ルポ 戦場出稼ぎ労働者

ルポ 戦場出稼ぎ労働者 (集英社新書)

ルポ 戦場出稼ぎ労働者 (集英社新書)


民間軍事会社(PMC)の下請け労働者としてイラクで働いた経験についてのルポ。著者は2004年のイラク人質事件の人。
「危険地帯への出稼ぎ労働」というと食い詰めた末の苦渋の選択と言う印象があるが、著者によれば東南アジアからイラクへ出稼ぎに来る人々はどちらかというと生活にそれほど困っておらず、むしろ「一旗挙げる」ための現金収入を求めてくる人が多いとのこと。イラクでの労働を斡旋するブローカーに渡す手数料もそこそこ高価であり、貧困層はそもそも手を出すことの出来ないようだ。(まあ、手数料を貸し付けたりとかいろいろ有るだろうけど)
著者の仕事は調理師兼雑用係。基本的には基地(建設現場)の中に引きこもって外には出ないものの、迫撃砲やロケット弾による攻撃は当たり前。現地雇用のイラク人も民兵組織に共感しており、どう見ても占領は失敗と言うか社会秩序自体がグズグズ状態であることは見て取れる。こんな状況の中で給与が遅配して現地雇用のイラク人たちがぶち切れ寸前になったりとか危機の連続。「ブラック民間軍事会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」の世界。

この本は「砂漠の戦争―イラクを駆け抜けた友、奥克彦へ (文春文庫)」とペアで読むべきだなと思った。目線が違うと目に映る現実がこれほど異なるとは。