要じゃない打順の組み合わせ。要は「お前戦力外だけどお情けでいれてやんよ」の意

「生科連からの<重要なお願い>」(高齢ポスドク問題についての声明)を読んで感じたモヤモヤ感をまとめてみる

↓の件について、読んでてどうにも違和感というか都合良すぎるんじゃないかなーと思ったのでちょっとモヤモヤ感を文書化してみる。

www.jbsoc.or.jp

生科連からの<重要なお願い> [pdf] 生科連からの<重要なお願い> [pdf]


まあ、短くまとめると

って話なんだけど。

この問題についての自分の立ち位置について

これ書いとかないとフェアではない気がするので明示しますが、自分は生物系で博士後期課程に居ましたが研究に行き詰まったり将来の見込みが絶望的に思えたので結局は中退しました*1。で、もし中退してなければ、上の資料で扱われている「高齢ポスドク」に成ってたかも知れません。
なので、

「ばーかばーか、こうなるってわかってたじゃないかばーか」

的なバイアスがかかっています。予めご注意ください。

本当に「こんな状態になるとは予想できなかった」のか?

元資料 p.6「(1) 個人(本人)レベルの問題点:」から

ポスドクの平均契約年数が約 2 年(参考資料 3 より)と短いため、人生設計が難しい場合があります(結婚できない、子供が持てない等)。

(中略)

正規職員になれないのは本人の努力不足と捉える見方ももちろんありますが、正規職員へ道は上で述べたように狭き門であり、本人の努力のみでは解決が難しい状態です。また行政が新しく進めた政策でもあり、本人に職業の選択を判断するための十分な情報はありませんでした(こんな状態になるとは予想できなかった)。そのため社会全体で考えていかなければなければならない問題です。

要は高齢ポスドク問題は行政の責任でもあるので社会全体で対応してねというお願いなんですが、「こんな状態になるとは予想できなかった」という主張にはちょっと違和感があります。
2000年代初頭(現在40歳のポスドクなら24~26歳。博士後期課程に入る直前か入ってすぐぐらい。まだポスドク以外の選択もあり得た)にはこれらの問題は周知のものだったはずです。

サンプルとして、当時研究職目指してた人の間で話題になってた「研究する人生」掲示板のログからいくつかスレを抜き出してみます。

院生、ポスドク諸君、結婚はどうするのよ?@研究する人生

01: 名前:研究する何某投稿日:2001/12/02(日) 12:30
30近くまで大学院生、35くらいで生まれて初めて就職(運がよければ)、
しかも職場は男だらけ。。。こんなむさい男を愛してくれる女性はいるので
あろうか。諸君はどうやって彼女を見つけるのかや?漏れも今は彼女がいる
けど、結婚したいかといわれたらちょっと?だし、今後どうやったらいいのか。
結婚相談所にでもいくかな。みんなどうやってパートナーを見つけるの?


大学の先生は崩れを量産させて平気ですか?@研究する人生

01: 名前:研究する何某投稿日:2002/04/20(土) 14:43
博士課程を終えて30近くなった人を何のケアもなく、飼い殺し、放置プレー、
追放などするのは、普通の人から見ると犯罪行為にしか思えないです。

2000年代初頭にはすでに「高齢ポスドク将来真っ暗」な呪詛が渦巻いてますね。

まあ、2ch派生系掲示*2だし、生物系限定の掲示板という訳でもなくこんなんアテにならんだろとも思うので、次に書籍ソースを見てみます。

もともとは『実験医学』誌2000年2月~7月号の連載です、書籍版の初版は2000年10月発行。
メジャーな和文誌上での連載ということで、たぶん、当時の生物系院生だったらかなりの割合で読んでるはずです。
脱線するけど、著者の白楽ロックビル氏のサイトは色々と研究倫理関連の情報が集まっててお勧め。

白楽の研究者倫理 | ネカト(ねつ造・改ざん・盗用)・クログレイ・性不正(含・セクハラ)・アカハラ・・・白楽ロックビルのバイオ政治学



閑話休題、この本は科学政策から研究者としての個人的人生設計まで網羅されていて凄いんですが、2000年代初頭の「ポスドク人生設計」に絡む部分を(ほんの一部ですが)いくつか抜き出してみると・・・

p. 197 現役ポスドクへのインタビューから

年齢としては助教授クラスだけど助教授の募集は少ない。で、40歳前後で、もう一度ポスドクにといっても、雇うほうが敬遠します。
雇うほうは、27~8歳くらいで、自分のプロジェクトに従って夜中まで働いてくれる人を雇いたい。40歳前後の研究者は雇いたくない。それで、冗談じゃなく、ホントに40歳前後で無職になってしまいます。知り合いの40歳前後の男性でもう無職になって2年という人がいます。家にこもっているし、研究職に復帰するのは難しい。
また、ヒドイ話ですが、ポスドクが女性(主婦)だと、『収入がなくてもいいじゃない。好きな研究をしたら?』、と平気でいうボス(男性)もいたりします。

(中略)

それにしても、『日本政府はポスドクをこんなに大量に増やしてど―すんだろう?』、と心配です」

要は、この頃から既に(個別事例としての)高齢ポスドク問題は存在してたってことで。

 
p. 223 より

あるとき、科学技術庁の若い官僚(名前は忘れた)から電話で相談されたことがある。その官僚の相談内容は、「『大学院生倍増計画』と『ポスドク等一万人計画』のお陰で、日本では博士号取得者とポスドクがドンドン増えている。その人たちをどうしたらいいでしょうか?」である。不肖・ハクラク、あきれて声が出ない。
だって、「研究者が今までの2倍必要」だから、大学院生を2倍に増やし、ポスドクを2倍に増やしたんじゃないの? 必要もないのにただ単に大学院生とポスドクをドンドン増やしちゃったの? こういう長期的人材育成は国家計画の柱でしょうが? しかし、どうやら、研究者が今までの2倍必要」かどうかではなく、まず「大学院生倍増計画」や「ポスドク等一万人計画」があったらしい。どーする、チミ。

(中略)

というわけで、現在の研究者育成システムで育ってきたキミの今後の人生を、これからは国が責任もって面倒みてくれるわけではない。大学院生やポスドクのキミは研究職サバイバルゲームを“自己責任"で生き残ってネ

とかまあ、「長期的視野に立った科学政策とか人材育成計画なんてのも無いよー」と、無慈悲なまでにあっけらかんと書かれてたりします。
まとめると、15年前には既に国の科学政策はあてにならない事も、ポスドク数に対してアカデミックなポストが少なすぎる事も、一定の年令以上までポスドクを続けたらもう先が無いって事も、普通の(生物系)院生であれば知ってたよねという話です。(ついでに、博士卒者のアカデミック以外の多彩なキャリアパスの必要性についてもこの本ではかなり触れられていたり、15年後の今でも通じる凄みがある。15年のあいだ、業界全体で問題がまるごと先送りされてたんじゃないかという気もするけど…)


まあ元の声明の主張としては「ポスドク個々人の責任じゃないから社会全体で救済してね」という話なのでこの辺は書きにくいとは思いますが、かと言って

また行政が新しく進めた政策でもあり、本人に職業の選択を判断するための十分な情報はありませんでした(こんな状態になるとは予想できなかった)。

ってのはちょっと誠実では無いと思う。てか90年代ならともかく2000年代にはみんな覚悟完了した上で「有能な俺なら大丈夫なはず」って突撃してったんじゃね?

「救済措置」が有るとすれば、多分氷河期世代問題対策って形になるんじゃないかな

思うに、「ポスドク問題」って社会全体での対応が正当化されるような大問題と見なされない気がするんですよね。人数的にも誤差レベルなので社会問題化することは無いでしょうし、「そんなに高度な技能もってるんなら自分で食い扶持見つけろ」と言われたらどうしようも無い気がする。もっと言うと「高度人材だから救済が必要」ってロジックそのものが矛盾してる。

救済措置が取られるとすれば、社会的インパクトの大きな「氷河期世代」の高齢化問題への対応の「ついで」扱いになるんじゃないかという気がします。年齢的にも、長期安定職に就けないって現象的にも類似してますし、同じ枠に放り込まれる気がする。もったいない事では有るけど。

その他

あと、元の声明で出てるバイオベンチャー周りについても書こうと思ったけど、この辺については直に経験した事じゃないので迂闊なこと書けないよなーと思ったので省略。

あと(今回の声明とは直接関連無いけど)、
【帰ってきた】ガチ議論
みたいな新しい取り組みも出てきてるし、生物研究業界全体で見れば、良い方向に変わってきてるとは思う。

*1:あとまあ、数年スパンで確実に結果が出る論文を量産してキャリア形成っていう生き方はなんかこー自分が求めてた「職業科学者」としての生き方とは違うよなーという思いもあったけど、長くなるんで略

*2:元々生物板で職業研究者系スレ住人と趣味としての生物を扱うスレ住人との間で対立が発生し、職業研究者向け板の新設を2ch運営へ申請するも蹴られたという経緯で「研究する人生」掲示板が作られたという記憶なんですが、検索してももうこの辺の経緯が出てこないので曖昧記憶モード

ゲーム『Vietnam ‘65』感想

色々と面白かったので紹介。
自分がプレイしたのはPC版store.steampowered.com

iOSアプリ

Vietnam...'65

Vietnam...'65

  • Slitherine
  • Games
  • $9.99
からの移植らしい。

『Vietnam 65』はベトナム戦争を題材としたターン制ウォーゲームです。
正直な所、このゲームは万人向けではないです。プレイしててあまり爽快感はありません。ただ、米国から見たベトナム戦争の「面倒くささ」が上手いこと表現出来ていて 興味深い。

以下、ルール説明

"Hearts and Minds"ポイントとPoliticalポイント

こんな感じの、ジャングルの中に水田と村が散らばっている感じのマップが自動生成されます。

f:id:ka-ka_xyz:20150329224313p:plain
で、プレイヤーの勝利条件としては、左上の"Hearts and Minds"ポイントを貯めることです。
具体的にどうするかというと、

  • 歩兵部隊を村落へ送り込む
  • 村落の近くで敵(ベトコンあるいは北ベトナム軍)を撃退
  • 敵の基地を探しだして撃破

といった感じです。要は、地元住民の"Hearts and Minds"を掴むような行動でポイントを得ることが出来ます。逆に、敵の襲撃で被害が出たり、敵の歩兵部隊に村落を占拠されたりすると"Hearts and Minds"ポイントは低下します。まあ、米軍の場合には遠くの村落へも輸送ヘリであっという間に歩兵部隊を送り込めますし、配置転換も輸送ヘリであっという間に済みます。
また、「敵を撃退」っていってもそんなに難しくは有りません。いったん敵を捕捉してしまえば、近くにいる歩兵部隊で撃破するもよし、戦車や兵員輸送車で撃退するもよし、砲兵の間接射撃で撃退するもよし、攻撃ヘリで叩くもよし、それでも射程外の場合には空爆を要請するもよし。よほど運が悪くない限りはどんな方法で攻撃しようが完勝できます………敵を捕捉出来れば、ですが。
敵は大抵の場合はジャングルに潜んでいて、地雷を敷設したり嫌がらせ的な待ち伏せを行ってくる程度、あとは村落や基地へ襲撃をかけてきますが、大抵は対応できます。敵を撃退するとPoliticalポイントがたまり、部隊の補給や増援部隊の追加に使用されます。
Politicalポイント無しでも南ベトナム軍ユニットを作成できますが、これがまたお察しください的な能力(一応、米軍の歩兵ユニットよか索敵範囲が広かったり"Hearts and Minds"を獲得しやすかったりするらしいですが、戦闘には弱い)。

補給切れ即死ルール

で、一見すると米軍側の楽勝に見えるルールですが、ただひとつ注意が必要なのが補給システムです。このゲーム、部隊をいったん基地の外へ出してしまうと、地上部隊であっても1ターンごとに部隊の補給ポイントが減少し、補給ポイントが0になると部隊は消滅します。なので、村落へ送り込んだ歩兵部隊に対してヘリコプターや装甲兵員輸送車で定期的に補給を行う必要がありますが………これがまた面倒くさい上に、輸送ヘリや輸送車が補給物資を搭載できるのは、HQやFirebaseといった限られた基地だけなので、パズル的な思考が要求されます。また、たまに輸送ヘリが襲撃されたりするとギリギリで回ってた輸送ヘリのローテーションが崩れ、補給体制が一気に崩壊する可能性も出てきたりしてめんどい。

周り全部敵

ジャングルに潜む敵を掃討するには、戦線(部隊を連ねた「壁」)を作って安全地帯を確保するという方法が有効に思えますが、このゲームでは上記の補給切れ即部隊壊滅ルールと、そんなに余裕が無いPoliticalポイントの制約により、部隊は不足するわ補給も回らないわとなり「壁」を形成することが困難です。
なので、村落や基地というマップ上の「点」を輸送ヘリの空中機動で結ぶ(ということは、「点」と「点」の間のジャングル地帯はゲリラの跳梁跋扈を許すことになる)という、史実のベトナム戦争的な展開が強制されます。

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とは言え、慣れればなんとかなる。

まとめ

と、こんなかんじで、「正面から戦えば絶対勝てるけど、周りじゅう敵に囲まれてるし被害が発生し続けるし神経すり減る」という、プレイヤーにとってストレスフルで爽快感の無いゲーム展開が楽しめます。ゲームシステムは結構カジュアル寄りで、そんなに複雑なルールでは無いものの「ベトナム戦争っぽさ」が上手く表現されていて面白い……のかなあ。いや万人向けでは無いのは確かですが、間違い無く面白いと思います。

スマートじゃないウォッチを運用してみた感想

今年は何ぞスマートウォッチ元年とかいう話なので、逆張りでスマートじゃないウォッチを買ってみた。

手巻き懐中時計って奴ですな。

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表には「Отечественная война (祖国戦争)」の文字とソ連マーク。

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裏面は「Великая Отечественная 1941-1945 (大祖国戦争 1941-1945)」の文字とソ連マーク。

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フタを開けた図。スケルトン仕様。

第二次大戦戦勝記念品っぽい感じ。製造年は不明だけど、全体的な質感はそんなに古くない。

誤差について

時刻合わせ時に秒針を止めることが出来ないので大まかな合わせ方しか出来ないものの、だいたい一週間で一分程度の誤差が出ている。まあ、正確な時間知りたければ携帯電話でいくらでも見れるのであんまり意味は無いといえば無い。

失われた操作の「文法」

買ってすぐにはフタの開け方すら分からなかったし、バネ巻きの方法も見当がつかなかった。一応、箱はついていたもののマニュアル類は全く無い。

amazonの販売ページに簡易的な説明が書いてあるんで何とかなったけれど、本当に最初はどう扱ったものか手も足も出ない感じだった。これ、手巻き時計の全盛期には説明の必要もないぐらい常識だったんだろうなというか、ハードウェアが廃れることで、操作の「文法」が継承されなく成ったら本当にても足もでなく成る感じがする。

現在のスマホのタッチ操作や、PCのマウス操作、家庭用ゲーム機の操作なんかも、恐らく十年もしたらこんな感じの断絶が起きるんじゃ無かろうか。

運用してみた感想

これがなかなか面白くて、ネットで検索してみると、バネ巻きは毎日定期的に一定の時刻で行ったほうが狂いが少ないとかそういうTipsが色々出てくる。また、何かの小説だか体験記だかに書かれてあったと思うけど、胸ポケットにしまうのが一番狂いが少ないとのこと。
この辺、注意深い運用管理が必要な精密機械という感じだけど、何となく現在のスマホの扱いTips(過充電・過放電を避けるとか、バックグラウンドタスクの抑制とか)と通じるものが有る感じがする。

恐らくだけど、懐中時計が登場した初期の頃(17世紀ぐらい)、個人レベルでこういう精密機械を運用管理するっていうインパクトは、今のスマホとは比較にならないぐらい凄いものだったんじゃないだろうか。

そういや

ニュートンと贋金づくり―天才科学者が追った世紀の大犯罪

ニュートンと贋金づくり―天才科学者が追った世紀の大犯罪

に、「懐中時計兼大人のおもちゃ」という、どんな発想でそんなのを思いついたのか小一時間問い詰めたいような変態ガジェットについての言及があったけど、スマートウォッチとクラウドファウンディング真っ盛りな今日、これを超えるような変態ガジェットは果たして出てくるんだろうか。

時刻合わせの謎

よく昔の戦争映画や小説で、作戦開始前に小隊長が集まって全員で時計合わせをするような描写が有るけど、実際に手巻き時計を使ってみて気づいたのは「時刻調整中も秒針が止まらない時計がこの世に存在する」事。
いやこのソビエト時計だけなのかなと思ったら、結構世間一般的に秒針を止められない懐中時計は多かったっぽい。

時間、合ってますか?

テンプに及ぼすこの動作をさして、超高級メーカーは「余計なこと」と見なしているのです。
パテック・フィリップをご覧になってみてください。
メカニカルムーブはどれも秒針停止機能を備えていません。

時計のFAQ 秒針規制、ハック

ちょっと古い時計や、一部の高級腕時計には、秒針規制(ハック)のないものがあります。

秒針規制とは、時刻合わせの時に、秒針をストップさせて、合わせたい時刻から秒針をスタートできる機構の事です。

秒針規制の無いものは、機械式の誤差を考えると不必要と考えているからです。

秒針を止められないということは、一分程度の誤差は許容範囲内だったのか、凄い気になる。いやほんと、秒単位で時刻合わせが出来ない「時計」ってのは結構カルチャーショック。

電子レンジで光速を測ろうとしたけど上手く行かなかったでござるの巻 続き

今北産業

  • 電子レンジで光速を測定できるという話は物凄く疑わしい

あ、一行で終わった。



前回の実験
電子レンジで光速を測ろうとしたけど上手く行かなかったでござるの巻 - ka-ka_xyzの日記 電子レンジで光速を測ろうとしたけど上手く行かなかったでござるの巻 - ka-ka_xyzの日記

の続き。



追記(2015/02/24):

電子レンジで光速なんか測っちゃダメダヨー

ということで、もともとの実験レポのほうでも訂正が出てました。



概要

前回行った実験「電子レンジで光速を測ろうとしたけど上手く行かなかったでござるの巻 - ka-ka_xyzの日記」では熱感応紙を使用して電子レンジの過熱室内で加熱されるスポットを検出し、スポット間の距離が2450MHzの光の半波長(6 cm)の整数倍になるかどうかを確認することを試みた。
しかしながら、得られた結果としては過熱スポットを検出できたものの、スポット間の距離は理論値と一致していなかった。また、電子レンジ加熱室の中央部分で過熱スポットが検出されていなかったが、これは日常的に電子レンジで食品を加熱できているという結果とは矛盾するデータであった。

このようなデータが得られた原因として、電子レンジは水分を過熱するため、熱感応紙上の濡れ方が均一でないと、場所によって検出感度が変化してしまうという理由が考えられる。

今回の実験では、熱感応紙による過熱検出システムを改良することで、電子レンジ加熱室の中央部分に近い場所に過熱スポットを検出することに成功した。しかしながら、過熱スポット間の距離はやはり理論値とは一致しなかった。

また、本実験の結果および先行研究の再調査を行ったところ、過熱スポット間の距離を測定して光速を計測できるという主張は非常に疑わしいと思われる。

まてめそ

前回の実験 電子レンジで光速を測ろうとしたけど上手く行かなかったでござるの巻 - ka-ka_xyzの日記 ど同様である。ただし、熱感応紙の上をサランラップで覆うことで水分の蒸発を防ぎ、検出感度のムラを抑える。
また、熱感応紙を水から取り出した後で適度に水を切る必要がある。

結果

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fig. 1 30秒間過熱した熱感応紙1

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fig. 2 30秒間過熱した熱感応紙2

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fig. 3 30秒間過熱した熱感応紙3

距離の値については、実測した数値を使用し、0.5 cm刻みで丸めた。


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fig. 4 測定の例

そのため、画像上の距離との食い違いが生じている可能性がある。

熱陥凹氏の中央部分が電子レンジ加熱室のほぼ中央となるように設置しているが、実験によりバラつきが生じている可能性もある。

また、書く過熱スポットのサイズがより小さいタイミングで過熱を中止する事を試みたが、ほぼ一瞬で上記のサイズまでスポットが広がるため、断念した。

ほぼ同一条件で実験を行っているが、fig. 1の結果と fig.2, fig.3の結果にはかなりの違いが見られる。また、fig. 2, fig. 3についても、過熱スポットのパターンは類似しているものの、各スポット間の距離は理論値(2450MHzの光の半波長である6 cm)やその整数倍の値には当てはまらない。

考察

前回の実験で疑問であった、「加熱室の中央部分に過熱スポットが検出されない」と言う問題は実験手法の改善により解決できた。しかし、やはり各過熱スポット間の距離は理論値(2450MHzの光の半波長である6 cm)とは一致していなかった。この結果は、実験手法の問題では無く、実験の作業仮説そのものに問題がある可能性を示唆している。
そこで改めて先行研究を調査したところ、以下のサイトを見つける事ができた。

MICROWAVE MADNESS(:

このサイトではアクリル板を使用して過熱スポットの検出を行っており、実際に計測された過熱スポット間の距離について度数分布図を示しているが、やはり理論値である 6 cm 付近に度数のピークは認められない*1
今回の実験で得られた結果と一致する訳ではないが、過熱スポットの可視化を行うと整ったパターンとならず、各スポット間の距離もバラつきが出るという点については共通している。


また、以下のサイトでは電子レンジ内の過熱パターンがかなり複雑なものであると述べており、光速度を測定することは現実的ではないと結論付けている。

E&M field in microwave oven: more complicated than you think | Science | WEN'S Horizon

以下、結論を引用する。

VI. Conclusions

E&M field in microwave oven is analyzed. It is not a simple plain wave or a 1D standing wave. Thus the method of measuring speed of light by measuring 6cm apart hot spots does not make sense. Instead, the method by measuring “components” of wavelength is more reasonable. However, it is valid only in the ideal resonant cavity approximation. In a real microwave oven, all sorts of perturbation can fail this method.

適当訳

VI. 結論

電子レンジの電磁フィールドについて解析を行った。これは単純な一次元の定常波では無い。よって、過熱スポット間の距離 6 cm を測定することで光速度を測定するという手法は意味が無い。そのかわり、波長の"コンポーネント"を測定することがより合理的な方法である。しかし、理想的な共振空洞近似にある場合だけで有効である。現実の電子レンジでは、あらゆる種類の摂動によってこの方法は失敗し得るであろう。

このサイトの内容については、正直な所筆者の理解の範囲外である部分が大きい。しかし、電子レンジの電磁フィールドは単純な定常波ではなく、様々な条件により複雑に変化するという主張は、今回の実験結果を見ると妥当であると判断できる。


さらに、もともとこの実験を行うきっかけとなった下記の記事では

チョコレートをレンジでチンして光の速さを計算してみる

ちなみに本実験はターンテーブルつきのレンジだと成立しません。今回はターンテーブルがないタイプのレンジを使いましたが、回転皿つきの機種をお使いの場合は説明書の注意に従って取り外して下さい。

とあるが、ターンテーブルが無い電子レンジでは加熱ムラを避けるために機械的にマイクロ波の照射角を変更するといった機能が組み込まれているようである。

電子レンジのターンテーブル - @nifty教えて広場

一方、現在主流になっている、フラットタイプの物は、アンテナ(マイクロ波を出す部分)を動かす事により、食品を動かさずともムラのない温めをできるように、と開発されたものです。

この背景にはセンサーの進歩も見逃せない要因です。
ターンテーブルタイプの物は、元々は時間を自分で合わせて、食品が温まろうが温まらまいが、時間が来るまで動き続けるものです。
この当時の物は「センサー」等と言う物のは装備されていませんでした。
これが少し進化し、「重量センサー」「湯気センサー」等を装備する事により、レンジが自動的に運転時間を決めてくれるようになりました。
しかし、この「重量センサー」「湯気センサー」では、「重い器(軽い器)に少量(大量)の食品を載せて運転した時」や「湯気の出にくい(出やすい)食品」を調理する際の、温めすぎや、その逆が当たり前のように起こっていました。

そこで、メーカーが開発したのが、「赤外線温度センサー」です。
これは、食品そのものの温度を遠隔から、しかも秒単位で計る事ができるセンサーです。

この遠赤外線温度センサーとアンテナが動く事で、温めムラ、温め過ぎ、温まらない等の不満を解消できるようになり、同時にお好みの温度まで運転する事ができるようになったわけです。

つまり、短時間で見れば定常波により局所的な過熱が行われるものの、過熱スポットは常に移動するため、長時間で均してみれば均一に加熱されるはずである。もちろんQAサイトの記載内容が全て信頼できるかというと疑問ではあるがターンテーブル無しで加熱ムラを防ぐために、このような仕組みが存在していると考えることは妥当であると思われる*2
元の実験での加熱時間(20から30秒)で過熱スポットの移動が起きるかどうかは電子レンジの機種に依存するはずだが、電子レンジ側の機構により過熱スポットが移動する可能性を排除できない。

これらの理由により、電子レンジで光速度を測定するという手法、およびそれにより得られる実験結果については懐疑的に見ざるを得ない。


あらためてまとめ

論文文体に飽きたので元の文体にもどってみます。

色々自分で実験してみた結果として、やはりこの「電子レンジで光速を測定する」っていう話は裏付けの無いインターネットフォークロアっぽい気がします。少なくとも自分が見つけることが出来た肯定的な結果は、全てチョコレートやらマシュマロやらを使った実験で、どうにもこー厳密さに欠けるというかいくらでも結果をチェリーピック出来そうな感じです。
また、もしかしたら電子レンジによっては測定条件次第で過熱スポット間の距離が6 cm程度になるものも有るかもしれませんが、そこからダイレクトに電磁波の波長が6 cmであると言えるかどうかっていうと無理っぽい。
あとは、過熱スポットは点じゃなくてある程度の面積を持ってるので、「スポット間の距離が6 cmで有るべきだ」と予断を持ってたら、予断に合わせて測定してしまう可能性もある。

まあ、他サイトの引用だけで「証明完了、わははははは」とか書くのもあんまし科学的じゃないよなーということで実験を繰り返した次第。



追記(2015/02/24)補足


電子レンジで光速なんか測っちゃダメダヨー

加熱むらが定常波に由来するもので、それが円に沿うならば、その間隔は波長由来でない可能性が高い。マグネトロンからのマイクロ波を伝えるアンテナの挙動に依存するはずです。

なるほどわからん(だって化学工学→生物って経歴だったんで電磁波とか扱うのむりぽ)。
いやー、でも久々の実験は楽しかったなあ。


*1:この点について実験者は、検出手法の問題である可能性があると述べている

*2:ちなみに、本実験はターンテーブル式の電子レンジを使用している。熱感応紙の固定方法については前回の記事を参照

電子レンジで光速を測ろうとしたけど上手く行かなかったでござるの巻

追記:(2014/02/22): 続編書きました。


電子レンジで光速を測ろうとしたけど上手く行かなかったでござるの巻 続き - ka-ka_xyzの日記

続編から読んだほうが良いかも。




追記:(2014/02/24):


電子レンジで光速なんか測っちゃダメダヨー


ということで、もともとの実験レポのほうでも訂正が出てました。



概要

チョコレートをレンジでチンして光の速さを計算してみる チョコレートをレンジでチンして光の速さを計算してみる

とか
電子レンジ+チョコで「光の速度」を確認する実験 « WIRED.jp 電子レンジ+チョコで「光の速度」を確認する実験 « WIRED.jp
とか、バレインタイン時に定期的にネタになる、電子レンジでチョコを溶かして光速度を測定する話について、自分でも実際にやってみようと思った。ただチョコの溶け方を指標とするのはどうも画像としてわかりにくいので、FAXの熱感応紙を使用して加熱される部分の特定を試みた。
しかしながら、実験を行った結果、想定される結果を得ることが出来なかった。後で再現実験を試みる人のために、一応レポートを残しておく。

あ、あと実験の理論的背景については過去の報告( チョコレートをレンジでチンして光の速さを計算してみる )を参照。

まてめそ!*1

電子レンジ

NEC MC-SC1 (96年製)を使用した。周波数は2450MHzであり、過去の報告( チョコレートをレンジでチンして光の速さを計算してみる )と同じである*2

熱感応紙および過熱検出システム

熱感応紙の製造元は不明。洗面台に水を張り、その中に熱感応紙を浸してまんべんなく水になじませた後に余計な水分を落として、プラスチック製のフタ(Microsoft Surface Pro3用タイプカバーの箱を包装していたもの)に貼り付けた。このフタの横幅は上記電子レンジの加熱室の横幅内径とほぼ一致しているため、熱感応紙の回転を抑え、一定の位置を保持することが出来る。また、このフタは下部に折り曲げが入っており、熱感応紙と電子レンジのターンテーブルとが直接接触して電磁波以外の影響で加熱されることを防ぐ役割を果たす。

結果

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「レンジ強」で20秒間加熱した熱感応紙

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「レンジ強」で40秒間加熱した熱感応紙(20秒過熱のものとは別の熱感応紙を使用している。)


加熱時間を長くすると発火する可能性もあるため、40秒程度で過熱を止めている。
画像を見て分かるように、水に浸した熱感応紙を使用することで加熱される部分(以下、過熱スポット)を可視化することに成功している。各過熱スポットの間隔は約18~19 cm程度と思われるが、家にあるモノサシの測定レンジから外れているため、正確な値を取得することが出来なかった*3

考察

今回実験で使用した電子レンジの周波数は過去の報告( チョコレートをレンジでチンして光の速さを計算してみる )と一致しており、過熱スポットの間隔は6 cm程度となるはずである。しかしながら、実際に得られた過熱スポットの間隔はその数倍となる18 ~ 19 cm程度であった。

過去の実験と異なる結果が得られた原因としては以下の様な理由が考えられる*4

  • 電子レンジが古すぎて周波数が安定してない説
  • もっと加熱したら6 cm間隔のスポットも得られるんじゃないか説
  • どう考えても家の光速度が悪い説

おわりに

96年製ってことはもう20年モノか・・・いーかげん電子レンジ買い換えないとなー。


追記

いやチョコもらってるから。チョコ無いから熱感応紙使った訳じゃ無いから。

追記2

もしかしたら金属製のターンテーブルが何か悪さをしてるのかも・・・と思ってターンテーブルを外した状態で同じ実験をやってみた。

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加熱時間は15秒程度。
プラスチックのフタが底面につかないように高さ5cmのダンボール円柱*5で四隅を下から支えた状態で実験しているので、底面からの高さとしては前の実験と同じぐらいのはず。

うーん。過熱スポットの出現パターンが全然違うし、幾何学模様を描く訳でもない。そもそもスポットとスポットの間の距離は8 cm程度でやっぱり理論値とは合わない。実に微妙。あと、そもそも普通に電子レンジとして使用するときは当然ターンテーブルが入った状態で動かすわけで・・・

電子レンジ側に問題があるのか、濡らした熱感応紙を使う方法に問題があるのか、結論としてはよく分からない。均一に加熱されずに局所的に加熱されてるので確かに定常波っぽくはあるけど・・・

*1:Materials and Methods の略。平たく言うと実験の「レシピ」

*2:電子レンジなんで当たり前だけど

*3:というかめんどかった。

*4:もちろん、あんまり根拠は無い。適当である

*5:トレペの芯を半分に切ったもの