再現可能性の話と捏造の話は切り分けようず

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STAP細胞が本当ならノーベル賞に値するのだが、今のところ、再現したという報告がないため、怪しいという話が出始めている。
これに関しては小保方晴子の側に証明する義務があり、それが出来なければ捏造となる。

このへんちょっと引っかかる所です。

結果を再現できないという段階では、まだ(意図的な)実験結果の捏造や改ざんと断定することは出来ません。この段階ではまだ「捏造が疑われるから生データ公開しろ」と小保方氏や理研へ強く要求できる程度でしょう。この段階で意図的な捏造と断定すべきでは無いと思います*1

(意図的な)捏造により得られた結果は再現不能ですが、再現不能なデータが捏造とは限りません。

例えば論文で省略されがちな実験操作の微妙なコツで結果が大きく左右されることもありますし、研究者が把握していない未知の条件に依存していることも可能性としては有りえます。また、研究者の観察者バイアスにより(意図的にでは無いにせよ)誤った結果が発表されたり、単に「試料取り違えてましたてへぺろ」的な失敗であるかもしれません。

再現可能性の問題と、(意図的な)捏造かどうかという問題は切り離して考えるべきでしょう。

論文で報告された内容が意図的に捏造されたのかどうかを判定するには、公開された生データ(実験ノート、未加工の画像データ、実験で使用した後冷凍保存されたサンプル等々)の精査が必要となります。生データと論文の内容に不一致が有ったり、生データに対して不自然な加工が施されていたり、あるいは有るはずの生データが存在しなかったり・・・といった証拠を、第三者が積み重ねる必要があります(まあ当事者が自分の不利になることを検証しても意味無いですしね)。


まあ、捏造であろうが無かろうが、再現できないデータはどのみち消えていくのです。

上のグラフは

幻の大発見―科学者たちはなぜ間違ったか (朝日選書)

幻の大発見―科学者たちはなぜ間違ったか (朝日選書)

より引用。一時期存在が確実視されていたN線についての論文発表数の経時変化(右側)。N線の「発見」は捏造ではないものの、観察者バイアスにより一流の研究者たちが存在しないはずの結果を観察してしまった典型。

*1:追記: あくまでSTAP細胞化現象についての話であって、過去の電気泳動バンド画像使い回しの件については、今後の再現結果がどうあれ追求はされるべきだと思います。