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東京新聞のよく分からない記事「東京新聞:ホウ酸除去 東電動かず:社会(TOKYO Web)」

雑記

東京新聞:ホウ酸除去 東電動かず:社会(TOKYO Web) 東京新聞:ホウ酸除去 東電動かず:社会(TOKYO Web)

 福島第一原発の高濃度汚染水を処理した水で、核分裂が連鎖的に起きる臨界を防ぐため投入された化学物質のホウ酸が問題視されている。放射性物質を含む処理水は、敷地内のタンクで蓄えきれなくなりつつある。海への放出を迫られることも想定し、これ以上環境を汚さないよう最大限の努力をするのが当然。一方、ホウ酸も有害だが除去は容易にできる。しかし、東京電力は濃度が低いとして、対策に乗り出す気配を見せていない。(深世古峻一)
 現在、福島第一に用意された十四万トン分の処理水タンクは、三月中には満杯になる見込み。東電は新たに四万トン分のタンクを準備中だが、増設には限りがある。東電は「安易な海洋放出はしない」としているものの、放出の可能性は否定していない。
 ホウ酸は人が吸い込むと吐き気や下痢などの症状が起きる。処理水に溶け込むホウ酸は百五トン。ゴキブリ駆除に使われるホウ酸団子に換算すると、約二百十万個分の量だ。仮に海洋放出となると、漁業関係者の理解を得るにはあまりにも多い。

今後処理水を海洋放出する可能性があるが、処理水中のホウ酸を除去しないで良いのか・・・って内容の記事です。で、処理水の海洋放出を考える上で、ホウ素が重要な要素となりそうなのかどうか調べて見ました。

で、ホウ素の濃度は?

ぶっちゃけ、塩水だって濃度が高ければ毒なわけで

処理水に溶け込むホウ酸は百五トン。

と書かれても、実際にどの程度の濃度なのかが分からないと環境への影響や毒性については何も言えないわけで・・・という訳で、上記記事の内容を基に、ホウ酸(ホウ素)濃度を概算してみます。あくまで桁が合ってればいいという考えでの取り敢えずの計算ですが、基本的には中学ぐらいにやった「水に砂糖をXX グラム溶かした時の濃は・・・」と同じです。
まずは、現時点での処理水総重量について。記事中でははっきりと書かれていませんが

現在、福島第一に用意された十四万トン分の処理水タンクは、三月中には満杯になる見込み。

という記述があるため、とりあえず現時点での処理水総重量については10万t、12万t、14万tの3つのケースを仮定します。
次に、処理水の容量を計算します。記事中にもあるようにホウ酸を含んでいますが、ぶっちゃけ10万tレベルの水に溶けた100tレベルの溶質の量なんて誤差範囲内なので無視して、単純に水の比重を考えます(処理水には原発事故により漏れた放射性核種も含まれますが、重量を計算する上では誤差にも満たない量なんで無視します)。
また、水の比重も温度によって変わります(参照)が、基本的には水1 t = 1000 Lとします。
ホウ酸の量としては。記事中の記述をそのまま使用し、ホウ酸(H3BO3)の総量を105 t = 105*1000*1000 mgとして濃度を計算します。
さらに、ホウ酸(H3BO3:分子量61)に含まれるホウ素(分子量10)だけを見て、ホウ素濃度についても計算してみます。

処理水総重量(t) ホウ酸濃度(mg/L) ホウ素濃度(mg/L)
10万 1.05 0.17
12万 0.88 0.14
14万 0.75 0.12

まあ、誤差は有るかと思いますが桁的にはそう間違ってないかと。

で、ホウ素濃度の環境基準は?

とりあえずぐぐってみます。

食品安全委員会による「清涼飲料水評価書 ホウ素」(注:pdf)によると、飲用水については

・国内法令上の水質基準値 1.0 mg/L(ホウ素の量に関して)
・EUによる水質基準値 1 mg/L
・米国環境保護庁 基準値なし
・WHOによる水質基準ガイドライン 0.5 mg/L

とのこと。ホウ酸(H3BO3:分子量61)ではなく、ホウ素だけを見たときの濃度についての基準のようです。
さらにこちらの記述によると

2001年に水質汚濁防止法(1970)が改正され、排水基準に「ホウ素及びその化合物」が追加された。基準値はホウ素10mg/L(海域に排出の場合230mg/L)と定められた。

とのこと。元記事中に

 だが、東電の反応は鈍い。担当者は「低濃度なので除去する必要はない」を繰り返すのみで、ホウ酸は毒性も弱いとも強調した。
 環境省も「放出となれば水質汚濁防止法の規制をクリアしているのかを確認する必要があるが、今のところ除去が必要な濃度ではないと聞いている」と静観する構えだ。

とありますが、まあ上の計算から見ても「何か問題でも?」という構えは妥当でしょう。

じゃあ海水中に含まれるホウ素濃度は?

海水の組成

によると、海水中のホウ素濃度は平均4.50 mg/kg。
海水10万t(10,0000t * 1000 kg/t = 100000000 kg)あたり、450トンのホウ素が含まれるはずです。
元記事には

ホウ酸は人が吸い込むと吐き気や下痢などの症状が起きる。処理水に溶け込むホウ酸は百五トン。ゴキブリ駆除に使われるホウ酸団子に換算すると、約二百十万個分の量だ。

とありますが、同じ理屈でその辺の海水についても結構な量のホウ素が存在するわけで・・・深海深層水不買運動でもすべきなんですかね?

この章追記:
この辺を見ると、海水中のホウ素はほぼホウ酸の形で存在しているようです。
海水中のホウ酸濃度は0.026 g/kg. 海水10万トンあたり2600トン。東京新聞によるホウ酸団子換算だと約5200万個。海水マジヤバイ(DHMO的な意味で)

じゃあ処理水をガンガン海洋投棄しておk?

そんな事は書いてません。
仮に海洋投棄を行うのであれば、現状で優先すべきは処理水中に含まれる放射性核種の除去(特に現状では処理を行なっていないと言われている核種について)であり、環境基準を満たしている(しかも自然界中の濃度より低い)化学物質についてことさら問題視する必要が一体何処にあるのか、この記事からは全く見て取れない・・・ということです。
(例えば、東電が発表しているホウ素投入量が実際とは大きく異なるのではないか?といった情報があれば、環境への影響は大分違ってくると思いますが、記事にはそういう記述はありませんし・・・)