ポストヒューマンSF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー) 感想

前回取り上げたときには、絶賛だけしといて何も内容がなかったので追記。

スティーヴ・フィーヴァー ポストヒューマンSF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)

スティーヴ・フィーヴァー ポストヒューマンSF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)

収録作一覧がハヤカワオンライン上に無かったので、amazonのコメント欄からコピペ。

死がふたりをわかつまで(ジェフリー・A.ランディス)
技術の結晶(ロバート・チャールズ・ウィルスン)
グリーンのクリーム(マイクル・G.コーニイ)
キャサリン・ホイール[タルシスの聖女](イアン・マクドナルド
ローグ・ファーム(チャールズ・ストロス)
引き潮(メアリ・スーン・リー)
脱ぎ捨てられた男(ロバート・J.ソウヤー)
ひまわり(キャスリン・アン・グーナン
スティーヴ・フィーヴァー(グレッグ・イーガン
ウェディング・アルバム(デイヴィッド・マルセク)
有意水準の石(デイヴィッド・ブリン)
見せかけの生命(ブライアン・W.オールディス)

まずは「スティーヴ・フィーヴァー」とは関係無い所から話を始めると・・・グロスマン「戦争における「人殺し」の心理学 (ちくま学芸文庫)」には人を殺すことに対する心理的障壁の高さを示す実例が、コレでもかコレでもかと言わんばかりに提示されている。戦場という”殺さなければ殺される”場で、道徳的にも敵を殺すことが正当化されている場合であっても、大多数の人は直接的に他人を殺すことに強い心理的ストレスを覚え、殺した後にはPTSDが残ってしまう。おそらく生得的に、脳のウェットウェアには「他人を傷つけるな」という規則が刻みつけられているらしい。まあ、極少数そういう心理的ストレスを感じない人もいるらしいけど。恐らく、"愛"という感情も同様に脳というウェットウェアにビルトインされてる部分が強いように思える。
で、「スティーヴ・フィーヴァー」に話を戻すと、収録作全般で目立つのは"愛"(恋愛だけじゃなくて家族愛とか、自己愛とか諸々を含む)をキーワードにした作品が多いこと。(これは巻末解説にあるように、SFマガジンの企画「ラブ・メタモルフォス ハイテク時代の愛の形」から発展した企画とのこと)
脳というウェットウェアにビルトインされた"愛"という機構が、自我を他の媒体にコピーされてしまったり(「死がふたりをわかつまで」「脱ぎ捨てられた男」「グリーンのクリーム」「キャサリン・ホイール」?「ウェディング・アルバム」)、脳の能力が飛躍的に強化されてしまったり(「ひまわり」)、あるいは人が生物学的な意味での人類でなくなってしまう(「死がふたりをわかつまで」「見せかけの生命」)とき、いったいどうなるのか・・・こういう(今の所)SFでしか書けないテーマを扱う作品が詰まった短篇集。これは買うしか無い。