デマとかいろいろ

山本弘のSF秘密基地BLOG:「谷岡敏行氏殉職事件」の拡散過程【都市伝説】 山本弘のSF秘密基地BLOG:「谷岡敏行氏殉職事件」の拡散過程【都市伝説】

について、気になった部分が色々とあったのでメモ。

デマの広がり方について

デマの広がり方(流布量)について、こんな理論があるらしい。

デマの広がり方について、アメリカの心理学者オルポートとポストマンは「R〜I*A」という有名な概念式を提唱している。Rは「デマの流布量」、Iは「重要度」、Aは「あいまいさ」だ。この式は、デマの流布量が、デマを聞いた人にとってのその問題の重要度と、その論拠のあいまいさとの積に比例することを示している。

パニック人間学 (朝日文庫)」より引用。
引用元は明記されていないが、調べた限りでは"Psychology of Rumor (1947), Gordon Allport and Joseph Postman"らしい。こちら(隅田川。 - キリハリ ヌキガキ)に該当部分の翻訳あり。

正直、こんなホットな話題について政府が情報公開を絞る(しかも、完全に非公開とするのではなく、中途半端に事実を認めた上で証拠の提示を避けたり、曖昧なうわさ話を掻き立てるような限定公開を行ったりと火に油を注ぐ)ような対応をしてしまった以上、今回のような「殉職デマ」に限らず、何らかのデマが広がることは避けられなかったかと。

今回の問題で特異なのは、本来デマを抑えるために「しっかりした」情報を公開すべき(という建前が存在価値なはずの)マスコミがデマの流布源になってること。いやまあ、昔から健康食品や疑似科学絡みでいろいろと有ったけれど、今回のように国際情勢が絡む政治問題でここまで根拠のない状態でデマを煽ったというのはやはり異常に見える。(もちろん、マスコミ側から見ると「XX氏の発言を報道しただけであって、積極的にデマを流布したわけではない」という認識なんだろうけど、「今のところこの発言に根拠は全く存在しません」という部分をちゃんと強調してたのかというと疑問な訳で)

デマに踊らされないための心構えとその限界

上で引用した「パニック人間学」では、デマに踊らされないための対応として

デマの全てを消し去るのは不可能として、減らす手立てはないものか。
心理学や災害科学の研究者のほとんどが第一に「確認作業」をあげる。

とある。山本氏の言う

「疑問に思ったらまず検索」
「怪しい話は裏が取れるまでは信じない」

 デマの加害者にならないようにするには、この2点を心がけるべきだろう。

というのも、上の「確認作業」と同じ主張だろう。

ただ、元ソースがそもそも非公開である以上、確認を行おうにも曖昧な情報しか存在せず、ネットで検索しても憶測が飛び交い、マスメディアでは噂を煽る(あるいは、噂の存在自体を言及しない)という状況では「確認作業」にも限界がある気がする。「裏を取る」にしても同様。

ネットの検索で事実確認を行って、曖昧な憶測から信頼できそうな情報を見つけ出すにせよ、Youtube暴露事件が発生するまで元ソースが完全に非公開であった以上は”信頼できそうな情報”といっても単なる憶測に過ぎず、信頼性という意味では「殉職デマ」と50歩100歩でしかない。

まあ、今回の事件はまだ自分の生命・財産に直に関わるような問題では無かったから良いものの、例えば大震災に巻き込まれて情報の入手量や入手方法が非常に制限されている状態に置かれたとき(おそらくネット・携帯は数日間は絶望的だろう)自分が意図せずに(あるいは善意で)「デマの加害者」となる危険性を過小評価すべきでは無いと思う。

自分の生命・財産が脅かされている状況で、待ったなしの判断を迫られたとき「怪しい話は裏が取れるまでは信じない」を貫けるかどうか、自分自身は正直なところかなり難しいと思う。貫いたとして、「裏が取れた」時点で手遅れになっていれば無意味だし。