普天間とか鳩とかいろいろ

時事ネタ書くと、後で自分の首を絞めそうだけどまあいいや。

【首相訪沖】首相「海兵隊が抑止力と思わなかった」 - MSN産経ニュース 【首相訪沖】首相「海兵隊が抑止力と思わなかった」 - MSN産経ニュース

何日か前にも書いたけれど、米国が沖縄に海兵隊を配置することも、東アジアでの海上覇権を握ってきたことも、すべて米国の覇権国家としての都合でしかない。でも、戦後の日本はそういう米国の覇権の枠組みの中で最大限の利益を得てきた事実を無視すべきでは無い。
ところが、鳩山政権・・・というか、民主党はこの辺をあっさり無視して普天間移転問題に手を出し、その影響が周辺国にどんどん広まって来ている。
例としてはこの辺。

時事ドットコム:中韓攻勢に苦慮=「普天間」影落とす−鳩山外交 時事ドットコム:中韓攻勢に苦慮=「普天間」影落とす−鳩山外交

台湾:一転再開 北京射程のミサイル開発 - 毎日jp(毎日新聞) 台湾:一転再開 北京射程のミサイル開発 - 毎日jp(毎日新聞)

中国海軍の沖縄通過は何を意味するのか? - リアリズムと防衛を学ぶ 中国海軍の沖縄通過は何を意味するのか? - リアリズムと防衛を学ぶ




個人的には、去年の段階では「基地問題をダシにして日米地位協定の改定を図るつもりではないか」と思ってたんだが、今となってはこの方向で落としどころを見つけるのはもう無理だな。余りにも日本側が下手を打ちすぎた。この方向だったら沖縄の負担軽減と安全保障の両立が出来たと思うんだけどなあ・・・鳩山自身が実現不可能なまでハードルを上げた結果だしなあ。誰か止める奴は居なかったのか。
なんというか、鳩山首相や民主党にとっては、普天間問題や日米安保を、国内外複数の利害関係者が入り乱れるパワーゲームではなく、単に自民党との差を付ける為の政局問題としてしか見ていなかったのではないかという印象がある。(まあ、この辺の認識は普天間問題に限らない。そうじゃなけりゃ政権を取る前の「ガソリン値下げ隊」「高速道路無料化」パフォーマンスや「子供手当て」みたいな、政局的には有利でも、後々自分の首を絞めることはやらないだろう)
政権党で無くても「国際関係や安全保障問題を扱うときには日本国以外の利害関係者が居るし、歴史的な経緯も複雑だし、経済問題にも直結するので国内問題と同じようなパフォーマンスは出来ないよ」という認識を持てるような体制を整える必要が有ると感じる。少なくとも鳩山首相の個人的資質だけを叩いて済む問題ではない。まあ、政治家として余りにも"Loopy"な人であるのは明白なんだけど。せっかくの「善意に溢れたお金持ち」なんだから、政治家なんかにならず、私立大学や慈善施設、あるいはNGOの理事とかであれば本人も他人も幸福だったと思う(脱税しなけりゃ)。というか、この程度の見識・能力の人物を排除できなかった政界システムを何とか変えないことには、いずれ第二、第三の鳩山が出ることは間違い無いわけで。
アメリカのようにシンクタンクを充実させることで解決しないか・・・とも思ったものの、ハルバースタムベスト&ブライテスト」で、アメリカがベトナム戦争の泥沼に自分の意思でどっぷり浸かって行った原因として"ジョンソン大統領はベトナム問題を上院の政局問題として見ていた""能力の高い人が集結した政権だが、余りにアメリカ視点で物を見すぎた"ような記述もあり、シンクタンクが充実していれば解決するのかというと微妙な感じだ。
まあ、とりあえず有権者としては、選挙の時には候補者・政党の過去の言動を十分調べた上で

あからさまなバカには投票しない

しかないか。(でも、現状では公開される判断材料がまだまだ不十分なんだよね)

追記

フランスの日々ブログ様で、一連の迷走について面白い考察が出ていたので追記してみる(トラバできないっぽい)。以下のエントリ。

フランスの日々: 議論後に議論前の結論に至ることにも価値がある フランスの日々: 議論後に議論前の結論に至ることにも価値がある

これは、登山の比喩で考えると何の問題もありません。歩みを止めて周りを見回して見た結果、自分たちが登ってきた山が一番高かったので再び登り始めたということです。議論して検討した結果、元の結論に戻ることは何の問題もないのです。むしろ議論なしに話を進めてきた結果が、結局正しかったことがわかって安心するぐらいのものです。

鳩山政権の半年を登山に例えれば、「歩みを止めて周りを見回して見た」というよりも、「無駄に上ったり降りたり迷走した」と言った方が適切ではないかと。党内や閣内で協議するなり、シンクタンクに”日米同盟以外の安全保障のあり方”について検討させるなりといった行動であれば「歩みを止めて周りを見回して見た」と言えるかもしれませんが。実務レベルでの迷走を「歩みを止めて周りを見回して見た」と言ってしまうのはどうかと。

「対米従属を止めました」というのは多方面に角が立つので、それ以外の方法でやるとなれば、事態を混迷させるのが賢明です。

鳩山首相の真意が「対米従属を止める」ことであれば、振り出しに戻ってしまった現状は明らかに失敗でしょう。それに、事態を混迷させるより先にやるべきことは日米安保条約(というか東アジアでの米軍のプレゼンス)が無くなったときに日本が得るメリット・デメリットの洗い出しや、国家的なコンセンサスを作る準備の方でしょう。
その辺の動きが現れて(秘密にするメリットは無いでしょうし)、かつそのための手段として事態を混迷させているのならともかく、現状では単なる混迷としか思えません。それに、それに、普天間問題以外の国内問題も同じような感じに混迷してますし、普天間問題でだけ鳩山首相がそのような深謀を働かせているとは、ちょっと考えにくいです。

さらに理系の博士課程で悪戦苦闘している僕と、既にスタンフォード大で理系のPh.D取得済みの鳩山首相では知性の点でも比べものにならないでしょう。客観的に見て僕にもわかるようなことは、鳩山首相には立ちどころにわかっているはずです。

この辺の問題は「知性」とはあんまり関係ないかと。上で挙げたハルバースタムベスト&ブライテスト」で指摘されているように、学界・政界・官界から最高に知的で切れ者な人材を集めた政府であっても、物事の見方(フレームワーク)の設定を誤ってしまうと、失敗するのものなのです。
自分としては上で書いたように、安全保障問題を国内政局と同じ見方で扱ってしまったことが今回の混迷の原因であると考えたほうが自然ではないかと思います。鳩山首相の政治家としての能力(「知性」では無く)が余りにも低すぎたことも原因ではあるとは思いますが。