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簡易携帯線量計測定者の憂鬱(その2)

雑記

前回はこちら

前回、簡易携帯線量計で周囲の放射線量(Gy/hr≒Sv/hr)を測定するにはかなりの努力が必要になるという結論を出しています。では実際に計測値(カウント数)にどの程度のバラツキが出るのか、調べてみましょう。
(個人的には簡易携帯線量計では、首都圏で報告されているような0.x〜0.0xμSv/hr程度の放射線量を正確に測定するのはかなり無理があると思います。それでもまあ、自分の持っている道具がどの程度信頼できるのかについては興味があるので敢えてやってみてます。)

カウントのばらつき具合を確認してみる

目的

個々の原子からβ・γ線が放出されるタイミングは完全にランダムなはずです。また、GM管のチューブ内を通過する放射線を全てを検出出来るわけではありません(特にγ線についてはかなり感度が落ちるはず)。さらに、今回使用するのは簡易携帯線量計なので、お値段なりの粗雑な回路設計の影響でノイズが入る可能性も否定できません(今回の場合は経年劣化も考慮する必要があるかも)。
これらの要因により、短時間の測定ではそれなりのバラツキが見られ、測定時間を長くすることでバラツキが均されて正確な測定値を得られると予想されます。

そこで、どれだけの時間や回数をかければ信頼できる測定値を得られるのか、試してみることにします。

手法

使用する簡易携帯線量計は前回と同様DX-1
測定場所は木造家屋内、床上1m程度。地面からの距離は約1.5m程度(未計測)。この条件では床面や地面からのβ線については考慮しなくてもいいはずです。本来であれば、きちんと線量が確定しているγ線源が用意出来ればいいんですが、そもそもそういうソースを用意できる人は簡易携帯線量計なんて使わないという罠。

以下のパターンでカウントの計測を行いました。

  1. 15秒間継続してカウントを取得×20回
  2. 30秒間継続してカウントを取得×20回
  3. 60秒間継続してカウントを取得×15回

それぞれの結果について、一分あたりのカウント数(cpm, count per minute)に換算し、傾向やバラツキを見てみます。

結果

表1

データ 15秒計測 30秒計測 60秒計測
平均 16.8 19.1 19.73
中央値 16 20 19
最大値 28 32 26
最小値 8 6 13
標準偏差 5.13 6.44 4.33

標準偏差以外の単位は1分あたりのカウント数(cpm)

図1. 計測時間ごとの度数分布
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星マーク(★)は60秒計測時の中央値(19cpm)を含む階級。この値が階級の中央に来るように階級をとっています。


DX-1マニュアルに記載されていた、Cs-137由来のγ線に対しての"1μSv/hr≒330cpm"という変換係数が正しいと仮定した場合(実際には計測器の個体差や経年劣化等で変化するはず)の線量は以下のとおり。

表2

データ 15秒計測 30秒計測 60秒計測
平均 0.05 0.06 0.06
中央値 0.05 0.06 0.06
最大値 0.08 0.1 0.08
最小値 0.02 0.02 0.04

単位はμSv/hr。一応、所在地は埼玉南部。

追記:簡易校正の結果では、19cpmで約0.04uSv/hr程度。かなり下限に近い領域での測定であるため、あんまり厳密に正しい数字は出ないようです。ただ、0.04-0.06uSv/hr程度というのはかなり確か。

考察

このばらつき具合を見ると、数十回測定を行って中央値を出さないと測定結果には信頼が置けないような感じです。元々カウント数が小さいので多少のズレは余り問題になりそうにないですが・・・。ただ、15〜30秒の測定を行った場合には、最大値と最小値の比率が4〜5倍ぐらいになっているので注意(追記:15〜30秒というと体感時間だとかな〜り長めですが、一回こっきりの測定値は結構当てにならないという意味)。

このバラツキが、使用した線量計の個体差によるものなのか、DX-1全体でも当てはまるのか、GM管を使用した線量計全般で同様の傾向が出るのか、NaIシンチレーションカウンターや半導体式のγ線センサではどうなのか・・・・といったことは分かりません。
DX-1が本来想定しているレンジの1〜2桁下の線量を測定しているので、本来のレンジだと無視可能な程度の(放射線とは無関係な)バックグラウンドノイズがバラツキの原因となっている可能性もあります。
まあ、校正によって線量−時間あたりのカウント間の変換係数を確定する前に、そもそもカウント自体にかなりのバラツキがあり得るということは認識しておくべきだと思います。

・・・・もうちょっと現代的なデジタル表示式の線量計だと、このへんのバラツキを均してデジタルな数値を表示してると思うけれど、どう処理してるんだろうか。気になる。

結論としては、前回と変わらず「正しい放射線量を測定するにはかなりの努力が必要。割りきって使うことが重要」でいいと思います。

追記(20110529)

上で見たように同じ装置・同じ場所・同じ人・ほぼ同時刻で測定してもかなり幅が出る可能性が有るんだけれど、↓の構想って大丈夫なのかねえ。

Togetter - 「@fladdictさんがソーシャルガイガーサービスを企画しはじめたようです」 Togetter - 「@fladdictさんがソーシャルガイガーサービスを企画しはじめたようです」

個人的には、測定の結果判明したホットスポットっぽい場所に旗を立てていくようなサービスであれば結構行けると思うけれど、測定値をポストするようなサービスだとかなり困難だと思う。
異なる計器・異なる人の測定結果を統計的に解析したとして、果たして意味のある結果が出てくるのか(そもそも同一地点で統計処理が可能な数の測定結果が出てくるのか)