二人の科学者

科学コミュニケーションとかリテラシーってなんだろーなー・・・・。と思ったのでメモ。


学習院大学理学部物理学科 田崎教授による解説
[PDF] 田崎晴明 ベクレルからシーベルトへ [PDF]   田崎晴明 ベクレルからシーベルトへ

中央大学 武田教授による解説

武田邦彦 (中部大学): マイクロシーベルトを測ってベクレルを推定できるか? 武田邦彦 (中部大学): マイクロシーベルトを測ってベクレルを推定できるか?

個人的には武田教授は研究者というよりアジテーター感があってあんまり好きではないんですが、それはひとまず置いておくとして、二人とも

「地面に一様に放射性物質が分布しているとき、地面からある高さでの放射線の強さはどうなるか?」

という問題を解説しており、しかも結論としてはほぼ同様の式(田崎教授の解説だと、式4.7あたりが武田教授の結論に該当するはず)を出しています。
しかし、比べてみると書き方というかスタンスの違いが色々と面白いので紹介。

田崎教授の場合

一般向けの解説ではないが、理科系の大学一年生レベルの物理と数学の予備知識があれば十分に読めるよう配慮したつもりである。

と、理系学生向けの解説であることを明示しています。内容も一般的な「解説」というより微分積分使いまくりな「試算」といった方が良い内容です。この手のことを最後にやったのはもう10年ぐらい前になるので四苦八苦しながら読みといてみましたが、平明な論理で書かれており、計算過程が順を追って説明されているため分かりやすいです。

武田教授の場合

農業の方は作物を植えることができるかと迷い、主婦はスーパーで売っているホウレンソウが放射性物質に汚染されているか判らずに迷います。

と、理系向けではなく一般人向け(と書くと「理系は一般人じゃないのか」とか言われそうですが、言葉のあやってことで)の解説として書かれています。
正直、内容としては酷いというか、(今のところ)導出過程が全く書かれていませんし

これを簡単に示すとすでに、ICRU56などで示されているとおり、

とか言われても"ICRU56"というのが一体何なのか、その資料のどの箇所で式が示されているのかといった情報も全く無い。つまりどういう根拠で結論を出したのか、全く検証できない内容です。こんな内容で学生が実験レポートを提出したらその場で突っ返されそうな感じですが、でも結論は平明で分かりやすいです。

結論?

ぶっちゃけ言ってしまうと、普通の人々が求めてるのは「分かりやすい結論」であって、それを導出する過程の正確さについては「大学教授」という肩書きで担保される(実際には担保される訳が無いんですが、雰囲気的に担保されればOK)訳で。そういう意味で武田教授は上手くニーズを捉えてるなあという気がします。
雰囲気的に正しければOKという判断がまかり通ってしまうという事態は非常に不味いと思いますが、普通の人が科学的問題に対して結論への導出過程を追っていくというのはやはり非常に厳しいわけで。論理的思考力が有れば大丈夫と言われても、判断基準として参照文献を見ようとしたら(大学からアクセスしてない限り)大抵サブスクリプション契約を求められる状況ではやはり無理筋でしょう。

ってことで今のところ結論は無いです。ただのメモ。