結晶銀河 (年刊日本SF傑作選)

結晶銀河 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)

結晶銀河 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)

収録作の中から気になった作品について感想。


・冲方 丁「メトセラとプラスチックと太陽の臓器」
日常目線で語られる進化の大飛躍。


小川一水「アリスマ王の愛した魔物」
まあ実際米軍の目指すRMAの究極の姿ってのはこんな感じかもね。人の命をモリモリと食べつつひたすら計算を行う施設というイメージが何とも魅惑的。


・伴名 練「ゼロ年代の臨界点」
お嬢様学園の変りダネ三人組ってだけで条件反射的に川原泉笑うミカエル」の絵で脳内再生される・・・・。なんとも言えない脱力感とオチが面白い。


長谷敏司「allo, toi, toi」
ティプトリーJr.の「ラセンウジバエ解決法」(「星々の荒野から」収録)では「(うろ覚え)内分泌腺により決定される」とされている衝動が「社会性」というキーワードで解剖されていく・・・のかな。考えてみると「ラセンウジバエ解決法」では「正常な」性的衝動とこどもに対する「異常な」性的衝動が切り分けられて無いんだな。それ以前に「愛情」と「性的衝動」が分離不可能なものとして書かれてたような・・・・改めて読み直して比較したい。


・眉村 卓「じきに、こけるよ」
日常生活にふと入り込む怪異について淡々と語る一人称短編。
産業士官候補生」や「滅びざるもの」のような激烈な体制内上昇志向主人公とその挫折というテーマを書いた人が、こういう方向性で書くようになったというのは、老成した・・・と言っていいのか、ふと寂しくなる。それはそれとして淡々とした自分の「死」への眼差しが何とも言えず感動的。


・酉島伝法「皆勤の徒」(第2回創元SF短編賞受賞作)
椎名誠風の異世界名詞+テラフォーミングSFってことでいいのかな。癖があり過ぎる気もするけど、何のかんの言って面白かった。