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民間軍事会社の内幕

読書

民間軍事会社の内幕 (ちくま文庫 す 19-1)

民間軍事会社の内幕 (ちくま文庫 す 19-1)


自分が民間軍事会社(PMC)について興味を持ったのは、確か「世界の危険・紛争地帯体験ガイド (講談社SOPHIA BOOKS)」でエグゼクティブ・アウトカムズについてのアレコレを読んでからだったろうか。
アフリカ紛争地帯でダイアモンド鉱山の安全確保(と、オマケで内乱の収束)に、正規軍顔負けの活躍を見せつけた彼らも1998年には解散。一方で、ユーゴ紛争などで正規軍の中でのPMCの存在が徐々にクローズアップされていった。
この頃からクローズアップされるようになったPMCの暗部についての決定版といってもいい本といえば、やはりP.W.シンガーの「戦争請負会社」だろうか。現代の戦場で正規軍が活動するために必要不可欠な存在となってしまったPMCだが、一方で法的位置づけの曖昧さにより、戦争犯罪の温床となっている実態をえぐり出す労作。

で、今回紹介する「民間軍事会社の内幕」だけど、2007年に書かれていることもあり、イラク占領におけるPMCの行動について大分情報が充実している。特にイラク占領初期の混乱の中で一攫千金を夢見るベンチャースピリット満々な「ぽっと出」PMCについての記述が面白い(イラク国民にとっては悪夢だろうが)。

  • PMC「カスター・バトルズ社」(当時の従業員4人)が、「二週間で138人の警備員を空港に配置する」との条件で16億円の契約をもぎ取り、墨俣一夜城を建てた(と言われる)木下藤吉郎並のバイタリティを発揮して人をかき集めたり
  • 同じPMCが米軍向けにトラックを数十台納入するという契約を結んだが、実際に納入されたトラックのほとんどがマトモに動かないポンコツ。それを指摘された同社曰く『契約には「動くトラック」とは書かれていない』
  • 同じく、当時は名ばかりで実態の無かったPMC「トリプル・キャノピー」社が90億円以上の大口契約(連合暫定施政当局の警備)を結ぶことが出来たり

まあ、初期の混乱が収束するにつれてこの手の「ぽっと出」PMCは急速に淘汰されているとのこと。とはいえ、この手の有象無象の弱小PMCの実態については、ぶっちゃけ米軍も把握し切れていたのかねえ・・・
また、

  • PMCからの特殊部隊隊員の"引き抜き"によって人材流出問題が深刻化していたり
  • CIAが"リスクの高い任務"のためにPMCを利用していたり
  • 国務省と契約しているブラックウォーター社と米軍の間で摩擦が発生、占領政策の失敗を招き兼ねない状況を引き起こしたり

といった2007年あたりまでのPMC周辺情報もかなりコンパクトにまとまっている。
また、著者が参加した、某社による「ジャーナリスト向け対テロ・セキュリティ訓練」のレポートも興味深い。「紛争地帯で武装勢力の捕虜になった」という設定で命乞いするシナリオとか。著者は結構感情を抑えて書いているものの、参加者が追い詰められていく様子が実感できる。しかも参加した全員が「死亡」判定。
いわゆる”無理ゲー”ではあるんだけど、実際に同様の状況下だと自分の命を掛けて”無理ゲー”を強制されるとか怖すぎる。
正直、「ジャーナリスト向け対テロ・セキュリティ訓練」だけで一冊書けそうな感じだ。

総合的にみてこの本は「買い」です。おすすめ。