ティム・オブライエン

個人的に、最近ティム・オブライエンが熱い。

僕が戦場で死んだら (白水Uブックス)

僕が戦場で死んだら (白水Uブックス)

「僕が戦場で死んだら」

何週か前に、本屋でたまたま白水Uブックスの棚を見ていてふと目に留まったので購入。

ベトナムに歩兵として従軍した作者の経験を基にした小説。中流家庭で育ち、適度に進歩的で、かといって反戦デモやピッピームーブメントに加わるほど急進的ではない極普通の若者の等身大の描写と言う感じがする。

そして、ベトナムについてからは、姿の見えない敵、空振りする作戦、地雷の恐怖、無能な上官、水田の泥にまみれた行軍、白人兵と黒人兵の軋轢、突然襲いかかる死・・・といった戦場の日常描写が重ねられていく。
なんというか、内省的な描写が非常に魅力的な作者。

で、読み終わった次の日には↓を購入。

本当の戦争の話をしよう (文春文庫)

本当の戦争の話をしよう (文春文庫)

「本当の戦争の話をしよう」

内容とは全く関係ないが、背表紙で著者の名前よりも村上春樹の名前の方が大きいのはどういう了見だ。

戦後にベトナムを再訪する短編が非常に興味深い。というか、大岡昇平「ミンドロ島ふたたび」とダブった。

ミンドロ島ふたたび (中公文庫)

ミンドロ島ふたたび (中公文庫)

戦場の空気や、そこで起こったことを書き綴ることへの情念も共通している気がするなあ。(オブライエンはまだ大岡昇平ほど悲壮ではないにしても)
戦記文学の名作は、敗者の側から生まれると言うのは本当かも。