「未完のファシズム」感想

未完のファシズム: 「持たざる国」日本の運命 (新潮選書)

未完のファシズム: 「持たざる国」日本の運命 (新潮選書)

昭和の軍人たちは何を考え、一九四五年の滅亡へと至ったのか。 天皇陛下万歳! 大正から昭和の敗戦へ――時代が下れば下るほど、近代化が進展すればするほど、日本人はなぜ神がかっていったのか? 皇道派 統制派、世界最終戦論、総力戦体制、そして一億玉砕……。第一次世界大戦に衝撃を受けた軍人たちの戦争哲学を読み解き、近代日本のアイロニカルな運命を一気に描き出す。

第一次大戦後、「来るべき総力戦」を戦うための試行錯誤が「昭和の暴走」を招き、日本陸軍を、ひいては日本を泥沼へ引きずり込んでいく・・・という、まとめると「本当の国力と向き合えますか?」といった内容。

第一次大戦後から第二次大戦までの「来るべき総力戦をどう戦うか」というのは日本に限らず各国で模索されていたテーマなので、日本以外の国についても総論的なものを読んでみたいです。第一次大戦で「総力戦では勝てない」ことが決定的となったドイツ、工業力に問題を抱えるイタリア、第一次大戦で余りに多くの人命を失ったゆえに政治的に総力戦を行えなくなったフランス・イギリス、革命により様々な内政・外政問題を抱え込んだソ連・・・といった国々がどのような問題提起を行い、それに対してどのようなソリューションを選択し、現実の第二次大戦でそのソリューションがどのように成功・失敗したのかという本って面白そうだとおもうのですが。(戦術レベルだと「歴史群像」の連載「各国陸軍の教範を読む」あたりがよくまとまっていて、早いとこ単行本にして欲しいところです。)

結局のところ第二次大戦ではアメリカの(他の国と比べると桁違いに隔絶した)生産力を利用できたかどうかという点でほぼ決してしまった感がありますが。